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49話 とある瑠璃華の夏休みの一日

 奏ちゃんの誕生日から数日後。


 わたしはエアコンの効いた自室でスヤスヤと気持ち良く眠っていた。


 明日はバイトが休みだからとゲームや動画配信の視聴などで夜更かししてしまったからだ。わたしの夏休みって大体こんな感じな気がする。


 まぁ去年は受験勉強が大変で夏休みを満喫出来なかったけどね。


 でも、遥先輩と出会った今年はとても楽しい夏休みを過ごしている。それにまだ、8月に入ったばかりで遥先輩と一緒に過ごせる時間が沢山あってわたしはとても嬉しい。


 そんなわたしが目を覚ましたのは10時を少し過ぎてからだったが……。


「んん~……まだ、にぇむい……ねよ……なちゅやすみさいこ~」


 眠り足りないわたしは、夏休みの素晴らしさを噛み締めながら二度寝することにした……。



 ◆◆◆



「ん〜。あっ、12時過ぎてる……」


 目を覚ましたわたしは、ベッドから起き上がり大きな欠伸をしながら部屋を出て、キッチンに向かい冷蔵庫から麦茶を取り出し、コップに注ぎ飲み干した。


「ふぅ……お昼は……」


 作るのは面倒だな。パンで良いか。


 わたしはキッチンに置いてあったパンにジャムを塗り頬張る。


 ああ、このだらしない感じが夏休みの一日らしくて良いな。そう思いながらわたしは牛乳を飲み、キッチンからリビングへと向かいソファーに腰を掛けた。


 さて、今日は何をしようかな? わたしは窓の外に目をやる。


 今日も日差しが強くて暑そう。やっぱり、エアコンの効いた部屋でゲームや動画配信を堪能するのが一番だね。


 それに今週の日曜日には遥先輩とPRイベントに行く予定があるから、ゲストとして出演する白百合エリと黒百合リンについて知るために動画を見てみるのも良いかも。凜々花さんとコラボした時に動画をいつか見ただけだからあまり覚えていないのだが、ネットで少しだけ調べて簡単な知識だけはある。


 あっ、そうだ自分の部屋に戻る前にお菓子と飲み物を用意しよう。


 わたしはソファーから立ち上がり、キッチンに向かいお菓子と飲み物を持って自分の部屋に戻った。



 ◆◆◆



 部屋に戻り椅子に座ったわたしは目の前にあるPCを起動した。


「さて……まずは……」


 わたしは始めに好きな配信者が動画を新しく投稿していないかと確認していく。すると……Lili、凜々花さんの動画が新しく投稿されていた。


 凜々花さんの動画にはレナ、玲奈さんが久々に出演していた。動画についたコメントでも玲奈さんの久々の出演で盛り上がっていて、再生数もかなり伸びていた。玲奈さんにもかなりのファンが居たので再生数が伸びるのは当然のことである。


 動画の最後に凜々花さんが仲の良い友達を1人呼んで3人でゲームをする動画を投稿する予定と言っていたけど……まさか、奏ちゃんなのでは? 凜々花さんと玲奈さんと仲が良い人と言えば奏ちゃんぐらいしか思いつかないから、恐らくそうなんだろうな。


 もし出演する人が奏ちゃんなら、とても人気が出そうだ。もしかしたら、奏ちゃん単独で配信者になる可能性だって有るかも知れない。バイノーラルマイクも持ってるしASMR関連ならかなりの人気になるだろうな~。


