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4話 引っ越し祝いは『Stella』で肩もみ!?

 わたしが『Stella(ステラ)』に初めて行った日から、2週間ほど経ったある日。


 凛聖(りんせい)女子学園の入学式が迫ってきたこの日に。わたしは、親戚が所有しているマンションに引っ越してきた。一人暮らしには少し広すぎる気がするけど、友達を呼んだりした時にはいいかも知れない。まぁ、できたらの話だけど……。


 午前中は荷物の片づけなどをしていたんだけど、メイドが出てくるマンガや小説などをたくさん持ってきたせいで一向に作業が捗らないこと……。一体いつになったら終わるんだろうか……。まだ、衣類や調理道具とかもあるんだけどな~。


 話は変わるけど、持ってきた物の中に自作のメイド服もある。わたしがこのメイド服を着る日が来るのかは不明だけど、受験期間中に苦楽をともにした戦友のようなものである。愛着があるんですよ。


 まだ、中身の入った段ボールが残った室内を見てため息をつく、時計を見ると、もうお昼であることに気づく。お腹が空いたんだけど、引っ越してきたばかりで冷蔵庫には何も入っていない。外で食べて来ようと思うけど、どうしよう……。


 あっ! そうだ! Stellaに行こう! あの店は軽食もお菓子もあるし、引っ越し祝いに最適かも。それにあれから2週間、引っ越しの準備や手続きで行くことが出来なかったし、ハルにまた会ってお話がしたいな。


 そうと決まれば準備してStellaに行こう。Stellaに行った帰りに食材や日用品を買って帰ろう。


 2週間振りのStella、ハルに会いたいわたしは、足早にStellaへと向かった。



                               ◆◆◆



 『Stella』の扉の前、わたしはハルに会える喜びを胸に扉を開けた……。


「「お帰りなさいませ。お嬢様」」


 よかった、ハルがいる。それとレンとは違うメイドさんがいる。明るい雰囲気の金髪の子ですよ! 名札を見るとナナと言うらしい。この子もカワイイな~。しかし、この店のメイドさんって、レベル高すぎない? 


「お嬢様、お席にご案内いたします」


 ハルに案内された席は、わたしが初めてきた時と同じ席だった。わたしが席に着くとハルはメニューを渡しながら話しかけてくる。


「お嬢様。ご来店下さりありがとうございます」


「はい! わたし、このお店に来るのをとても楽しみにしていましたから」


「ふふ、気に入っていただいて私も嬉しいです。では、ご注文がお決まりになりましたら、お呼びください。失礼いたします」


 わたしはメニューを見て、サンドイッチとクラムチャウダー。今日は引っ越し祝いだし、ショートケーキに紅茶はアールグレイにしよう。


 わたしは、ハンドベルを鳴らす。すぐにハルがやってきて。


「ご注文をお伺いします」


「えっと。サンドイッチとクラムチャウダーをお願いします。それと食後にショートケーキとアールグレイをお願いできますか?」


「ご注文はサンドイッチ、クラムチャウダー。食後にショートケーキ、アールグレイ。以上でお間違いないでしょうか」


「はい」


「かしこまりました。少々お待ちくださいませ」


 注文を聞いたハルはバックヤードに戻っていく。


 わたしは店内を見渡した。しかし、前回もそうだったけど客はわたしだけ。ハルは1日に数人しか来ないって言ってたような気がするけど。このお店、経営大丈夫なのかな? 心配だよ……。『bloom』みたいに突然、潰れるとかないよね? ハルとお話できたら聞いてみようかな?


