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83話 始まった文化祭

 文化祭当日。わたしのクラスの出し物である冥土喫茶はそこそこ賑わっていた。


 冥土喫茶という斬新な? コンセプトが一部のお客さんの興味を引いたみたいだ。


 お化け屋敷のような雰囲気の店内で、幽霊の格好をしたわたしやクラスメイトが少しでも幽霊感を出そうと低めの声でそれっぽい演技をしながら接客している訳だけど。


 要はお化け屋敷風のコスプレ喫茶である。わたし自身が見ても中々にシュールな光景だ。


 そんな光景の中で幽霊感を出しまくっている人物がいた。


「……いらっしゃい、ませ……」


「「きゃ!」」


 店内に入ってきたお客さんの前に突如として現れた凛子である。


 お化け屋敷に居ても違和感が無いほどに幽霊感を出していて、文化祭開始前のミーティングでも突如、凛子が姿を現した時なんて恵梨香以外の全員が小さな悲鳴を上げたほどだ。


 一体、どうやって気配を消しているのだろうかとクラスメイトと首を傾げるほど、凛子は気配を消すのが上手かった。


 ミーティングを終えた後で恵梨香に聞いた話だけど、凛子はこの日のためにホラー物の映画を色々と観て研究したらしい。


 そして今の凛子は恵梨香曰く、物凄くテンションが高いらしい。


 言われてみれば、確かにいつもよりも浮ついて見えるような?


 そんなこんなで、この冥土喫茶で唯一幽霊感を出しまくっている凛子を中心に、わたしのクラスはトラブルも無く、順調に冥土喫茶の営業を続けていた。



 ◆◆◆



 気が付けばそろそろ交代時間だ。約束通り遥が来るだろうなと思っていたそんな時、クラスの外が何やら騒がしい。


 一体、どうしたんだろうかと思ったわたしは、入り口から顔を出してその原因を探ると……。


「っ!? は、遥……」


 わたしの視線の先にはこちらに向かって歩いて来る遥がいた。その姿は学園では必ず掛けているメガネも無い私服姿だった。


 遥の言っていた対策ってこれなの? 確かに今の状態なら、ほとんどの生徒は遥が生徒会長だとは気づかないだろうけど……それはそれで凄く目立つよ……。


 わたしは素顔の遥を見慣れているから忘れがちだけど、遥は顔もスタイルも良いからだ。


 あぁ……周りのお客さんや生徒が遥のことめっちゃ見てるよ……。この後の文化祭デートって本当に大丈夫なのかなぁ?


「瑠璃華どうしたの、ってあれは……なるほど、通りで外が騒がしい訳だ」


 外が騒がしいことが気になった恵梨香が外にいる遥を見て、何かを察したように呟いた。


「あっ、恵梨香」


「遥先輩なら瑠璃華に会いに来るだろうなとは思ったけど、まさかあの姿で来るとはねぇ……。まぁ、確かにあのダサっ、個性的なメガネを投げ捨てたら誰だかわからないか」


「まさかわたしも校則破って私服で来るなんて思わなかったよ。この後、一緒に文化祭を回るって約束したんだけど、大丈夫かなぁ」


「まぁ、誰かに何か聞かれたら知り合いのお姉さんとでも言って誤魔化せば良いんじゃない? 後で遥先輩にメッセージでも送って口裏を合わせれば言い訳だし。ほら直ぐそこまで遥先輩来てるよ。わかってるとは思うけど接客は瑠璃華がやりなよ」


「う、うん。わかってるよ」


 そう言われてしまうと何だか緊張してきた……。上手く接客出来るかなぁ……凄く心配だ……。


「凛子は……まぁ、遥先輩を見たら察して動かないか……」


 そう言い残して恵梨香は戻って行き、わたしはそれを無言で見送った。


「あらあら。ふふ、可愛らしい幽霊さんが居ますね。」


 その声を聞いて振り返れば、ニコニコと機嫌良さそうな遥がわたしを見ていた。


「はるっ、い、いらっしゃいませ……。お、お席にご案内致します……」


「ふふ、お願いします」


 わたしは遥を空いた席へと案内する。


 席へと案内している間にも店内のお客さんとクラスメイトの視線が遥に向けられいる。多くの視線が向けられている遥のことが気になったわたしは遥の方を見る。


 多くの視線を浴びているはずの遥は全く気にする様子も無く、目が合ったわたしににこりと笑顔を見せた。


 わたしは直ぐに遥から顔を背ける。


「こ、こちらにどうぞ……」


 席についた遥にメニューを渡す。その間にも遥はニコニコとした表情でわたしを見ている。周りのお客さんとクラスメイトにも注目されて、少し居心地の悪くなったわたしは「ご注文がお決まりになりましたらお呼び下さい」と言い残してその場を離れ、仕切り板で区切られた調理場へと向かった。


「ねえねえ、瑠璃華。あのお客さん、すっごい美人だよね~。」


「あっ、そ、そうだね……」


 突然、クラスメイトに話しかけられたわたしは歯切れ悪く答えた。


「ねぇ、瑠璃華ってあのお客さんの知り合いなの?」


「えっ! ど、どうしてそう思うの?」


「どうしてって何かあのお客さんが瑠璃華に親し気に話しかけてたから、そうなのかなぁ~って思っただけだよ」


 この後の文化祭デートのことを考えると違うなんて言える訳が無いよね? ここは恵梨香にアドバイスされた通りに知り合いのお姉さんということにした方が良いかも。 


「うん。あの人は知り合いのお姉さんなの。後で文化祭を回るって約束してたから、迎えついでに遊びに来たんだと思う」


「そうなんだ。良いなぁ~あんなに美人なお姉さんが知り合いなんて。あっ! このパフェを持っていかないといけないんだった!」


 そう言ってクラスメイトは足早に調理場から出て行った。


 遥のことを知り合いのお姉さんとクラスメイトに話してしまったわたしは、スマホを取り出すとメッセージで事情を伝えて話を合わせて貰うように頼んだ。


 するとメッセージを送って直ぐに返事が届いた。内容は不本意ですが仕方ありませんというような内容だった。


 了承して貰えて良かったと思っていたら。又しても遥からのメッセージが届く。メッセージを見てみると注文が決ったの来てという内容だった。


 まさかこんな形で呼び出されるとはなぁ~と思いながら、わたしは遥の方へと向かった。


 その後、遥から注文されたパフェを配膳したわたしは交代時間を迎えたので制服に着替えて遥がパフェを食べ終わるのを裏で待つことにした。

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