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43話 難しく考えている問題ほど、簡単に解決するみたいです

 あれから2週間以上が経ち、期末テストを来週に控えた7月。


 わたしと遥先輩はお昼休み。校舎裏のベンチに腰掛けお昼を食べようとしているところです。


「瑠璃華さん。約束通りお弁当を用意して来ました」


 遥先輩は大きめのランチバッグからお弁当箱を1つ取り出して、わたしに見せる。


「本当ですか! 遥先輩の作ったお弁当楽しみにしてたんです」


「ふふ……瑠璃華さんの期待に応えられていると良いのですが。はい、どうぞ」


 わたしは手渡されたお弁当箱を受け取る。受け取ったお弁当箱は花柄のシンプルな見た目。


 少し気になったことと言えば、そのお弁当箱は傷や使い古した感じは一切有りませんでした。もしかして、わたしのために新しく買ったのかな? そこまで気を遣わなくて良いのに。


 そう思ったわたしですが、そんな些細な疑問や気持ちよりも、わたしのために遥先輩が作ってくれたお弁当を早く食べたいと言う気持ちが勝っていました。


「遥先輩ありがとうございます。それじゃあ早速、開けても良いですか?」


「良いですよ。ふふ、そんなに急がなくても私のお弁当は逃げませんよ」


 そう言いながら優しく微笑む遥先輩に見守られながら、わたしはお弁当の蓋を開ける。


 蓋を開ければ、見た目にも拘っていることがひと目でわかるほどに綺麗に配置されたおかずでした。


 そのおかずも定番の玉子焼きやわたしの健康のことを考えたのか色々な種類の野菜を使った野菜炒め。そして特にわたしの目を引いているのが、遥先輩の作ったお弁当の中をまるで泳いでいるかの様にすら感じる2匹のタコさんウインナー。よく見るとゴマで目も作ってあります。


 遥先輩のやる気がひと目でわかる程のお弁当です。食べるのが勿体ないと思ってしまいました。


「す、凄く綺麗なお弁当……。食べるのが勿体ないって思ちゃいました」


「ふふ、そう言って貰えて嬉しいです。時間も限られていますから頂きましょう」


「そうですね。それじゃあ、いただきます」


 食べ始めたわたしを見て、遥先輩もランチバッグからもう1つのお弁当を取り出し食べ始める。当たり前だけど、わたしと同じお弁当です。遥先輩とベンチに隣り合って座り、同じお弁当を食べる。そんな日が思っていたよりも早く来たことにわたしは心踊らせながら、お弁当を食べ進める。


 お、美味しい~。流石に遥先輩です。迷惑で無ければ遥先輩と一緒にお昼を食べる時は、作って貰いたいくらいです。


 黙々とお弁当を食べていたわたしですが……。


 はっ! そういえばわたし、食べ始めてから1度も遥先輩と話をしてない。ちゃんと美味しいって言わなきゃ。わたしは食べる手を止め、恐る恐る遥先輩の方を向くと……とても嬉しそうな表情の遥先輩がわたしを見ていた。


 い、一体何時から……。


「は、遥先輩。何でわたしを見ているんですか?」


「ええっと……瑠璃華さんにお弁当の感想を聞こうと思ったのですが。美味しそうに黙々と私のお弁当を食べていたので、つい。それにしても食べている時の瑠璃華さんはまるでリスみたいでとっても可愛かったですよ。ふふ……」


「なっ……」


 完全に見られてた……し、しかも、わたしがリスみたいで、か、可愛いなんて……。うぅ……は、恥ずかしい。なんか顔が熱くなってきた。と、とりあえず遥先輩がお弁当の感想を聞きたがってるから伝えないと。