「お待たせいたしましたお嬢様、ご注文のサンドイッチとクラムチャウダーで御座います」


 テーブルに注文した品を並べたハルは「食べ終わりましたら、ショートケーキとアールグレイをお持ちしますので、その時にお呼びください」と言い残し戻っていった。


 この店で出される食事は本当においしい。気づいたらお皿の中身が空になっていた。わたしは食後のデザートを持ってきて貰うために、ハンドベルを鳴らすとハルがショートケーキとアールグレイを持ってやってきた。


「ショートケーキとアールグレイで御座います。こちらのお皿はお下げします」


 下げたお皿を持ってバックヤードに入っていったが、すぐにハルが戻ってきた。


「お嬢様、またお話しませんか?」


 わたしは、これを待っていたのよ。ケーキと紅茶を楽しみながらハルとの会話を楽しむ、これこそがわたしにとっての引っ越し祝いと言っても過言ではない!


「いいですよ。お話しましょう」


「では、お嬢様。お隣失礼します」


 ハルが椅子に座ってから、わたしは先ほど抱いた疑問について質問する。


「あの~。ハルに質問するのはどうかと思うんだけど……その、このお店って経営的に大丈夫なんですか? 潰れたりしませんよね? 前に話しましたけど、通っていたメイド喫茶が潰れてショックだったんで……」


「確かに、お嬢様が心配するのは無理もないと思います。私も最初はそう思いました。ですが、ご安心ください。このお店は運営しているのは、実は春町グループなんですよ。お嬢様はご存じですか?」


「えっと。たしか、色んな飲食店チェーンを運営している会社って、ニュースで見たことあります」


 まぁ、あまりよく知らないんだけど。


「はい。正確には、このお店は春町グループのコンセプトカフェ専門の子会社が運営しているのですけど。その子会社の社長は、春町グループ社長の奥さんなんです。まぁ、端的に申し上げますと社長夫婦の趣味らしいです。このお店に関しては、社長自らプロデュースしていまして、利益は一切考えていないと聞いております。ですから、恐らく潰れるということは無いと思います」


「そっか~。よかった~」


 まさか、本当に趣味だったとは……。まぁ、難しい話なんてよくわかんないし、わたしはこの店が潰れないのならそれでいい。


「あっ! そうだ。わたし、引っ越して来たんですよ。今日」


「そうなんですか。では、これからはお店に来る機会も増えそうですね」


「はい! これからは好きな時に来れるので、嬉しいです!」


「ふふ。では、午前中は引っ越し作業をしてらしたんですか?」


「そうですね。荷物が多くて整理するのが大変なんですよ。まだ途中なんですけどね」


「そうなんですね。では、お疲れでしょう。私が肩を揉んで差し上げましょうか?」


 そういうと、ハルは席を離れ、わたしの後ろに立った。


「いやいや。そんなことして貰わなくても大丈夫でっ、ひゃっ!」


ハルはわたしが言い終わる前に、肩を揉み始めた。あっ! 気持ちぃ……。まさか、メイド喫茶で肩もみされるとは思わなかった……あぁ~。


「お嬢様、どうですか?」


「はぃ~。とっても気もちいいでしゅ~」


わたしは一体、このお店になにをしにきたんでしょうか~?


「ふふ。次は肩叩きをしますよ。トン、トン、トン、トン」


 あぁ~。肩たたきもちょうどいい……ちから加げんですよぉ~。わたしがもとめていたのはこういうことなのかも~。


 しばらく、わたしはハルに肩もみと肩たたきをして貰った……。


「お嬢様。ご満足いただけましたでしょうか?」


「ひゃい……もう大満足ですよぉ~。家の片付けも頑張れる気がしますぅ~」


「ふふっ。お嬢様、顔が緩んでらっしゃいますよ」


 おっと、いけない、いけない。わたしは両手で顔を抑える。


 その後も、ケーキと紅茶を食べながら、ハルとお話した。でも楽しい時間は早く過ぎていくものです……。


「今日も楽しかったです」


「私もです。またのご来店お待ちしております」


 店を出たわたしは、ハルに肩もみをされた時のことを思い出す。へへへ、気持ち良かったな~。上機嫌なわたしは、寄り道することなく家へと帰った……。


「あっ! 買い物するの忘れてた!」

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