7話 新しい友達とカラオケへ……
わたしは今、新しく友達になった恵梨香、凛子と一緒に、繁華街にあるカラオケ店に来ています。
いや~実はわたし、友達とカラオケに行くのは、初めてなんですよね~。なぜなら、わたし、メイド喫茶に通っているような、オタクですからね。家でもPCでアニメを観たり、メイドのイラストを探したり、メイドが出るシチュエーションのASMRを聞いたりしてますからね~。
カラオケに誘われても、歌えるのがアニソンやボカロ曲ですし、辛うじて今流行っている曲を知っている程度ですから、誘われても断っていました。
今回は、新しく出来た友達の誘いですし、ここで断るなんてことが出来るでしょうか? 出来る訳がないでしょうよ! 2人がどんな曲を歌うかによっては、わたしはとても困ってしまうでしょう……。
「いや~カラオケなんて久しぶりだね~。ね、凛子」
「うん、そうだね、恵梨香」
「瑠璃華は、誰かとカラオケって来たことある?」
「わたしは、誰かとカラオケに行くのって、初めてなんだ。誘われたことは、あったけど、断ってたんだ」
わたしが、そういうと恵梨香は何かを察したようで……。
「あ~なるほどね。瑠璃華って、もしかして……アニメソングとか歌うでしょ」
まさか、気づかれるとは思っていなかった。否定したところで、意味なんてないだろうしどうしよう……。
「あはは! 図星だね、安心してよ瑠璃華、別にあたし達バカにするつもりなんてないからさ。あたし達もそっちの方が好きだから、安心して好きなの歌いなって。ね! 凛子」
「うん、恵梨香の言う通りだよ……瑠璃華、気にしなくても大丈夫だから……歌おう……」
あぁ、こんなに理解ある友達が出来て、わたしはとても嬉しいです! しかし、恵梨香と凛子も、わたしと歌うジャンルが同じだと思いませんでした。
「そうなの! よかった~。2人がわたしの知らないジャンルの歌とか歌い始めたらどうしようかな~って思ってたから、安心したよ」
「あはは! あたしも凛子も、瑠璃華と同じ気持ちだったから安心してるんだ~」
恵梨香がそういうと、凛子がうんうんと頷く。
「時間も勿体ないし、早く歌おうか。あたしが最初に歌うね、その方が瑠璃華も歌いやすいでしょ」
そう言って、恵梨香は曲を入れて歌い始めた。その後も凛子が歌って、わたしも初めての友達とのカラオケを心置きなく楽しんでいました。
途中で恵梨香と凛子がデュエット曲を歌っていたのですが、2人とも息がピッタリで、歌がとても上手くて驚きました。凛子なんて、大人しそうな見た目に反して、声量がすごくてかっこいいなと思いました。
そういえば、恵梨香と凛子の歌声に似た声を、何処かで聞いたことがある気がするんですよ。一体、どこで聞いたんでしたっけ? うーん……最近、見たことがあったり聞いたことがあったりするんですが、覚えていないんですよね~。わたしって、記憶力無いんだな~と、最近思い始めましたよ……。
歌い疲れて、少し休憩していると恵梨香が話しかけてきました。
「そうだ、実は瑠璃華に話したいことがあったんだ。聞いてくれるかな? あたしと凛子の関係についてなんだけど……」
恵梨香から明るい雰囲気が消え、真面目な顔をして、わたしにそう言ってきました。凛子の方を見ると、凛子も恵梨香と同様でした。2人の関係ですか……とても仲が良さそうなのは見ていてわかるんですよ……もしかしてですが、そう言うことなんでしょうか?
「うん、いいよ。そういえば、学園でわたしに話したいことがあるって、言ってたけど、そのこと?」
「そう、あたしと凛子は幼馴染でね……えっと……実は、付き合ってるんだ」
そう言って、わたしの顔色を窺う恵梨香と凛子。なるほど、2人は恋人同士なのね。正直言って、わたしは別に好き同士なら同性でも良いと思うんだけどね~。
わたしが読んでるメイドが出てくる漫画とかでも、お嬢様とメイドの恋物語とかあるし。まぁ、わたしはその漫画を読んで、お嬢様になってメイドにご奉仕されて~としか思わないんだけどね~。
「へぇ~。そうなんだ」
わたしの返した言葉が、あまりにもあっさりしていたことに、2人は驚いたようで、恵梨香がわたしに話しかけた。
「へぇ~って何よ、へぇ~って。もしかして、冗談だと思ってる?」
「私と恵梨香は、本当に恋人同士だよ……」
恵梨香と凛子は、冗談を言っていると思って、わたしが適当に返事をしたと思っているようです。これは、わたしの言い方が不味かったね……。
「違うの、2人が仲良さそうにしているのを、見ていたらそうなのかな~と思ったし。それにわたしは、好き同士なら同性でもいいと思っているんだ。わたしが読んでる漫画でも貴族のお嬢様とメイドの恋物語とかあるからね」
わたしの話を聞いた2人は、少し安心したようでした。
「そうなんだ……変だとは思わないんだ……」
「思わないよ。だって、恵梨香と凛子はお互いのことが大好きなんでしょ。好きになることに性別なんて関係ないよ。わたしなんてメイドさんが大好きで、ご奉仕されたり甘やかされたいな~って思ってるんだよ。わたしの方が変でしょ」
「あはは! なにそれ、でもよかったよ。瑠璃華があたしたちの関係を変じゃないって言ってくれて、とっても嬉しい……」
恵梨香と凛子は、わたしが2人の関係に理解があることを、とても喜んでいるようだ。でも、何でわたしに話したんだろう?
「でも、何でわたしにそのことを話したの? 隠すこともできたよね?」
「それは、仲良くなってからあたし達の関係を知ったら、友達としての関係が壊れるかもしれないから。それに、このことを話す相手は、ちゃんと選ぶからね」
「それで、わたしに話してくれたんだね」
「そう、瑠璃華ならわかってくれそうな気がしたから。ね、凛子」
「うん。瑠璃華、優しそうだから……理解してくれて嬉しい」
2人が嬉しそうで何よりだ。これで恵梨香と凛子とも少しは仲良くなれたかな?
「あっそうだ! わたしと一緒にいる時は、2人の世界に入って、わたしのこと放置しないでね。そうしたら、わたし拗ねちゃうよ」
「あはは! そうだね、気を付けるよ。あっ! いいこと思いついた!」
恵梨香はそう言うと、凛子に耳打ちして2人は立ち上がり。わたしの右に恵梨香、左に凛子が座ってきて挟まれてしまった。
「これなら、瑠璃華のこと放置しないね」
「うん……これなら大丈夫……だね……」
その後も、2人に挟まれた状態で、時間一杯までカラオケを楽しんだわたし達の仲は、より一層深まりました。




