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82話 文化祭前日

時間が過ぎるのは早いもので明日はついに文化祭だ。そのため放課後にも関わらず学園中に慌ただしい雰囲気が漂っていた。


もちろん私のクラスも明日の文化祭に向けて、今はみんなで教室の飾りつけなどをしているところだ。


しかし……まだ途中だけどこうして飾りつけられた教室を見回してみると、喫茶店というよりもお化け屋敷だ……。テーブルやその上にあるメニュー表が無かったら喫茶店だとは誰も思わないんじゃないかな?


「ねぇ、瑠璃華。中々良い感じじゃない?」


「そうだね。でも喫茶店というよりもお化け屋敷だよね」


「あはは! そりゃあ、冥土喫茶なんだからお化け屋敷感が強いのは仕方がないんじゃない? そうしないとただ白装束を着て接客するだけで面白味なんて皆無だよ。ねっ、凛子」


「そう……。喫茶店感が強い方が逆に不自然……。これが正解……。さぁ、話もこれくらいにして早く終わらせよう……」


そして一時間後。やっと教室内の飾りつけが終わり。クラスのみんなで明日のシフト確認を行った後、解散となった。



◆◆◆



「それじゃあ瑠璃華。また明日」


「じゃあね……」


「うん。恵梨香、凛子。また明日ね」


校門を出たところで恵梨香と凛子と別れたわたしは家を目指して歩き出す。


「……るりか……瑠璃華」


「んっ?」


しばらく歩いていると背後からわたしを呼ぶ声がしたので立ち止まり振り返る。


すると遥が小走りでわたしの方へ向かって来るのが見えた。


「はぁ、はぁ。よかった、追いつきました。あの、一緒に帰りませんか?」


「もちろん、一緒に帰りましょう」


断る理由も無いのでわたしは遥と2人で帰る事にした。


「ところで生徒会の仕事はもう終わったんですか? 明日の準備で忙しいと思ったんですけど」


「今日は明日のスケジュールの確認だけでしたから。それで帰ろうと玄関に向かった時に、偶然瑠璃華が校門に向っている姿が見えたので慌てて追いかけたんです」


なるほど、だから走って来たんだ。でも連絡さえしてくれたら近く公園で待ってたのに。


「そうだったんですね。でもわざわざ走って追いかけて来なくても連絡してくれれば近くの公園で待ってましたよ」


「あっ、確かにその方が良かったかも知れませんね。全く思いつきませんでした」


「あはは。そんなにわたしと一緒に帰りたかったんですね」


「もう、その理由は瑠璃華が一番よく知っているじゃないですか。それに私、明日の瑠璃華との文化祭デート。とても楽しみにしてるんですから」


わたしだって明日の遥との文化祭デートを凄く楽しみにしている。だって学園恋愛物の定番だし、わたしだってそういうシチュエーションに憧れがあるのだ。でもそれを素直に伝えるのは何だか照れてしまう。


