46話 夏休みの宿題。そして流しそうめんを全力で楽しむ先輩
今日は遥先輩と夏休みの宿題を一緒にする日です。
遥先輩からは、前日に9時頃にお邪魔すると連絡が来ていました。その時に何か持って来るそうなんですが一体何なんでしょう?
「もうそろそろ9時か……」
わたしは、リビングのソファーでのんびりと遥先輩が来るのを待っている。
すると、家のチャイムが鳴った。
「はいは~い」
玄関に向かいドアを開ける。
「遥先輩、待っていまし……あの、遥先輩。その手に持っている大きな袋は?」
玄関を開けたわたしが見たのは、片手には勉強道具が入っていると思われる鞄。そして、もう片方の手には良く持って来れましたねと言いたくなる程に大きな袋を持っている遥先輩でした。
何か持って来るとは聞いていたけど。大き過ぎでは?
「これですか? 去年、奏が買って一回使っただけで物置に放置されていた物です」
「はぁ、それで何なんですか? それ」
「内緒です。後で教えてあげますから、ね」
気になるけど、後で教えてくれるのなら良いか。
「あっ、すいません。重たい物を持って、暑い玄関で立ち話なんて。中で少し休んでから宿題しましょうか。どうぞ入って下さい。荷物持ちますよ」
「では、これをお願いします。お邪魔します」
遥先輩から大きい袋では無い方を受け取り。2人でリビングに移動する。
「麦茶持ってきますので座って待っていて下さい」
わたしはキッチンへと麦茶を取りに行く。
あっ、遥先輩汗かいていたしタオルも持って行った方が良いかも。
わたしは、麦茶とタオルを持って遥先輩の待つリビングへと戻った。
「遥先輩、麦茶です。それとこのタオルで汗を拭いて下さい」
「ありがとうございます」
タオルを受け取った遥先輩は汗を拭き始める。
「遥先輩の隣、失礼しますね」
わたしは遥先輩の隣に座り、麦茶を一口飲んだ。
「ふぅ……」
ふと、汗を拭いている遥先輩を何気なく見る。
うっすらと光る汗を拭いている遥先輩を見てわたしは……な、なんと言うか……とても綺麗だと思った……。
まだ暑いからか、うっすらと火照ったように赤くなっている顔。そして遥先輩の着ている白を基調とした清楚感のあるワンピースからチラリと見えるうなじ。汗で濡れたワンピースが肌に張り付いていて、清楚感があるのにとても色っぽく見えた。
はっ!? わ、わたしは一体、な、何を考えているんだ! 遥先輩のことをそんな風に見るなんて……。で、でも、絵になるって言えば良いのかな? すごく綺麗で……。
「瑠璃華さん、私の事をじっと見てどうかしましたか? それに顔が赤いですけど? もしかして、体調が悪いんですか?」
「はぇ!? い、いや。へ、部屋が暑いな~って、遥先輩もまだ顔が少し赤いですしエアコンの温度を下げましょう!」
「そうですか……確かに少し暑いと思っていたんですよ。お願いできますか」
「は、はい! 少し待っていて下さい。リ、リモコン何処だったかな~」
エアコンの温度を下げ。ようやく本題の宿題に取り掛かる事にする。
わたしと遥先輩はソファーから降りて、絨毯の敷かれた床に隣り合って座り、ローテーブルに宿題や筆記用具を並べる。
「さてと、始めましょうか。瑠璃華さんは今日までに宿題を少しでも進めていましたか?」
「はい。でもわからない所があって進みが悪くて……」
「そうなんですね。では、瑠璃華さんのわからない所を教えますよ。何処が、わからないんですか?」
「助かります。わからないのはここ何ですけど……」
その後、遥先輩にわからない所を教えて貰いながら宿題を進める。テスト勉強の時も思ったけど、遥先輩の教え方はとても丁寧でわかり易い。
それに遥先輩はわたしに教えながら、宿題を順調に進めています。最初はわたしに教えながらでは遥先輩の宿題が進まないんじゃないかと心配したけど、問題なかったみたいです。
その後も順調に宿題を進めていると……。
「瑠璃華さん、もう12時ですよ。お昼にしませんか?」
「そうですね。お昼は遥先輩が作ってくれるんでしたね」
「はい、今日は冷やしそうめんにしようと思いまして」
遥先輩は立ち上がり大きな袋の中から、そうめんが入った桐の箱とめんつゆの瓶を取り出しテーブルの上に置く。桐の箱に入ったそうめんなんて、お中元で送られて来た時にしか食べた事なんてありません。それにめんつゆの方は見た事の無い高そうな瓶に入っています。
「何だか高そうなそうめんとめんつゆですね。食べるのが楽しみです」
「ふふ、今日はですね瑠璃華さん。これだけでは無いんですよ……」
「それってどういう……あっ! その大きな袋ですか?」