「あ、あの、えっと……遥先輩の作ったお弁当。とっても美味しいです……」


 わたしのその言葉を聞いた遥先輩の表情がさらに明るくなった。


「美味しい、ですか。瑠璃華さんが美味しそうに私の作ったお弁当を黙々と食べていたので気に入ってくれたのだと安心していましたが。やはり直接、瑠璃華さんの口から美味しいと言われた方が嬉しいですね。ふふ、頑張って作った甲斐がありました」


 とても嬉しそうに話す遥先輩を見て。食べているところを見られたことは恥ずかしいけど、遥先輩が喜んでいるみたいだし気にしない様にしよう。


 それにしても、今日は初めて遥先輩と2人でお昼休みを過ごしていますけど。まさか、二週間ほどで解決するとは思いませんでした。


「わたし、こんなに早く遥先輩と2人でお昼休みを過ごせるなんて思いませんでしたよ」


「ええ、私も問題が早く解決して良かったと思っています。奏と協力してくれたお2人には感謝しないといけませんね」


 この二週間、わたし達は奏ちゃんの作戦通りに事を進めていました。最初は多くの生徒の視線を浴びていました。けれども次第にそれも減っていき今日のこの日を迎えた訳ですが、本当に奏ちゃんの言う通りになりました。わたしと遥先輩は難しく考え過ぎていたようです。


 ちなみに恵梨香と凛子にも説明したんですが、恵梨香は生徒会長である遥先輩について興味が有ったようで色々と質問されてしまいました。横にいた凛子は恵梨香の顔を見ながら少し不機嫌そうな空気を纏っていましたが……最近、確信を持ったのですがどうやら凛子は少し嫉妬深い性格の様です。まぁ、その後、直ぐに恵梨香が察して「色々と注目されている生徒会長に少し興味が有っただけだよ。私にとって一番大切なのは凛子だよ~」と言いながら凛子に抱きついていましたね。本当に仲が良くて感心します。


 今後は遥先輩とお昼休みを毎日過ごすのかと言われれば、そうではありません。遥先輩にもお昼休みにやる事が有るみたいで、週に二回程度の頻度でお昼休みを過ごす予定です。わたしも今まで通り恵梨香と凛子とも過ごしたいですから丁度良いと思います。


 気付けばお弁当が空になっていました。本当に美味しかった……これなら、もう一つくらい食べれそう……まぁ、体重を気にしなければだけど。


「ご馳走様でした。遥先輩、とっても美味しかったです」


「ふふ、瑠璃華さんに美味しいって何度も言われると嬉しいですが少し照れてしまいますね。あっ、お茶をどうぞ」


「ありがとうございます」


 遥先輩からお茶の入ったコップを受け取り一息つく。はぁ~今日は天気も良いし気持ちが良い。


 それにしても校舎裏って、ジメジメしてると言うか日の光があまり当たらない暗い感じの場所ってイメージだったけど。この学園の校舎裏は掃除や木々の手入れが行き届いているし日の光も程よく入り、風通しも良いからとっても過ごしやすい。奏ちゃんが2人でお昼休みを過ごすなら校舎裏がおすすめだと勧めてくれた理由が今なら良く分かります。


「遥先輩。この学園の校舎裏って、とっても過ごしやすいですね。奏ちゃんに教えて貰うまで知りませんでした」


「ここは意外に知られていない場所ですからね。そのため、読書や昼寝などをする生徒が多くいるんです」


「へぇ~そうなんですね。確かに昼寝をするには良い場所かも……」


 辺りを見渡すと木陰やベンチで読書をしている生徒や、あれは……ハンモック、だよね? 他にも寝袋やアウトドア用のリクライニングチェアなど様々な方法で眠っている生徒達がいます。どの生徒も気持ちよさそうです。一体何処からあれらの物を持ってきてるんだろ? もしかしてあの人達はアウトドア部とか? でもそんな部活あったかな?


