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66話 瑠璃華の甘々な誕生日(前編)

あけましておめでとうございます!

 今日は8月20日、わたしの誕生日である。


 遥は13時頃に家にやってくる予定でわたしはソファーに座り、遥が来るのを今か今かと待っている。


 今日は外出せずに家で誕生日会をするだけなんだけど、流石に普段の恰好では雰囲気的にどうかと思ったわたしは服装やメイクに気を使ってみた。これで少しは特別感を出せたかな?


 わたしはソファーから立ち上がり、姿見の前で身嗜みを整える。


 ちなみにさっきからこんなことを何度もしている。何故かソファーに座って大人しく待っているとそわそわしてしまうのだ。今までは遥が来る時は待ち遠しいとは思っていたけど、最近はそれとは似ているようで違う気持ちが芽生えた感じだ。


 それにしても遥はわたしのことをどうやってお祝いしてくれるのかな? 期待に胸弾ませながらわたしはソファーに再び座り遥が来るのを待つ。


 それからしばらくして、家のチャイムが鳴りわたしはソファーから立ち上がり足早に玄関へと向かいドアを開けた。


 ドアを開けると沢山の荷物を持った遥が額に薄っすらと汗を浮かべて立っていた。


「いらっしゃい遥。とりあえず、中に入って」


「ええ、失礼します」


 中へと入って来た遥は両手に抱えた荷物をわたしの目の前に降ろすと「ふぅ」っと一息ついた。


「随分と沢山の荷物を持って来ましたね」


「ええ、料理の食材とケーキ。それ以外にも瑠璃華のために色々と持って来ました」


 ケーキ……奏ちゃんの誕生日の時に約束したことを覚えててくれていたようで、作ってきてくれたみたい。すごく嬉しい。


「ケーキ。わたしとの約束を覚えてたんですね」


「瑠璃華と約束しましたから当然です。それでこのケーキと食材をリビングに行く前に冷蔵庫に入れておきたいのですが?」


「もちろん良いですよ。じゃあ、キッチンに行きましょう。あっ、荷物持ちますよ」


 わたしは荷物の一部を持って遥と一緒にキッチンへと向かい冷蔵庫にケーキの入った箱と食材を入れた後、リビングに移動した。


「遥、暑かったですよね? 少しソファーでゆっくりして下さい。はい、これどうぞ」


 わたしは冷蔵庫にケーキや食材を入れるついでに取り出していた缶ジュースを遥に手渡した。


「ありがとう」


 遥は受け取った缶ジュースを飲んで一息ついた後、テーブルの上に缶ジュースを置いてわたしの方に身体を向けた。


「大事なことがまだでしたね。瑠璃華、誕生日おめでとう」


「ありがとう遥」


「瑠璃華の誕生日。私が出来る限りお祝いますからね」


「うん、楽しみにしてる」


「はい! 任せて下さい。あれ? そういえば今日の瑠璃華はバッチリ決まってますね」


「うん。流石にいつもの恰好だと雰囲気が無いと思って少しオシャレしちゃいました。ど、どうですか?」


「すごく似合ってて可愛いですよ。それじゃあ私も瑠璃華をお祝いするための服に着替えるとしましょう。脱衣所お借りします」


 遥は荷物を持って脱衣所へと消えて行った。


 一体、今回はどんな服なんだろう? 別荘では和風メイドだったけど。ああ、楽しみだな~。


 わたしは期待に胸を膨らませながら遥の着替えが終わるのを待った……。


「瑠璃華、着替え終わりましたよ」


 リビングに戻って来た遥の姿を見たわたしは懐かしさや喜びなど様々な感情が湧いてきた。


 遥の着ていた服は、遥が『Stella』で普段着ているクラシカルなメイド服では無い。一般的なメイド喫茶の定番とも言えるメイド服。


 太ももが見えてしまう程に丈の短いミニスカートに真っ白なサイハイソックスが合わさり見事な絶対領域が生まれている。そしてフリルとリボンが所々に施された白と黒の可愛らしいエプロン部分。頭にはこれまた可愛らしいふりふりなカチューシャ。


 わたしが通っていたメイド喫茶『bloom』のことを思い出させるようなメイド服だった。


 そんな可愛らしいメイド服を普段は肌を露出しないメイド服を着ている遥が身に着けているのだ。喜びを通り越して感動ものである。


「瑠璃華どうですか? 似合っていますか?」


 遥はその場でくるりと優雅に一回転した。


 ああ、そんなことしたら見えちゃうよ! っと思ったけどよく見ればパニエも履いているみたいだし、スカートが浮き上がらないように加減して回ったみたいで、私の心配には及ばなかった。