「デートかどうかは置いといて、わたしも遥と文化祭を回るのは楽しみですよ」


はぐらかすようにわたしがそう言うと、遥はむすっと不満そうな表情をする。


「むっ、置いといてとは何ですか、置いといてとは。そこがとても重要なんですよ。私はこうやって瑠璃華と文化祭を回りたいんです」


「あっ」


遥は急にわたしの手を握った。他の生徒に見られるかも知れないのにやるとは思わなかったので驚いた。


「え、えっと……流石にみんなが見てる前でそれは目立っちゃいますよ。それに今だって誰が見ているかわからないんですよ?」


そう言ってわたしは辺りを見回す。


よかった……誰もいない。


「これくらい良いじゃないですか。それに要は私だと周りに気付かれなければ良いんです。その対策はちゃんと考えてありますから。ねっ、いいですよね?」


遥にそこまで言われたら断ることなんてわたしには出来ない。それにわたしだって人の目を気にせずに今みたいに手を繋いで文化祭を楽しみたいんだから。


「遥がそこまでわたしと手を繋ぎたいなら、その……いいですよ」


「ふふ、素っ気ない返答ですね。本当は嬉しいんじゃないですか?」


「どうしてそう思うんです?」


「頬が緩んでいますよ。ふふ、そんな顔で素っ気ない態度を取っても意味がありませんよ」


何となく頬が緩んでいるような気がしたけど、本当にわかりやすく表情に出るなぁ……わたし……。


「まぁ、確かに遥と一緒に文化祭を回るのはとても楽しみです……」


「ふふ、正直に言えましたね。えらい、えらい」


遥はわたしの耳元に顔を近づけると甘い声で囁いて来た。


「っ!?」


 驚いたわたしは遥から顔を背ける。流石にこんなことを文化祭当日にやられたら、わたしが持たない。


「えっと、その、流石にこういうことは文化祭を回る時にはしないで下さい……」


「どうしてですか? これくらいなら何も問題はないと私は思いますけど」


遥は本当に問題無いと思っているの? 流石にこんな風にイチャイチャしてたら、いくら遥に対策とやらがあっても目立つに決まっているのに。


「えっと、それ本気で言ってるんですか?」


「当たり前じゃないですか。恵梨香さんや凛子さんと夏祭りで会った時や学園で見かけた時のお二人はこんな感じだったと記憶してますが」


「ああ……」


そうか、遥に取って同性同士で恋愛している見本があの2人しかいないのか。だから遥の基準があの2人になっていると。最近、遥が積極的になっていたのは恵梨香と凛子の影響もあるのかも知れない……。


「あ、あの2人は特殊と言いますか……。一応あの2人は自分たちの関係を隠しているみたいで……」


「ええ!? あれはどう見ても堂々とお付き合いしてるとしか思えないんですけど。それにお二人を見ている周りが微笑ましく見ているのでそういう物なのかと……」


「まぁ、わたしも遥と同じ意見です。あれは無自覚なのかわざとなのかはわたしでもわからないので……」


「そ、それじゃあ、文化祭の屋台で買った物を食べさせ合ったり。占いの館で恋愛について占って貰うなどは瑠璃華的にはやってはいけないのですか……」


物凄く残念そうな表情をしている遥。


遥はわたしとそういうことをしたかったのか。確かに創作物での文化祭デートではよくあることだよね。わたしだって人目さえ無ければやりたいけど……そうか、人目が無いか少なければ良いのか。


「そう残念がらなくても人目が無いか少ない場所なら、その……遥のやりたいことをやっても……良いですよ」


「えっ、良いんですか! わぁ、嬉しいです。ふふ、それを聞いて益々文化祭が楽しみになりました。はぁ~瑠璃華と何処を回りましょうか……」


先程の表情から一変して笑顔になった遥は明日の文化祭デートプランを考え始めた。


これは明日の文化祭デートは期待出来そう。だってあんなに楽しそうに考えているんだから。


「文化祭は遥がわたしをエスコートして下さいね」


「ふふ、勿論です。私は生徒会長ですからね。各クラスの出し物は全て把握していますから、明日は楽しみにしてて下さい」


「はい。楽しみにします」


「こうしてはいられません。早く家に帰って瑠璃華との文化祭デートのプランを練らないといけませんね」


そう言って遥は繋いでいるわたしの手を引っ張り急かしてくる。


「ちょ、ちょっと遥。張り切り過ぎだよ」


わたしはそう言って急かしてくる遥を宥める。


「あっ、ごめんなさい。楽しみ過ぎて気持ちが先走ってしまいました」


「もう、まだ時間は有るんですからゆっくり帰りましょうよ」


「ふふ、そうですね。折角瑠璃華と一緒に帰っているんですから、こういう時間も大切にしないといけませんね」


その後、遥と別れたわたしの足取りはとても軽かった。もちろん明日の遥との文化祭デートが楽しみだからである。

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