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85話 終わりを迎える文化祭

遅くなって大変申し訳ありません!

 占いの館を出たわたしと遥。


「それでこの後は何処に行くんですか?」


「この後は体育館で行われる演劇部の公演を見ようと思っているのですが、まだ時間があるので占い師の方に貰った無料券を使ってクレープでもどうですか?」


「そうですね。折角、貰ったんですから食べに行きましょう」


「それじゃあ、早速行きましょう」


 そう言って遥はわたしの腕に自身の腕を絡めて来た。そのせいでわたしと遥の肩が触れ合うほどに密着してしまった。


「あの、なんで腕を組んで来るんですか?」


「ふふ、それは私がしたいと思ったからです。だって私達相性がとても良いそうですから、これくらいなら問題ないですよね?」


「ま、まぁ、遥がそうしたいなら……」


 人目は気になるけど、遥とこうして密着できることを考えたら人目なんてどうでもよくなってきているわたしがいる。どうやらわたしも占いの結果に相当浮かれているんだなと実感する。


 まぁ、完全に人目が気にならないって訳じゃないんだけど……。


「ふふ、恥ずかしがってる瑠璃華はやっぱり可愛いですね」


「も、もう……人が周りに居る所でそんなことを言わないで下さいよ。ほ、ほら早く行きますよ」


「ふふ、そうですね。えっと、確かこの無料券の裏に場所が書かれていた様な……ありましたありました。この場所は玄関近くの屋台が並んでいる所ですね」


 こうしてわたしと遥は腕を組みながら目的のクレープ屋台を目指して歩き出した。



 ◆◆◆



 しばらく歩いて目的のクレープ屋台に到着したわたしと遥。


「あれ? この屋台って奏のクラスの出し物だったのね」


 遥に言われて屋台の看板を見てみると確かに奏ちゃんのクラスだ。


「確かに奏ちゃんのクラスですね。もしかしたら奏ちゃんが居るかも知れませんよ」


「そうですね。奏と学園で会うことは稀なので、どういう風に過ごしているのか気になります」


 奏ちゃんが居るかと思って注文ついでに探してみたけど、奏ちゃんを見つけることはできなかった。


「奏ちゃん居ませんでしたね」


「そうですね。もしかしたら友達と一緒に文化祭を回っているのかも知れません。それにしても少し疲れてきましたね」


 確かにわたしも疲れてきた。何処か休憩できる場所があればそこでゆっくりとクレープを食べられるんだけど。


「それじゃあ、何処かで少し休憩しませんか?」


「そうしましょう。えっと、この辺りにあるベンチには……座れませんね。少し遠いですが校舎裏に行きましょう。演劇の公演時間にはまだ余裕もありますし、そこなら誰も居ない筈です」


 確かにわざわざ文化祭で校舎裏に来る人なんていないだろうから、人目を気にしないでゆっくり休めそう。


「それが良いですね。早く行きましょう」


 わたしと遥は人混みを避けながら校舎裏へと向かう。



 ◆◆◆



 校舎裏には案の定誰も居らず、わたしと遥はいつもの座り慣れたベンチに腰を掛けた。


「ふぅ、やっと落ち着けましたね」


「そうですねぇ。ここなら人目を気にせずに休めますね」


 そう言ってわたしは苺クレープを口にする。


 ああ、やっぱり疲れた体には糖分だよねぇ~。


「瑠璃華が食べている。そのクレープ美味しそうですね。一口食べさせてくれませんか?」


「いいですよ。はい、どうぞ」


 わたしは遥にクレープを差し出す。


「ありがとうございます。それじゃあ……」


 遥はわたしが差し出したクレープを一口食べた。


 あれ? 遥が食べた部分ってわたしが口にしたところじゃ?


