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第1話 私が死んだ

 私は死んだ。


 毒を盛られたわけでもなく、刃物で切り付けられたわけでもない。


 流行り病に侵された末の死。


 いわゆる病死。


 ただ死んだ。


 私の名は、エレノア・ミストラル


 男爵夫人だ。


 ミストラル商会を営む前男爵に商才を見込まれて嫁に迎え入れられた。


 私は平民出身であるし、舅である前男爵のゴリ押しでの結婚。


 現ミストラル男爵である夫にとっては、面白くない結婚であったに違いない。


 だからといって浮気三昧、放蕩三昧なのはいかがなものだろうか。


 彼は商会の仕事を私に押し付け、浮気相手の元へと通っていた。


 複数いた浮気相手は、やがて一人に絞られていく。


 ミラという女だ。


 ミラは男爵令嬢だから、身分的にも釣り合うと見込んだのだろう。


 夫は私と離婚してミラとの結婚を望んだ。


 だが、前男爵である舅が首を縦に振ることはなかった。


 当たり前だ。


 舅は理由があって私を息子の妻にしたのだ。


 そこに私の幸せなど含まれてはいない。


 夫は、そこを見誤っていた。


 いずれにせよ。


 私、エレノア・ミストラル男爵夫人は死んだ。


 24歳の誕生日を迎えたばかりの、雪積もる朝のことだった。

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