「あの、遥先輩。ハンモックや寝袋で眠っている人が居るんですけど。アウトドア関係の部活をしているんでしょうか?」


「いいえ、アウトドア部はあるのですが彼女達は違います。あのハンモックや寝袋などは全部彼女達の私物です」


 あれって私物なんだ……。わざわざ昼寝のために学園にハンモックや寝袋を持ってくるなんて驚きです。


「えっ、あれってあの人たちの物なんですか? でも持ってきて良いんですか?」


「私も関係の無い物を学園に持って来るのは良くないと注意したのですが。その後すぐに生徒会へ昼寝に使用する物品の持ち込みを許可して欲しいと申請がありまして……わざわざ昼寝後の学習効果などを研究機関の研究結果を調べて申請書と一緒に持って来て熱弁されました。いつもとは雰囲気が違っていて、私も少し恐怖を感じましたよ」


「そんなことがあったんですね。それで申請してきた人ってどんな人なんですか?」


「ああ、その子ならあそこで眠っていますよ」


 遥先輩の指さす方を見ると、ハンモックにゆらゆらと揺られながら眠っている人が居ます。


「あの人が?」


「ええ、私のクラスメイトです。普段は明るくて面白い子なんですけど。あの時は、あの子の熱意と気迫に押されて……許可してしまいました」


 苦笑いしながら遥先輩はそう言いました。生徒会長も色々大変なんだな……。


 そう思いながらスマホを取り出し時間を確認すると、そろそろお昼休みも終わりですね。


「遥先輩、そろそろ教室に戻った方が良いかも知れません」


「もうそんな時間ですか。それじゃあ、戻る準備をしましょう」


 わたしは、遥先輩に空になったお弁当箱を渡し教室に戻る準備をする。


「瑠璃華さん、提案なのですが。今後もお昼を一緒に食べる日は私にお弁当を用意させてくれませんか?」


「えっ、わたしは遥先輩のお弁当を食べれて嬉しいですけど。良いんですか?」


「もちろんです! 私から提案したことです。もしかして瑠璃華さん、私がお弁当を作るのが大変そうだからって気にしてたり遠慮してるのですか? 大丈夫です。瑠璃華さんとお昼を一緒にするのは週に二回だけですので問題ありません。前にも言いましたが遠慮しないで良いんですから」


 わたしから受け取った空のお弁当箱をランチバッグにしまいながらそう答える。


「そうですね。それじゃあ遠慮なく、遥先輩お願いします」


「はい。これからも私のお弁当、楽しみにしてて下さいね」


 その後、校舎裏から教室へと戻っている途中で遥先輩が話しかけて来た。


「あ、あの、瑠璃華さん」


「は、はい。遥先輩、何ですか?」


「えっと、ですね……。急に聞かれても困ると思いますので先に話しておきたいのですが。来週の期末テストが終われば、な、夏休みです……ですので、瑠璃華さんが宜しければですけど、私と夏休みも一緒にいる時間を頂けたらと、思いまして……はい……」


 俯きながら緊張した面持ちでそう話した遥先輩。要はわたしと一緒に何処かに行って遊びたいと言うことみたい。わたしも遥先輩と夏休み遊びたいですし、もちろん返事は……。


「良いですよ。それで遥先輩はわたしと行きたい所があるんですか?」


「そうですね。幾つか候補はあるのですが瑠璃華さんの予定もありますから。次に一緒にお昼休みを過ごす時にでも夏休みの計画を立てようかと思っていまして」


「わかりました。次までに予定を確認をしておきます」


「よろしくお願いします。それじゃあ瑠璃華さん、私は教室に戻ります」


 そう言い遥先輩は教室へと戻って行きました。


 夏休みの予定か~。そう言えば8月の中頃にバイト先の店長夫婦が旅行に行くから一週間お店が休みって言っていましたね。それ以外だと平日は殆どバイトでしょうけど、土日のどちらかは休みですし。結構、遥先輩と過ごせる時間はあるかも知れません。


 今年の夏休みはとっても楽しくて有意義な時間になるかも知れませんね。遥先輩の行きたい所も気になりますし楽しみだな~。

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