「そうです。冷やしそうめんと言いましたが、正確には流しそうめんです」
遥先輩は大きな袋から、これまた大きな箱を取り出してわたしに楽しそうに見せてくる。
あれ? この流しそうめん機、去年の夏頃に多くの動画配信者が動画を出していた、巨大流しそうめん機ですね。まさか、本物を見れるとは。
「この流しそうめん機。動画で見た事があります」
「瑠璃華さん、これを知っていたんですか……驚くかと思ったんですが……」
「いえ、実物は見たこと無かったので、思った以上に箱が大きくて驚いていますよ。これ、奏ちゃんが買ったって言ってましたよね?」
「そうです。去年、奏が動画を見て面白そうだからと買ってきて、友達の凜々花さんと玲奈さんと一緒に一回だけ使って、その後は物置に置いてあったんです。あっ、ちゃんと綺麗に洗っているので大丈夫ですよ」
「そうなんですね。凜々花さんと玲奈さんと一緒に……」
去年の凜々花さんのゲーム配信の時に友達が話題になっている流しそうめん機を買ってきて一緒にやったと言っていたけど、奏ちゃんの事だったのか。
「瑠璃華さん、早く組み立てて流しそうめんをしましょう」
「そうですね。テーブルの上を片付けましょうか」
テーブルの上を片付け。箱を開けてパーツなどを取り出したんですが……パーツが大きくて数が多い……これ、テーブルに収まるのかな? それに動画では2、30分ぐらい掛かっていた気がするけど……そうめんを食べられるのはいつになるんだろう……。
そう思いながら遥先輩の方を見ると、説明書を見ながら楽しそうに組み立て始めている。それを見てわたしも組み立てるのを手伝う。
組み立て始めて30分程経ち……。
「で、出来ました……思っていたよりも大きいですね。瑠璃華さん」
「はい……テーブルに収まるか心配しましたが大丈夫でしたね」
苦戦しながらも何とか組み立てることが出来ました。
わたしは組み立てた流しそうめん機を見る。やっぱり大きい……まるでウォータースライダーです。確かにこれで流しそうめんをしたら楽しそう……。
でも食べ終わった後、これを片付けないといけないんですよね……いや、今は考えないことにしよう……。
「それじゃあ私、そうめんを茹でてきますね」
遥先輩はそうめんの入った桐の箱を持ってキッチンへと向かった。
その間にわたしは、めんつゆを入れる容器や箸を準備する。
「瑠璃華さん出来ましたよ。そうめんは茹で時間が短くて良いですね」
遥先輩がそうめんの入った容器を持ってリビングに戻って来た。
「わたしが流すので瑠璃華さんは食べて下さい」
「わかりました。遥先輩が食べる時はわたしが流しますね」
遥先輩は流しそうめん機にそうめんを流し始める。
わたしは、勢い良く流れて来るそうめんを掴んで食べる。
「瑠璃華さん美味しいですか?」
「美味しいです。そうめんもこのめんつゆも」
「そうですか、良かった。まだまだ沢山有りますから、どんどん食べて下さいね」
その後も遥先輩がそうめんを流してきて、わたしが食べていたんですけど……。
「あ、あの、遥先輩……そろそろ交代しませんか?」
「私のことは気にせずに食べて下さい」
そう言いながら遥先輩はそうめんを流して来る。も、もうそろそろ限界なんですけど……。
わたしが食べると直ぐに遥先輩はそうめんを流してきます。まるで、わんこそばの様に……終いには「はいっ、どんどん」っと掛け声までやり始めて完全にわんこそばになっていました……。
も、もう無理、限界……。
「うぅ……わ、わたし、もう限界です……」
手で口を押さえたわたしは遥先輩に訴える。
「だ、大丈夫ですか瑠璃華さん。す、すいません……つい楽しくなってしまって……」
「少し休めば大丈夫ですよ。後でわたしがそうめんを流しますから……うぅ……」
「瑠璃華さんは横になって大人しくしてて下さい。私そのまま食べるので」
遥先輩は容器に入ったそうめんを食べ始める。結局、遥先輩は流れて来るそうめんを食べることは無かった。
その後、食べ終わった遥先輩は1人で片付け始める。わたしが手伝うと言っても休んでて下さいと言われ、遥先輩が全部片付けてしまいました。
「すいません。遥先輩に全部押し付けてしまって……」
「良いんですよ。私が調子に乗って瑠璃華さんに無理に食べさせてしまった事が原因ですから。私の膝枕で好きなだけ休んで下さい」
「そうですか? それじゃあ失礼します」
わたしは遥先輩の膝に頭を乗せる。やっぱり、遥先輩の膝枕は安心します。
「宿題はまた後日にして、今日はゆっくりしましょう」
その後、宿題をすることは無く。遥先輩の膝枕を堪能しました。
そして後日、宿題の殆どを終わらせるのであった……。




