44話 夏休みの計画を立てよう
あれから2日が経ち。遥先輩とお昼休みを過ごす日になりました。
この日までにわたしは夏休みのバイトのシフトなどを確認してきました。これで夏休み計画が立てられます。ですが、遥先輩の予定に合うか心配です……。
お昼休みになり校舎裏にやって来ましたが、まだ遥先輩は来ていないみたいです。わたしは、前回遥先輩とお弁当を食べたベンチで座って待つことにしました。
しばらく待っていると遥先輩がランチバッグと水筒を持ってやって来ました。
「瑠璃華さん遅れてすいません。お腹空いてますよね」
わたしの隣に座った遥先輩は、ランチバッグからお弁当を取り出し、わたしに手渡して来る。
「ありがとうございます。今日はどんなお弁当か楽しみ~」
わたしは遥先輩から受け取ったお弁当箱の蓋を開ける。
「お~。今日のお弁当も美味しそう。それじゃ、いただきます」
前回は喋ることなく黙々と食べていましたが、今回は夏休みの計画をしないといけないから気を付けないと。それにしても、遥先輩の作ったお弁当は美味しいな~。特にこのデミグラスハンバーグ、お弁当用に小さめに作ってあって食べやすいしとっても美味しいけれど、遥先輩の視線をすごく感じます……。
わたしはチラリと遥先輩に視線を向けると、満足そうな笑みでわたしを見ていました。その後、遥先輩もお弁当を取り出し食べ始める。
「瑠璃華さん、美味しいですか?」
「はい! 特にこのハンバーグがとっても」
「そのハンバーグは昨日の内に用意した自信作です。気に入って貰えて良かった。あっ、瑠璃華さん。口の周りにソースが……」
遥先輩はポケットティッシュ取り出すと、わたしの口周りを拭こうとして来る。
ここは少ないですけど人目がある校舎裏ですよ!? ふ、2人きりの時なら、良いですけど……。ここではダメですよ……。
「あっ、いや、自分で拭きますから。校舎裏とはいえ人目がありますから……ね」
「大丈夫です。校舎裏に来ている生徒は読書や昼寝など、自分の世界に入っている方ばかりですから誰も気にしませんよ。ほら瑠璃華さん。私の方を向いて下さい」
遥先輩はわたしの頬に優しく触れ、遥先輩の方へと顔を向けさせ、ティッシュでわたしの口周りを拭き始める。
だ、誰かが見ているかも知れないのに……。
「はい、綺麗になりましたよ」
「あ、ありがとうございます……」
わたしは誰かが見ていないかと心配で辺りを見渡す。良かった~誰も見ていないみたい。
「瑠璃華さん、どうかしましたか?」
「えっ! あっ、その……誰かが見てるんじゃないかと、気になって……」
「ああ、それで……瑠璃華さんは心配性ですね。他の方達から見たら少し仲が良いとしか思われないですよ」
「そ、そうなんでしょうか?」
「そうですよ。瑠璃華さんは少し気にしすぎです。それよりも、夏休みの計画ですよ。瑠璃華さんと行きたい所がありまして。食べながらお話ししましょう」
「わかりました。わたしの予定はですね……」
わたしは、遥先輩にバイト休みの日を教える。
「そうですか。8月には一週間ほどバイトが休みなんですね」
「はい。毎年店長さん達はその時期に旅行に行くらしいんですよ」
「後は土日のいずれかはお休みなのは変わらないみたいですね」
「そうなんですが……。遥先輩と休みが合えば良いんですけど……」
わたしの心配を他所に遥先輩は……。
「心配しなくても大丈夫ですよ。私が瑠璃華さんの休みの日に合わせますから」
「良いんですか? 遥先輩にも用事とかあるんじゃないですか?」
「問題ありません。瑠璃華さんは気にしなくて良いんですよ。先ずはそうですね……夏休みの宿題は今までどうしていたんですか?」
夏休みの宿題か~。中学最初の夏休みまでは宿題を後回しにしていたけど。夏休みが終わる頃に大変な思いをしてからは7月中に殆ど終わらせる様にしています。
「宿題は早く終わらせる様にしていますね。宿題を後回しにして大変な思いをしたので」
「ふふ、そうなんですね。では、一緒に宿題しませんか? わからない所があれば教えられますし」
「いいですね。じゃあ場所はわたしの家でどうですか?」
「瑠璃華さんの家ですか、良いですよ。瑠璃華さんの家は落ち着きますからね」
一緒に宿題をする日程を決めたけど、遥先輩に言わないといけない事があります。
「あっ、遥先輩。実は奏ちゃんの誕生日なんですけど……」
「奏の誕生日ですか?」
「はい、奏ちゃんにその日、遊びに行こうって誘われてて……」
「ああ、知ってますよ。奏が言ってましたから。私は奏の誕生日のために買い物や準備をしないといけません。ですので、瑠璃華さんは奏と遊んで来て下さい。もし瑠璃華さんが良ければ一緒に家で誕生会をしましょう」
わたしは奏ちゃんと遊んだ後、お家にお邪魔して誕生日を祝うのは良いんだけど。遥先輩と奏ちゃんのご両親が居るのでは? 迷惑にならないか心配です。
「わたしは良いですけど、家族で祝うんですよね? わたしが居ても良いんですか?」
「大丈夫です。父も母も今忙しいですし帰りは遅くなるでしょう。奏と2人だけだと寂しいですからね。瑠璃華さんが居てくれると奏も嬉しいと思いますよ。もちろん私も」
「わかりました。わたしも誕生会に参加させて貰います」
わたしがそう言うと、遥先輩は安堵したように微笑んだ。
「良かった。それと実は、瑠璃華さんと行きたい場所がありまして……」
遥先輩がわたしと行きたい場所って何処だろう?
