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65話 浮かれたお姉ちゃんと決意する私

 お姉ちゃんが別荘から帰って来て、大体二時間ほど経っているんだけど……。


「ふん、ふふ~ん」


 私の目の前にはとてつもなく機嫌の良いお姉ちゃんが鼻歌交じりでリビングの掃除をしている。


 こんなに機嫌の良いお姉ちゃんなんて今まで見たことがない。気になり過ぎて買ってきた漫画に全く集中出来ない。


「奏、さっきから私をじっと見てどうしたの?」


「えーっと……お姉ちゃんが別荘から帰ってきてからずっと機嫌が良さそうだから気になって」


「ふふ、そう? いつも通りじゃない?」


 いやいや、お姉ちゃん。今だって顔が綻んでて今にも踊り出しそうなほどだよ。もしかして自覚がない? だとすれば相当な浮かれっぷりだなぁ。


「今のお姉ちゃん。顔が綻んでて、私幸せ~って気持ちが一目でわかるよ」


「えっ!? そ、そんなに? や、やだ……」


 お姉ちゃんは恥ずかしそうに両手で顔を押さえて私に背中を向けた。なんだこの可愛い生き物は……。


 あのお姉ちゃんがここまで可愛らしい反応を私に見せるとは……これも瑠璃華ちゃんに恋した結果か。


 恋の力って凄い……。


 こんな反応をするくらいだから、別荘での瑠璃華ちゃんとのお泊まりはお姉ちゃんにとって最高のものだったんだろうね。


 これはもしかしたら私の望んだ展開になって……は無いか。だってお姉ちゃんだし……。とりあえず話を聞いてみよう。そのもしかしたらがあるかも知れないからね。


「お姉ちゃん。そんなに恥ずかしがる必要はないでしょ。ほらほら、私の隣に座って別荘での話聞かせて欲しいなぁ~」


「そ、そう言われても……」


 渋るお姉ちゃんに業を煮やした私はソファーから立ち上がり、お姉ちゃんの腕を掴んでソファーまで連れて行き座らせた。


 そしてお姉ちゃんが逃げないようにしっかりと腕を掴んだ。


 ふふふ、お姉ちゃんが別荘での出来事を話してくれるまで絶対に離してあげないんだから。


「ちょ、ちょっと奏。は、離してよ」


「やだ。お姉ちゃんが別荘での出来事を話してくれない限り、離してあげない」


「ええ……どうしてそんなに聞きたいの?」


「そんなのお姉ちゃんが瑠璃華ちゃんと、どこまで親しくなれたのか知りたいからに決まってるでしょ。ほらほら、観念して瑠璃華ちゃんと何があったか話してよ」


「わかった! わかったから! とりあえずその手を離してちょうだい。逃げずに話すから」


「本当に?」


「本当よ。だから離して」


 私はお姉ちゃんの言葉を信じて、手を離した。


「ほら、離したよ。最初から順を追って話してね」


「わかったわよ……。えっとね……」


 お姉ちゃんは別荘での出来事を色々と話し始めた。


 渋っていたはずのお姉ちゃんは、話し始めたら止まることなく、私に瑠璃華ちゃんとの思い出をスマホの写真を見せながら楽しそうに話してくれた。


 お姉ちゃんの話を聞いた結果。予想通り私の望んだ最高の展開にはなっておらず、お互いの呼び方を変えただけだった。まぁ、わかってたけど……。でも、お姉ちゃんにしてはかなり頑張ったと思う。


 そんなお姉ちゃんの話を聞いて私はやっぱり思うのだ。どうして未だにこの2人は付き合っていないのかと。


 今回の別荘での話を聞いたり写真を見れば、恋人同士でやる事ばかりしているのだ。それなのにこれである。


 お姉ちゃんが瑠璃華ちゃんのことが大好きなのは見ていたらわかる。他人が見ても何となく察するほどにはわかりやすい。


 しかし、やっぱり問題は瑠璃華ちゃんだ。


 私が思うに瑠璃華ちゃんはお姉ちゃんとの甘え甘やかされな関係を長く経験し過ぎたせいで、感覚が麻痺してそれが瑠璃華ちゃんの中で当たり前になってしまっている気がする。


 だから、お姉ちゃんが積極的にアプローチしても、瑠璃華ちゃんは少し恥ずかしがって直ぐに慣れてしまうという流れになっている。


 そりゃあ進展しないわけだ。


 でも、少しずつだけど何かが変わろうとしているのも確かだ。お姉ちゃんと瑠璃華ちゃんがお互いの呼び方を変えたことがその切っ掛けになるだろう……お願いだからそうなっていて欲しいと切実に思う。


とりあえずこれで先輩と後輩という壁は表面上は取り除かれたのだから、後は瑠璃華ちゃん自身が自分の気持ちに気付くかどうかである。


 これはお姉ちゃんだけでは難しいかもしれない。だから、私がその手助けをするべきか……それとも計画通り、私は裏から支えた方がいいのだろうか?


 私の考えはまとまらない。とりあえずお姉ちゃんが瑠璃華ちゃんと親しく呼び合えるようになったことを祝福してあげよう。


「お姉ちゃん凄く楽しかったんだね。それと瑠璃華ちゃんと親しく呼び合えるようになって良かったね」


「うん、私もそれが一番嬉しかったの。だから、浮かれてしまったのね。恥ずかしい」


 そんなお姉ちゃんの顔は完全に恋する乙女の顔になっていた。


 うん! やっぱりお姉ちゃんを手伝おう。お姉ちゃんを見て、私はお姉ちゃんの手助けをすることを心に決めた。


「ねぇ、お姉ちゃん……」


「ん? なに奏?」


「お姉ちゃんってさ……瑠璃華ちゃんのこと好きでしょ?」


「な、な、な、何言ってるのよ!? た、確かに私は瑠璃華のことが好きよ。で、でも、わ、私のす、好きは友達としての好きだから!」


 ここまでわかりやすい反応をするとは、学園での真面目な生徒会長とは思えない取り乱しっぷりだ。


 私のお姉ちゃんがまたしても可愛い生き物と化している。ああ、やっぱりお姉ちゃんは私にとって最高のお姉ちゃんだ。お姉ちゃんバンザイ!


