超人対魔神信奉者、その1.
コーロ男爵家からさらわれた赤ん坊を、偶然居合わせたその男が、その誘拐犯に追いついた時には東の空は薄明るくなっていた。
剣を打ち鳴らす金属音が響きだしてすぐ、十二人いた誘拐犯の内五人が死んでいた。
誘拐犯は皆、スキンヘッドに怪しげな仮面を付けた大男であり、その剣も長さ二メール(約二メートル)に幅十セチ・メール(約十センチメートル)もある大剣だった。
残りの七人の内この馬鹿げた剣を持っていないのは二人、そして一人は女だった。
大剣を持っていない初老の男が口から泡を吹いて叫ぶ、「何をしている!相手は一人だぞ!その”神“の祝福を受けた”剣“ならば、触れるだけで相手は即死させられるというのに!」
と、戦士たちに檄を飛ばすも、五人の戦士たちはすでにいきもたえだえになっていた。
対して彼らを追って来た男は、その飾り映えのしない剣を両手で構え、いまだに余裕がある様子だった。
「うおおお!」
一人の戦士が大剣を振りかぶると、男に振り下ろす、だが。
「当たらんよ」
男は少しだけの動きだけでその攻撃を避ける、虚しく地面に食い込む大剣「ぐおおおお!!」仮面を付けた戦士がそのまた持ちあげようとするも、持ち上がらない、すでに体力の限界に達しかけていた仮面を付けた男には、その大剣は余りにも重かった。
「むんっ」この誘拐犯を追って来た男の持つ、なんの代わり映えのしない剣が大男の首をはねる。
「残りは六人」
大剣を持つ大男四人に向かってそう言い放った追跡者を、四人は肩で息をしながら憎しみと絶望感で見つめる。
「ええい、何をしている戦えい」自分たちの“神”の”神官“の言葉はぜったいだった。
大男達は有らん限りの力を込めて追跡者を取り囲んで大剣を振り下ろす、絶対に逃げ場の無い四撃だった、──はずだった。
「良い攻撃だった、だが今のお前達では剣の軌道が丸見えだ」
そう言って四回分の死をかいくぐって見せた男、だが四人からの反応は無かった、何故なら四人の首はすでに体から切り落とされて、地面を転がっているのだから。
圧倒的な実力の差だった。
やっと始まりました! 前作「ミリアお嬢様の最初の冒険」から5ヶ月!! あ、始めに言っておきますがこの話しの舞台設定は前作と同じですが。ミリアもリリアンも出て来ません! あしからず。
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