「行きたい所ですか? 何処に行きたいんですか?」
「実は二つ有りまして、一つ目は8月最初の日曜日に母の会社のPRイベントが開催されるのですが、それに一緒に行きたくて」
PRイベントって確か前に何度か聞きました。遥先輩も話題に出していましたし。奏ちゃんからもPRイベントに出てくれるVtubarを凜々花さんの伝手を使って探したと聞きました。
PRイベントは話題に出ることが多かったので少し気になっていました。
「良いですよ。わたしも遥先輩と奏ちゃんの話を聞いて気になっていたんですよ」
「それは良かった。イベントに出演するVtubarは、最近勢いのある方達らしく。瑠璃華さんが好きかと思いまして、事前に母に相談してみたら2人分用意してくれたんですよ」
人気のVtubarが出るイベントなんてかなりの競争率だと思うんですが。簡単に2人分も用意出来るのはイベントを主催しているからだろうけど。遥先輩の母親は娘のお願いには弱いみたいですね。奏ちゃんも凜々花さんのためにゲームイベントのチケットを頼んだら用意してくれたそうですし。
そういえばイベントに出演する最近勢いのあるVtubarって誰でしょう? 凜々花さんの伝手を使ったのだから、コラボしたVtubarなのは確かですが。気になる……。
「それで、イベントに参加するVtubarって誰なんですか?」
「えっと、確か……白百合エリと黒百合リンと言う方達だったと思います」
白百合エリ、黒百合リン……確かに凜々花さんとコラボしてゲームをやっていました。チャンネル名は確か……『エリ☆リンチャンネル』だったっけ?
何度か配信を観たことがあります。配信を観た感想としては2人の掛け合いの面白さとまるで恋人と言える程の仲の良さでしたね……。う~ん……思い出してみたらなんと言うか……誰かに似ているんだよな~。配信を観たのが結構前だからか思い出せそうで思い出せない……何か一つでも良いから切っ掛けがあれば思い出せる様な気がする……。
わたしが誰だったかな~っと、思い出そうとしていると。
「瑠璃華さんどうかしましたか?」
「えっ、いや、気にしないで下さい。少し考え事をしていて……。それで遥先輩、もう一つの行きたい場所って何処ですか?」
「ああ、それはですね。その……うちの別荘にですね、瑠璃華さんと泊まりたくて。瑠璃華さんは1週間ほどバイト休みがあるって言っていましたから、その時にでもと……」
別荘、あるんだ……。遥先輩の両親が大企業の社長なのだから、予想出来たことですけど。一体どんな場所にあるんでしょう?
「別荘ですか……どんな所にあるんですか?」
「そうですね、プライベートビーチがある景色の良い場所ですね。近くに温泉と車で少し行った所には水族館もあるんですよ」
プライベートビーチ……実在していたんですね。漫画とかアニメの世界にしか存在しないと思っていました。
それに近くに温泉や水族館があるなんて……すごく行きたい……。
「わたし別荘に行ってみたいです。温泉と水族館もあるなんて素敵な場所に別荘があるんですね。プライベートビーチも気になります」
「瑠璃華さんが興味を持ってくれて良かった。実は瑠璃華さんと別荘に行くことを提案したのは奏なんですよ」
「奏ちゃんが?」
「はい、瑠璃華さんを別荘に誘ったら絶対に喜んでくれると言ってたので」
「そうなんですか……。それで提案した奏ちゃんも行くんですよね?」
「いいえ。奏は凜々花さんと玲奈さんを家に呼んで泊まりで遊ぶと言っていましたよ。なので私と瑠璃華さんの2人で別荘に泊まることになります」
えっ! 提案した奏ちゃんは来ないの!? 一体奏ちゃんは何を考えているんでしょう? でも、遥先輩と2人で別荘に泊まるのも良いかも。
「遥先輩と2人でお泊り、すごく良いと思います」
「ふふ、喜んでくれたみたいで何よりです。ちなみに2泊3日で別荘に泊まろうかと考えています。沢山、瑠璃華さんと一緒に遊んだり、甘やかしてあげたいですからね」
遥先輩は楽しそうにそう話す。
今年の夏休みは色々と楽しみなことが沢山あります。遥先輩と出かけたり泊まりに行ったり良い夏休みになりそう。
「今年はとてもいい夏休みになりそうです、遥先輩」
「ええ、私もそう思っていますよ。ですが瑠璃華さん、一つ大事なことを忘れていますよ」
大事なこと? なんだっけ?
「えーっと……大事なこと、ですか?」
「瑠璃華さんの誕生日ですよ。まさか、瑠璃華さん本人が忘れているとは思いませんでしたよ」
そうだった……8月20日はわたしの誕生日でした。なんで忘れていたんでしょう?
「すっかり忘れていました……」
「もう瑠璃華さん、大事なことですよ。その日は瑠璃華さんの家でお祝いしたいのですが良いでしょうか?」
「大丈夫ですよ。遥先輩がなにをしてくれるのかとても楽しみです」
「ふふ、楽しみにしてて下さいね。瑠璃華さんに満足して貰えるように頑張ります」
その後、お弁当を食べ終わり。遥先輩とベンチでゆったりと過ごしました。
遥先輩との夏休みが今からとても楽しみですが、来週は期末テストです。楽しい夏休みを過ごすためにも、頑張らないと!