「あの、どうしてわざわざわたしが口にした部分を食べるんですか?」


「ふふ、出来心でつい……。お返しに私のチョコクレープをどうぞ」


 遥はわたしの口元辺りまでクレープを近づけてきた。その近づけてきた部分はご丁寧にも遥が口にした部分だった。


 困惑したわたしはチラリと遥の方を見ると、遥は何かを期待しているような表情でわたしを見てる。


 そんな期待するような表情をされてしまったら、その期待に答えない訳にもいかない。まぁ、そもそも断る理由なんて存在しないのだ。だって好きな人がくれる物なんだから。


「いただきます……」


 そしてわたしは遥の差し出したクレープを口にする。甘い生クリームとビターなチョコレートが見事にマッチした美味しいクレープだ。


「ふふ、これでお相子ですね……」


「なんのことですか? わたしは遥が差し出したクレープをただ口にしただけですけど?」


「ふふ、恍けなくてもいいじゃないですか。今、瑠璃華が口にしたのは私が口にしたところ。お互い間接キスしてしまいましたねぇ~」


 わざとらしく、からかうようにそう話す遥が一瞬だけ奏ちゃんと重なった。やっぱり姉妹なんだなとわたしは思った。


「間接キスなんて何度もしてるじゃないですか」


「確かに瑠璃華の言う通りですね。では、これはどうでしょう?」


「えっ?」


 遥はおもむろにわたしの口元を人差し指でなぞる。


「口元にクリーム付いてましたよ」


 そう言って遥はわたしの口元に付いていたであろうクリームが付いた指をペロッと舐めた。


「なっ!? ななななにをしてるんですか!?」


 流石のわたしも遥のこの行動には驚いてしまい。わかり易いほどの動揺を見せてしまった。


「ふふ、ただ瑠璃華の口元に付いたクリームを取ってあげただけですよ」


「だ、だからってそれを舐めることは無いですよね!?」


「だって勿体ないじゃないですか? それに本当は指以外で取ってあげたかったのを我慢したんですよ? ここには私達以外誰も居ませんから……」


 そう話した遥は人差し指を自身の口元に当てた。


 そ、それってキスしたかったってこと!? た、確かに遥の目を見れば、本気でそう思っていることが伺える。


 わたしとの文化祭デートに浮かれていることと、占いの結果が良かったことが遥をここまで積極的にしてしまったのかも知れない。まぁ、それ以前にわたしが焦らすようなことばかりしているのがそもそもの原因だとは思うんだけど……。


 ああ、どうしよう……結果はどうあれここまで遥がわたしを求めてくるなんて……。誕生日まで我慢しようと決意したわたしにはこれほど辛いことはない。


 もういっそ、この場で遥の唇を奪ってしまいたいという衝動が湧き上がってくる。一体、これで何回目だろう?


 何とかこの衝動を抑えようと思考を巡らせていたわたしはあることに気付いてしまう。そう、遥の口元にも薄っすらとクリームが付いていたのだ。


 よし、今日はこれで我慢しよう。そうわたしは自身の心に言い聞かせ、キスしたい衝動を押さえ込んだわたしは行動に移すことにした。


「確かに遥の言う通り、ここには誰も居ませんね。ところで遥……」


「えっ、な、なんでしょう?」


 わかり易いほどに動揺していたわたしの態度が急に変わったことに驚いている遥の口元にわたしは人差し指を近付け……そして……。


「遥も口元にクリーム付いてるよ。わたしが取ってあげるね……」


 遥の口元に薄っすらと付いていたクリームを指で掬い取り、自分の口へと運んだ。


 わたしも悪いけど遥もいけないんだよ。こうやってわたしの心を揺さぶってくるんだから……。


「これでお相子だね。遥」


 そう言いながらわたしは遥に笑いかける。


 遥にとってわたしのこの行動は想定外のものだったんだろう。あんなに余裕のある表情をしていた遥の顔が見る見るうちに赤くなっていった。


 もしかしたら遥ってこういう押しに弱いのかも知れない。だって何度か似たような場面があったからね。


「る、瑠璃華どうしてこんな……うぅ……」


 動揺している遥は口元をクレープを持っていない方の手で押さえながらそう小さく呟いた。


 ああ、どうしよう……あんなに余裕のあった遥がこんな風になるなんて……本当に可愛くて可愛くて堪らない。先程の遥も動揺したわたしを見て同じことを考えていたかも知れない。そう思うとやっぱりわたしと遥って相性がとても良いのかも。