「す、すごく似合ってる。そ、それと……可愛いよ」


「そ、そうですか? このメイド服なら瑠璃華に喜んで貰えると思って用意したので、喜んでくれて良かった」


 遥は満面の笑みでわたしの方へとやって来た。


 うん、近くで見ると本当に似合っていて可愛い。今までの遥のメイド服姿は美しいって感じだったけど。今回の遥のメイド服姿は可愛いが前面に押し出されている。


 わたし的にはこのメイド服姿の遥を見れたことが誕生日プレゼントで良いんじゃないかと思うほどだ。


「と、とりあえず座って」


「それもそうですね」


 遥はわたしの隣に座る。


「驚いたよ。まさか遥がこのタイプのメイド服を着るなんて思わなかったから」


「ふふ、想像以上の反応をしてくれて良かった。本当に用意した甲斐がありました。実はこの格好で瑠璃華に久しぶりに耳かきをしてあげたいなって思うんです。どうでしょう?」


 遥は耳かきを取り出しわたしに見せて来る。


 そのメイド服姿で耳かきしてくれるなんて願ってもないことだ。


「よ、よろしくお願いします」


「ふふ、改まってどうしたんですか? あっ! このメイド服姿の私に耳かきされるのが嬉しいんですね? 本当に瑠璃華はメイドが好きですね。それじゃあ、落ちたら大変ですしソファーではなくカーペットの上でやりましょうね」


