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42話 奏の友達と作戦

 春町家に遊びに行った日から数日後。


 わたしは奏ちゃんの友達を紹介して貰うために放課後、図書室の前までやって来ました。


 図書室の扉を開け中に入ると奏ちゃんの他に2人の生徒がいます。あの子達が奏ちゃんの友達のようです。あれ? その内の1人は……何処かで見たことがあるような……。


「あっ! 来たね、瑠璃華ちゃん。待ってたよ~」


「うん。それでこの2人が奏ちゃんの友達?」


「そうだよ~。ほらほら、2人とも瑠璃華ちゃんに挨拶して~」


「は~い。わたしの名前は赤月(あかつき)玲奈(れいな)っていいまぁす。瑠璃華ちゃんはわたしのことを見たことあると思うんだけど、覚えてますかぁ?」


 玲奈ちゃんは栗色のショートボブヘアーのおっとりとした笑顔の素敵な子です。その玲奈ちゃんが言うには、わたしは玲奈ちゃんのことを何処かで見たことがあるそうです。確かに玲奈ちゃんのことを何処かで見たような気がするなぁ~って思ったけど……何処でだっけ?


 う~ん……栗色のショートボブヘアーのおっとりとしている……そして奏ちゃんの友達……思い当たるのは……。


「あの~もしかして、妹喫茶で働いていた?」


「うんうん、そうだよ~お店ではレナって名前だよ~。奏に誘われてね~面白そうだったから働いてるんだ~。これからよろしく~瑠璃華さん」


「うん、よろしく。玲奈さん」


「ほら、次は凜々花だよ」


 凜々花と呼ばれた子は、すごく眠たそうに眼を擦りながら話始める。


「ん~、私は夏樹(なつき)凜々花(りりか)。趣味はゲーム……よろしく……」


 今にも眠ってしまいそうな凜々花さん。寝不足なんでしょうか? それに凜々花さんの声……わたしの好きなゲーム配信者に似ているような?


「あの、凜々花さん。大丈夫ですか?」


「ん、大丈夫。いつものことだから気にしないで……家に帰ったら少しだけ仮眠もするし……ふぁあぁ~」


「あはは! ごめんね~凜々花が眠そうなのは徹夜でゲームしているからなんだよ」


「そうなんだ。凜々花さん、初対面のわたしが言うのもなんだけど……やり過ぎない方が良いんじゃないかな?」


「でも、ゲームをやってると私も楽しいし、視聴者も楽しんでるから……」


 あれ? 今、視聴者って言った?


「凜々花、瑠璃華ちゃんにあの事、言っていいの?」


「ん、良いよ。奏と奏のお姉さんも瑠璃華さんのことを信頼してるんでしょ? そうじゃなきゃ、私達を紹介しないでしょ」


「奏ちゃん。あの事って?」


「それはね。凜々花はゲーム配信者なんだ~結構人気のね。確か今は……登録者数が50万だっけ? それとも60万だったっけ?」


「ん~、確か……もう少しで60万行きそうだったかな? あんまり気にしないから」


「えぇぇ!? 本当に!?」


 まさか、凜々花さんがゲーム配信者だったなんて思わなかった。なるほど、実況動画の収録や配信で徹夜してるから寝不足なんだ。あれ? ということは……凜々花さんがわたしの好きで観ているゲーム配信者に声が似ていると思っていたけど、もしかして……。


「ん、私は『Lili』って名前でやってるんだけど。知ってるかな?」


 Lili……ゲームのジャンルを問わずプレイし、RTAやネタ実況などの動画や配信をしていたりVtubarともコラボしたりしている人気配信者です。わたしもチャンネル登録している人の1人です。まさか、本人に会えるなんて! 夢じゃないよね?


「わ、わたし、実況動画と配信観てます! 特に『暗殺者』のネタ暗殺動画の豆腐でターゲットを暗殺する回が大好きです!」


「瑠璃華さん、視聴者さんだったんだ嬉しいよ。私も瑠璃華さんの言っていた、豆腐で暗殺する回は私も結構気に入ってるんだ。だって、コックに変装して、味見をしに来たターゲットに事前に冷凍しておいた豆腐をターゲットの頭に投げつけて暗殺したら、その豆腐が近くの味噌汁の鍋に入って証拠隠滅したことになるんだから可笑しいよね。海外の会社のゲームなのにさ」


 凜々花さんは、ケラケラと笑いながら話している。あぁ……やっぱりこれは、夢じゃないんだと実感する……。


「なんだ瑠璃華ちゃんファンだったんだね。ちなみに玲奈も凜々花の動画や配信に時々出てるけど。ファンの瑠璃華ちゃんならわかるよね?」


 Liliの動画や配信にはレナと言う人が時々出てくる。レナはLiliに負けず劣らずゲームが上手く、レナとLiliの掛け合いは視聴者の間でも人気があった。だけど最近は動画や配信に現れず、ケンカ別れでもしたんじゃないかと心配の声が上がっていました。


