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57話 寝起きのカワイイ先輩

「んんっ……ふぁあ~。あっ、そういえば、わたし……」


 目が覚めたわたしは遥先輩の膝の上で眠っていたこと思い出す。


 わたしは起き上がろうとするのだが、遥先輩の手がわたしの頭の上にある事に気付いた。


「あ、あの~遥先輩。あっ、もしかして眠ってる?」


 遥先輩に手を退けて貰おうと声をかけたわたしの耳に、微かに寝息のような音が聞こえてくる。どうやら、遥先輩は眠っているみたいだ。


 わたしは遥先輩を起こさない様、頭に乗っている遥先輩の手を退けて、ゆっくりと起き上がる。


 起き上がったわたしは眠っている遥先輩に、吸い寄せられるように顔を近づける。


「すぅ……すぅ……」


 遥先輩は規則正しい間隔で小さな寝息を立てて眠っている。


 そういえばわたし、遥先輩の寝顔を見た事ないかも。わたしが風邪をひいて寝込んでいた時は、寝ている姿は見たけど顔は見えなかったな。


 いつも遥先輩にわたしの寝顔を見られているんだから、わたしが遥先輩の寝顔を見てもいいよね?


 わたしは遥先輩の寝顔をもっと近くで見ようとさらに顔を近づける。


 幸せそうな表情で眠っている遥先輩の寝顔はとっても綺麗で魅力的に感じ、わたしは無意識に遥先輩の頬に触れていた。


 きめ細やかで艶やかな遥先輩の肌はとても柔らかく、触っている頬から遥先輩の温かな体温がわたしの手に伝わって来る。


 その瞬間、ビクッと遥先輩の身体は震え、驚いたわたしは素早く遥先輩の頬に触れていた手を引っ込める。


「んんっ……わたし、ねてた?」


 遥先輩はわたしが頬に触れていたことに気付いていないようで、眠たそうな表情で目を擦り、小さく欠伸をしている。


 そんな普段見ないようなカワイイ行動をしている遥先輩にわたしは声をかけた。


「遥先輩、おはようございます」


 わたしが横から声をかけたことに驚いたのか、遥先輩はビクッと身体を震わせてわたしの方を向いた。


「あっ……る、瑠璃華さん。いつからそこに……」


「えっと、遥先輩が起きる少し前に目が覚めちゃって」


 わたしがそう言うと遥先輩の顔が、しだいに赤くなっていく。


「も、もしかして、私が眠っている所を見てたんですか?」


「はい。遥先輩の寝顔を見た事が無かったので、つい……」


 それを聞いた遥先輩は両手で顔を覆って俯いた。


「はぁぁ……は、恥ずかしい。る、瑠璃華さんに私のみっともない姿を……」


 髪の隙間から見える耳も赤くなっていて、わたしに寝顔を見られたことが相当恥ずかしかったようだ。


 遥先輩の貴重な寝顔を見れてわたしは得した気分なんだけどね。あっ! でも、遥先輩と一緒のベッドで眠るからその時にも見れるかも。


「幸せそうに眠ってましたよ。遥先輩って寝顔も綺麗なんですね。あと、寝起きの遥先輩は可愛かったです」


「はぅ……か、からかわないで下さい……。瑠璃華さんにそう言われるのは嬉しいですけど……でも、やっぱり恥ずかしい……」


 そう言いながら、モジモジと恥ずかしがっている遥先輩。


 恥ずかしがっている遥先輩、カワイイな~っと思いながら、今度は脚を小さくバタつかせ始めた遥先輩を眺める。


 なんか遥先輩、起きてからの行動や反応が可愛すぎない? ずっと見てても飽きない自信がある。こんな遥先輩、奏ちゃんでも見た事が無いんじゃないかな?


 でも、流石にこのままだとお話も出来ないから、何とかしよう。


「よっと」


 わたしは遥先輩の膝に仰向けで寝転がり、遥先輩を見上げる。


「遥先輩、失礼しますね」


「へっ?」


 わたしは遥先輩の顔を覆っている両手を掴んで顔から引き剥がす。


 遥先輩は目を見開き驚いている。


「る、瑠璃華さん。急に何を……」


「このままだと、お話が出来ないですからね。少し強引な方法を使わせて貰いました。遥先輩、そう恥ずかしがらないで下さい。寝顔なんて見られても良いじゃないですか。わたしは何度も遥先輩に寝顔を見られているんですから」


「で、でも……」


「遥先輩。今夜わたしと一緒に寝る時に嫌でも寝顔を見られるんですよ?」


「うぅ……確かに……。そ、それじゃあ、私は瑠璃華さんが眠った後に眠ります。そして、瑠璃華さんよりも早く起きます」


 そんな子供っぽいことを言い始めた遥先輩。


「そんな事を言うのなら、わたしは寝たふりをして、油断して眠った遥先輩の寝顔をじっくりと見ちゃいますよ」


「も、もう、瑠璃華さんは意地悪です。寝顔を見られたくない人もいるんですよ」


 遥先輩はムスッとした表情でわたしに抗議してくる。


「遥先輩がそんなに恥ずかしがるから、意地悪したくなっちゃったんですよ。わたしは遥先輩の寝顔好きですよ」


 わたしがそう言うと遥先輩は動揺したようで、わたしから視線を逸らした。


「はぅ……そ、そんなにす、好きなんですか? わ、私の寝顔……」


「はい、いつまでも見ていられる気がします」


「そ、そうですか? 瑠璃華さんが私の……ふふ……」


 先程とは一変して遥先輩は嬉しそうに笑っている。わたしが寝顔を褒めた事がそんなに嬉しかったのかな?


 そんなことを思いながら、わたしは起き上がる。


「それじゃあ、これから楽しくお話ししましょうか」


「そうですね。その、瑠璃華お嬢様」


 遥先輩は思い出したかの様にメイドとして振舞い始める。


「遥先輩、今はメイドのハルとしてでは無く、遥先輩とお話ししたいです」


「そうですか? じゃあ、お菓子を食べながらお話ししましょうか。今、用意するので少し待っていて下さい」


 その後、紅茶とお菓子を持って戻って来た遥先輩とのティータイムが始まり、その中の話題でこの近くにある海が見える露天風呂の話になり、夕食の後に行くことになった。

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