「隠さなくても良いよ。お姉ちゃんが瑠璃華ちゃんのことをLOVEの意味で好きなことくらい。見ててわかるもん」


「そ、そんなに私ってわかりやすいの……はっ!?」


「ほんとお姉ちゃんはわかりやすいなぁ~。ほらほら、正直に言っちゃいなよ」


「むぅ……」


 お姉ちゃんは顔を真っ赤にして私を恨めしそうに見ている。そんなお姉ちゃんも可愛いなぁと思ってしまう私はやっぱりシスコンなんだなと再認識した。お姉ちゃん最高!


「ううぅ……そ、そうよ! わ、私は瑠璃華のことが好きよ! これで満足! はぁ~」


 お姉ちゃんは両手で顔を押さえる。髪の隙間から見える耳は真っ赤に染まっていた。


「うむ、正直でよろしい。お姉ちゃんはやっぱり瑠璃華ちゃんのことが好きなんだね」


「そ、そうよ。でも、女である私が同姓の瑠璃華を好きになるのって、奏はおかしいと思う?」


 急に汐らしくそう聞いてくるお姉ちゃん。やはり、そこは気になるところだろう。でも、私達が通っている学園にはお姉ちゃんが目指すべきお手本のようなカップルが存在している。


「おかしくないよ。むしろお姉ちゃんのことを応援するから。お姉ちゃんが瑠璃華ちゃんに恋していることがおかしいのかなって悩んでいるみたいだけど、私達の通っている学園にいるでしょ? そんな悩みを吹き飛ばすようなカップルが」


「それって瑠璃華のお友達の恵梨香さんと凛子さんのこと? 私でも知っているし会ったこともあるわ。確かに私もあの2人のようになれたらなって、見ていてとても羨ましかったわ」


「そうそう、お姉ちゃんが目指すべきはあの2人だよ」


「でも、本当に瑠璃華と付き合えるのかな? 私なりに頑張っているつもりなんだけど……」


 お姉ちゃんなりに好きになって貰えるように頑張っているのはわかっている。


 でも、お姉ちゃんに甘やかされることになれてしまっている瑠璃華ちゃんは手強いのだ。


「大丈夫だよ。瑠璃華ちゃんが気付いてないだけだよ。私がお互いの呼び方を変えるようにお姉ちゃんにアドバイスしたのは、この状態を変える切っ掛けになればと思って言ったことだよ」


「奏、その時から私が瑠璃華のことが好きなのを知っていたの?」


「そうだよ。お姉ちゃんの恋を陰ながら支えようかと思っていたけど、お姉ちゃんが楽しそうに瑠璃華ちゃんの話をしているのを見て、手助けしたいと思ったから今お姉ちゃんに話しているんだよ。まぁ、私がどこまでお姉ちゃんの力になれるのかはわからないけどね。最終的にはお姉ちゃん自身の力でなんとかしないといけない訳だし」


「そ、そうだよね。私も今後どうすれば良いのか少し不安だったの。誰にも相談できないことだし……。でも、奏が協力してくれるのなら心強いわ」


「うん、任せてよ。何か困ったことが合ったら遠慮なく相談してね」


 そんな時、家のチャイムが鳴った。誰かがやって来たみたい。


「私が出るよ。お姉ちゃんは座ってゆっくりしててね」


 そう言って私は玄関へと向かい扉を開けた。


 家にやって来たのは配達員で、どうやらお姉ちゃんが注文していた物みたい。私は配達員から配達物を受け取った。


 受け取った配達物が気になり、送り主を確認すると私も利用しているオーダーメイドのお店だった。どうやら配達物の中身は服のようだ。お姉ちゃんがあの店に依頼したってことは中身はアレか。そう考えながら私はリビングへと戻った。


「お姉ちゃんが注文していた物みたいだけど」


 私は配達物をお姉ちゃんに手渡した


「ああ、そういえば今日届く予定だった物ね。ちゃんと届いて良かった」


「ねぇ、お姉ちゃん。また、アレを注文したの? 前のは和風だったっけ?」


「そうよ。今回の物は瑠璃華にもっと喜んで貰えると思うわ。注文した後は、これを着ると考えると恥ずかしかったけど。瑠璃華に水着も見られたし、それに一緒に温泉にも入ったんだから、これを恥ずかしがらずに着れると思うわ……たぶん……」


「そうなんだ。それで今回は何を注文したの? アレなのはわかるけど」


「それはね――」


 私はお姉ちゃんから今回注文して届いた物が何かを聞いた。確かに瑠璃華ちゃんが喜びそうな物だ。


「確かにこれなら瑠璃華ちゃんが喜ぶと思うよ」


「そうよね。奏にそう言って貰えると安心するわ。けど、これとケーキやプレゼントだけじゃ足りないと思うの。ねぇ、何か瑠璃華が喜びそうなことってないかしら?」


 瑠璃華ちゃんに喜んでもらえそうなことか……。瑠璃華ちゃんの好きな事をそれとなく聞いているからちょうど良い。お姉ちゃんに教えてあげよう。


 私はお姉ちゃんに瑠璃華ちゃんが好きなことなどをお姉ちゃんに教えてあげた。これで2人の仲がさらに縮まれば良いんだけど……。

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