 遥はソファーから立ち上がりテーブルを邪魔にならない場所に移動させてからカーペットに座った。


「さあ、ここに頭を乗せて下さいね」


 遥はポンポンと自分の太ももを軽く叩いでわたしにそう促した。


「は~い。よいしょ」


 わたしは遥の太ももに頭を乗せる。ロングスカート越しとは違う、ミニスカートとサイハイソックスを同時に楽しめるこの膝枕にわたしは少しドキッとする。


「はい。それじゃあ始めます。動かないで下さいね~」


 遥の持つ耳かきがカリカリと優しく丁寧な手付きでわたしの耳を掻いていく。


「瑠璃華どうですかぁ~?」


 耳かきを始めてから何だか甘めの口調で話している遥がそうわたしに聞いてきた。


「はぁい、いい気もちいいですぅ~」


 遥の耳かきのあまりの気持ち良さにわたしは若干脳が溶けているような感覚に陥った。


「ふふ、それは良かった。カリカリ、カリカリ……」


 遥は時折オノマトペを囁きながら、わたしに耳かきをしている。前に耳かきして貰った時よりもわたし好みの耳かきとなっていた。


「やっている私が言うのもどうかと思うんですが、誕生日に耳かきって変かもしれませんね~」


「んんっ、そうかもしれないですけど~。わたしたちらしいとおもいますぅ。はぁ~」


「ふふ、確かにそうですね。それにしても今の瑠璃華はふにゃふにゃしていますね。そんな瑠璃華も可愛い……」


「はるかのみみかきがきもちいいの~」


「ふふ、満足してくれてとても嬉しい。あっ、右のお耳は終わりましたよ~。後は仕上げに……ふぅ~」


 遥の顔がわたしの耳に近づいて来たと思った次の瞬間、遥はわたしの耳に優しく息を吹きかけてきた。


「はぅ……」


「ふふ、可愛い声が出ちゃいましたね」


「みみふぅ~すきだからぁ」


「そういえばそうでしたね。それじゃあ、もっとやってあげますね~。ふぅ~」


「ひゃあ」


 しばらく遥の強弱様々な耳ふぅ~を右耳に受けたわたしは、さらにふにゃふにゃな感じになってしまった。


「瑠璃華~。まだ左のお耳が残っているので私の方を向いて下さいね~」


「はぁい」


 遥に言われるがままにわたしは遥の膝の上で向きを変えた。


「それじゃあ、左の耳かきを始めますね~。今度は耳かきの合間にお耳にふぅ~ってしてあげますね。カリカリ……カリカリ……」


 その後、遥の耳かきと耳ふぅ~を思う存分堪能したわたしは……気持ち良すぎてふにゃふにゃを通り越して意識すら失いかけるほどだった……。



 ◆◆◆



「瑠璃華。落ち着きましたか?」


「うん、耳かき想像以上だった……」


 今わたしは膝枕された状態で遥に頭を優しく撫でられている。時折、耳などを指でスリスリと触られたりもされている。


「瑠璃華の誕生日だから張り切っちゃいました。瑠璃華、落ち着いたなら次はどうします?」


「じゃあ、遥の着ているそのメイド服、もっとよく見せて?」


「もちろん良いですよ。とりあえず、ソファーに座りましょう。足が少し疲れちゃいました」


「そうですよね。わたしの頭を乗せていましたし、直ぐに退きます」


 わたしは立ち上がりソファーの方へと向かう。


「それじゃあ私も……」


 遥は立ち上がるとわたしの居るソファーの方へと歩いでくる。だが、その足取りは重いというか慎重にというかおぼつかない足取りだ。


「膝枕のためにずっと正座していたからか、足が痺れちゃったみたい」


「遥、大丈夫? 手を貸すよ」


 わたしはソファーから立ち上がり、遥に近づく。


「ごめんなさい瑠璃華。きゃ!?」


「わっ!?」


 バランスを崩した遥がわたしに倒れ込んでくる。それによりわたしも体勢を崩してしまいカーペットの上に倒れてしまう。


「いてて……」


「だ、大丈夫ですか!?」


「大丈夫。あっ……」


 わたしが目を開けると心配そうな表情の遥が見ていた。しかも今にも唇と唇が触れ合ってしまうんじゃないかという距離だった。


 遥はそのことに気付いていないみたいだ。


「どうしました? やっぱり、どこか痛い場所があるんですか?」


「えっと、違くて……そ、その……遥の顔がすごく近い……」


「へ? はっ!? ご、ごごごめんなさい! 直ぐに退きますので!」


 気付いた遥は素早くわたしから距離を取った。


 か、顔が近すぎてドキドキしちゃった……。あ、あの距離は何かの拍子で、き、キスしちゃうんじゃないかってくらいの近さだった……。か、顔が熱いよ……。


「本当にごめんなさい」


 遥がわたしの傍までやって来て、手を差し出した。


「だ、大丈夫だから……事故みたいな物だよ。気にしないで」


 わたしは差し出された手を取り立ち上がり、遥と共にソファーへ向かい座る。


「瑠璃華、本当に大丈夫ですよね?」


「うん。大丈夫、大丈夫。さぁ、気を取り直してメイド服を見せて欲しいな」


 わたしは如何にか平静を取り戻し、本題に入ることにした。


「瑠璃華がそこまで言うなら。どうぞ、好きなだけ見たり触ったりして下さい」


「それじゃ、遠慮なく……」


 まずわたしはエプロン部分に触れた。一般的なメイド喫茶のメイド服を起点として、可愛らしさを重視しているとも言えるデザインだ。やっぱり、フリルとアクセントとして付いているリボンが可愛さを引き出している要因だね。


 次にわたしが触れたのはスカート。これもまた可愛さ重視のデザインだ。まぁ、エプロン部分と合わせるのだから当たり前か。膝枕して貰った時のスカートの肌触りは最高だった。


「あ、あの……瑠璃華」


「ん? なに遥」


 遥はスカートを手で押さえる。


「スカートをあまり持ち上げないで下さい。パニエも履いていますし見え難くなっているとは思いますが万が一のことがあるので……」


「あっ、ごめんなさい。夢中になってて気配りが足りなかったよ」


「次から気をつけてくれたら良いので……」


 その後も気を配りながら遥の着ているメイド服を見て行った。やっぱり、遥のメイド服に対する力の入れようにはいつも驚かされる。


「本当に遥の用意するメイド服って凄いよね。別荘の時の和風メイドもそうだったけど」


「それは瑠璃華の喜ぶ顔を私が見たくて用意していますから当たり前です」


「わたしは嬉しいけど、大丈夫なの?」


「瑠璃華の心配には及びませんよ。私も結構楽しんで着ていますからね。これを注文した時はスカートの丈も短いですし、エプロン部分とスカート、それにカチューシャにもフリルとリボンが沢山付いていて、私が着るには可愛すぎるんじゃないかと思っていたのですが、いざ着てみると私自身良いなって思いました。瑠璃華にも可愛いって褒めてくれて嬉しかったですし。要は私がやりたくてやっているだけなんです。だから、瑠璃華は気にせずに楽しんでくれたら嬉しいなって思います」


 遥のわたしを喜ばせようとするその姿勢がとても嬉しい……。これからもずっとそうしてくれたら良いな……。


「そうなんだ。なら良かったよ」


 わたしは遥の肩にもたれ掛り、身体を預ける。


「ふふ、急に私にもたれ掛ってどうしたんですか?」


「ん~。ただ、こうしたかっただけ、かな?」


「そうですか。どうぞお気の澄むままにご堪能下さい。瑠璃華お嬢様」


「うん、そうする……」


「ちなみに私がギュと優しく抱きしめて甘やかしてあげるサービスも御座いますよ?」


「あっ、それ良いかも。お願いしようかな~。えへへ」


「承りました。さあ、私にもっと近づいて来て下さい」


 遥は両手を広げてわたしを受け止める体勢になる。


「じゃあ、失礼しまぁ~す」


 その後、わたしは全身で遥のメイド服を堪能した……。


 誕生日さいこ~!

改めてあけましておめでとうございます!

気付けばこの『実は私が通っているメイド喫茶の推しが生徒会長だった!?』もブックマークが300を超えてしまいました。

想像以上のことに私自身、大変驚いております。

去年は更新頻度が下がったりなど、私としても望まぬ状態になっていました。

今年の抱負としては本作の更新頻度の向上。本作以外にも色々と執筆している作品がありますのでそれを何作か投稿出来たらな~っと思っています。

あくまで願望ですが……。(執筆中の作品の中で話数の多い作品が10話程度しか出来ていませんのでもしかしたら無理かも?)

語彙力や表現力の乏しい私ですが、今年も出来うる限り努力していくので、これからもよろしくお願いします。

※ちなみに1月1日の0時10分頃に短編作品である『最期に貴女に会えて本当に良かった』という百合作品を投稿しますのでそちらも良かったら、よろしくお願いします。

ただ注意として、この『最期に貴女に会えて本当に良かった』という作品は直接的表現ではありませんが自死に関するお話になりますのでご注意下さい。

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