「どうしてって言われても、遥の真似をしただけだよ? もしかして嫌だった?」


「えっ、えっと、その……嬉しいんですけど……ま、まさかこんなことをするとは思わなくて……不意打ちは卑怯ですよ……」


「そんなこと言われても遥だって同じことしたじゃないですか。わたしだって急にあんなことされて驚いたんですよ。さっきも言いましたがお相子ですよ。お相子」


「うぅ……お、お相子なら仕方がないですね……。流石に浮かれ過ぎて調子に乗ってしまいました……」


 わたしの言葉に反省したようにシュンとしてしまった遥。


「良いですよ。わたしも別に悪い気はしなかったですし……」


「えっ、そ、それってどういう……」


「それよりも遥。時間は大丈夫なんですか? まだクレープも食べ終わっていませんけど?」


 わたしは遥の疑問を誤魔化すように話題を振った。


「えっ!? そういえば確かに……」


 遥はそう言いながら時計を確認する。


「あっ、そろそろ行かないと間に合わない時間です」


「そうなんですね。それじゃあ急いで食べないといけませんね」


「……何だか都合の良いように誤魔化されたような気がしますが、流石に今は追及する時間もありませんし見逃すとしましょう」


 その後、クレープを食べ終えたわたしと遥は足早に体育館へと向かい無事に演劇の鑑賞をすることが出来た。しかし、演目がロミオとジュリエットの百合改変版だとは思ってもみなかった。それもかなり内容が面白く改変されていて見入ってしまった。



 ◆◆◆



 演劇を見終えたわたしと遥は体育館を後にする。そして気付けば文化祭も終わりの時間が近づいて来た。


「演劇面白かったですね」


「はい。わたし演劇って生で初めて観たんですけど、とても面白かったです。たぶん遥が誘ってこなかったら、観る機会は無かったと思います。今日は誘ってくれてありがとうございます」


「いえいえ、瑠璃華が楽しんでくれたなら私はそれだけで満足です。ですがそろそろ私は制服に着替えないといけない時間になってしまいました。残念ですがここで解散することにしましょう」


 出来ればもう少し文化祭を回りたいけど、わたしもクラスの出し物の片づけをするためにそろそろ戻らないといけない。


「そうですね。わたしもクラスの出し物の片付けがあるのでそうしましょう。今日は本当にありがとうございました」


「私も今日はとても有意義な時間を過ごすことが出来ました。その……色々な意味で……」


 どうやら校舎裏での出来事を未だに引きずっているようで、照れくさそうにそう話す遥。


「あはは、あれも文化祭の楽しい思い出ということで」


「そ、そうですね。楽しい思い出ですね! そ、それじゃあ、私はこれで……」


 そう言い残して遥は足早に校舎へと向かって行った。


 そんな遥の背中を眺めながら、わたしは来週のことを考えていた。


 さて、来週はとても重要なイベントである遥の誕生日。少しずつ準備はしてきたけど、本当に遥が喜んでくれるのかはわたしの努力次第だ。


 遥にとって最高の誕生日だと思ってくれるように頑張らないと!


 そう改めて決意したわたしは片付けのためにクラスへと戻ったのだった……。

さて、この物語も後わずかとなって参りました。出来る限り早く投稿出来れば良いのですが、忙しい日々が続いているので難しい状況です。何卒ご理解いただけると幸いです。

話は変わりますが、次回作について少しだけお話をしたいと思います。次回作は幾つか候補はありますが、有力候補は異世界転移物のミリタリー関連の物語です。(百合カップルが複数出てきます)

宜しければこちらも楽しみに待っていただけると嬉しいです。

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