 そう考えながら、他の配信者の新しく投稿された動画をお菓子を摘みながら見ていた。



 ◆◆◆



「あっ、もうこんな時間。夕食どうしようかな?」


 時計を見れば6時を過ぎていた。まさか、そんなに時間が経っていたなんて……動画を見るのに夢中で気付かなかったよ……。


 わたしは椅子から立ち上がりキッチンに向かった。


「何を作ろうかな? 簡単に作れる物は……」


 戸棚を開け何かないかと探すと蕎麦を見つけた。


「あっ、これがあったか……ちょうど良い」


 遥先輩と流しそうめんをした時に、遥先輩が持って来た高そうな麺つゆが冷蔵庫にある。遥先輩がくれると言うので貰って良かった。


 わたしは蕎麦を茹でて、遥先輩に感謝しながら蕎麦を食べた。この麺つゆ、本当に美味しい……。


「はぁ~美味しかった」


 食べ終えたわたしは手早く片付けをして部屋に戻る。


「そうだ、お風呂に入らないと」


 椅子に座り動画視聴に戻ろうとしたわたしはお風呂に入っていないことを思い出し、お風呂に入る準備をして足早に浴室へと向かった。


「はぁ~。気持ちいい……」


 体を洗い浴槽に浸かったわたしは癒されていた。やっぱり、お風呂は気持ち良くて気分が良くなるな~。遥先輩と一緒にいる時のわたしって、確かこんな気分で過ごしている気がする。遥先輩はどうかわからないけど、相性が良いのかな?


 そう言えば、遥先輩が別荘の近くに温泉があるって言ってたな。少し先のことだけど、遥先輩と別荘に行くの楽しみだな~。


 その前に遥先輩の母親の会社で行われるPRイベントに行く訳だけど。まだ、出演する白百合エリと黒百合リンの動画を見ていない。後で見なきゃ。



 ◆◆◆



 お風呂から上がり部屋に戻ったわたしは少し休んだ後。白百合エリと黒百合リンのチャンネルである『エリ☆リンチャンネル』で動画や配信のアーカイブを視聴し始めようとしていた。


 その前にわたしが『エリ☆リンチャンネル』について知っていることと言えば、白百合エリは清楚感溢れるお姫様の見た目をしていて、黒百合リンはミステリアスな雰囲気を醸し出している魔女の見た目をした2人組のVtubar。


 個人勢らしいのだが、人気イラストレーターが手掛けていたり。3Dモデルのクオリティやそれを動かす機材の性能を考えれば、企業勢ではないかとも言われている謎の多いVtubarである。


 チャンネル登録者数は50万人を突破しており。主に雑談配信や歌配信などを行っていて、最近はゲーム配信に力を入れているみたい。


 メインである雑談配信では白百合エリと黒百合リンの仲睦まじいトークが好評で、2人は実際に付き合っているのではないかと、多くのファンから噂されている。


 そこまでは、わたしでも知っていることだ。夏休みの計画を立てている時に、誰かに似ているなと思っていたけど思い出せなかった。動画を見て行ったら思い出せそうな気がするので早速視聴することにした。


 雑談配信のアーカイブを視聴しているけど……この2人の会話の雰囲気や口調などにやはり既視感を覚える。


 わたしの頭の中に2人の人物が思い浮かんだ。ま、まさかね……でもな~。


 思い浮かんだ2人が本当にそうなのかを確認するために、わたしは歌配信のアーカイブを視聴する。


 今私が聞いているのは2人がデュエット曲を歌っている所。息がピッタリでとても歌が上手い……やっぱり、この歌声をわたしは聞いたことがある……それを裏付けるために黒百合リンの歌を聞くことにした。


「やっぱり……そうだよね……」


 黒百合リンの声量のある、かっこいいと聞き惚れる程の歌声……これはどう考えても……。


「やっぱり、この歌声は凛子だよね……それじゃあ、もう一人は……恵梨香……」


 わたしは確信する。カラオケで2人の歌声に聞き覚えがあったのは、そういう事か……納得した。しかし、わたしの知り合いに配信者が二組もいるとは思わなかった……わたしが思っている以上に世間と言うのは狭いんだと思った……。


 でも、どうしようか……。遥先輩と行くPRイベントで出会ってしまったら、とても気まずい……いや、でも機材の関係上、別の場所から配信するだろうから、出会う心配は無いよね? 


 わたしは、友達である恵梨香と凛子の正体を意図せず知ってしまい。しばらく悩むことになり、また夜更かししてしまうのである……。

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