「もしかして、レナって玲奈さんなんですか! 最近は動画にも配信にも出てなかったのでどうしたんだろうって思ってたんですよ」


「瑠璃華さんは私のことも知っててくれたんですね~。最近はバイトとかで忙しくてぇ~それに凜々花のお世話をするので余裕がないんですよ~」


「ああ、それで最近は出てなかったんですね。ところでお世話をする、ですか? もしかして2人は一緒に住んでいたりするんですか?」


「そうだよ~私と凜々花は防音室付の部屋を借りて一緒に住んでるの。最初は凜々花一人で住むって言ってたんだけど。私も凜々花の両親もだらしない凜々花が1人暮らしなんて出来る訳が無いって反対したんだけどね~。凜々花が聞かなくて、仕方なく私が凜々花の両親に私も一緒に住むので認めて欲しいって頼んで許して貰ったの~」


「いや~玲奈には感謝しかないよ~。持つべきものは幼馴染だね! 玲奈のお陰で私は心置きなくゲームが出来るよ~あはは!」


 配信業に力を入れるためにかと思いましたが、ただ親を気にせずにゲームをやりたいだけみたいです。


「はぁ……もう少し自分のことは自分でしてくれると嬉しいんだけどな~。もし私が居なくなったらどうするの~?」


「ん~? そんなの玲奈にずっと面倒見て貰うよ。もし玲奈が結婚しても私ついてっちゃうかもね~」


「凜々花なら本当にやりそうで困っちゃうわ……」


 玲奈さんは呆れた表情をしている。玲奈さんも大変だなぁ……。


「じゃあ、そろそろ本題に入ろうか」


「そうだった……それで奏ちゃん。具体的にはどうすれば良いの?」


「そうだね~。簡単に説明すると最初は私と一緒にいるところを周りに見せて、私と仲が良い事を認識させる、かな。その後はお姉ちゃんと3人で居る所を見せて。最終的には私が抜けて瑠璃華ちゃんとお姉ちゃんの2人で頑張って貰う感じかな」


「本当にそれだけでいいの?」


「たぶん、大丈夫だと思うよ。さっきも言ったけど、まずは同学年の私と仲が良いって周りに認識さえして貰えれば良いんだよ。私は学園では目立たないようにしているけど、私の両親とお姉ちゃんの関係で少なからず注目されてるからね。もし誰かに出会った切っ掛けを聞かれても、私がお姉ちゃんを瑠璃華ちゃんに紹介したってことにすれば違和感ないでしょ。みんなが納得する理由さえあれば、案外受け入れられるものだよ」


「確かにそうかも……」


「逆にこそこそと会っているところを見られた方が、詮索されたりして面倒なことになったりするよ。有ること無いこと噂されたりするかも知れないし」


「まぁ……わたしもそう思ったよ……けど、ね……」


 奏ちゃんに言われたように誰かに見られて変な噂を流される可能性は考えて、今後のことを遥先輩とも話していました。まぁ結局、どうするか思いつかなかったけど……。


「大丈夫、大丈夫、ちゃんと何とかするから。安心したまえ!」


「うん。ありがとう、奏ちゃん」


 奏ちゃんのお陰でこの問題が解決しそうで良かった。


「それで~私と玲奈は何をやればいいの? 話を聞いている限り私達は要らないんじゃない?」


「まぁ、基本的に2人は話を合わせてくれるだけでいいよ」


「ふ~ん、それだけでいいんだ。てっきり、都合の良い噂を流して欲しいとか言われるんじゃないかと思ったんだけど」


「それは、最終手段だよ。下手に噂を流すと勝手に尾ひれがついて収集がつかなくなるかも知れないんだから」


「そっか、そっか。いや~こんな事だけで良いんだね~。奏、成功したら約束通りアレ、用意してくれるんだよね。期待してるよ~」


「わかってるって。用意できる見込みがあるから安心してよ」


 2人の言っているアレって何だろう? わたし達のために奏ちゃんに迷惑をかけているんじゃ……。


「あの~2人が言っているアレって何、かな? わたしと遥先輩のために奏ちゃん無理してない?」


「無理? あはは! そんなこと無いよ。ちょうど凜々花が好きなゲームのイベントがあるからチケットが欲しいって言っててね。用意することを条件に協力を頼んだんだ。ちなみにそのゲームはママの会社が経営しているお店でコラボカフェをやってたことがあるの。だからママに相談してみたら、凜々花には会社のPRイベントに出てくれるVtubarを探してる時に凜々花の人脈には助けられたから絶対に用意してあげるって言ってたから大丈夫!」


「おお~! 本当に用意出来るんだ。良かった~予約しようと頑張ったんだけど、見事にダメだったんだよね~。いや~助かるよ~」


「と、言う訳で瑠璃華ちゃんとお2人さん。明日から作戦開始だよ。張り切っていきましょ~」


 果たして、この作戦は上手く行くんでしょうか? 奏ちゃんは自信があるみたいだし。わたしも自信あり気な奏ちゃんを見て、結構上手くいくかもって思えてきたけど……やっぱり、少し心配かも……。

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