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3話 メイド『ハル』との会話

(わたくし)の名前は『ハル』と申します。お嬢様」


「ハルさんって言うんですね」


「いいえ、お嬢様。私のことはハルとお呼びください」


「えっ。わたしよりお姉さんに見えますけど」


 ハルさんは長い黒髪でメイド服越しからでもわかるスタイルの良さと、物腰が柔らかいといった印象でどう見てもわたしより年上だから呼び捨てはなぁ~。せめて『ちゃん』で妥協してくれないですかね~と思う。


「お嬢様。ここを何処だかお忘れですか? ここではお嬢様とメイドの関係なのですから私達のことは呼び捨てでお願いいたします」


 正直言ってここまでこだわって来るとは、思っても見なかった。なるほど貴族の屋敷っぽいのはそういうことなのか……。やっぱりこのお店こそわたしが求めていたメイド喫茶なんじゃないかと思う。


 これでご奉仕やわたしのことを甘やかしてくれたら最高なんだけどな~。でも、そんなことしたら如何わしいお店になってしまう。悩ましいことですよホント。


「えっと。じゃあ……ハ、ハル」


「はい! お嬢様」


 この時の笑顔のハルはとても眩しくて……マジで可愛かった!


「それでは、ごゆっくりお過ごしください」


 ハルはサービスワゴンを押してバックヤードへ戻っていった。


 あっ! このダージリン香りも良くて落ち着く……。それにスコーンも美味しい、ここで作っているのかな?


 わたしがダージリンとスコーンを楽しんでいると。ハルがバックヤードから出てきて、わたしの所までやってきて話かけてきた。


「お嬢様。私とお話しませんか?」


「え! えっと。ハルさっ……ハルは仕事中じゃないの?」


「そうなのですが。このお店にいらっしゃるお嬢様とご主人様は1日に数人程度でして……。1人で静かに過ごされたい方もいらっしゃいますが、話相手が欲しいという方もおりまして出来るだけご要望には応えることにしております」


 えっ! このお店、タダでメイドさんとお話しできるの! もしかして後で追加料金とか取られないでしょうね……。そんなことを考えていたのがハルにはわかったようで……。


「ふふふ、お嬢様。そうご心配なさらずとも、私達とお話をしても追加料金等は発生いたしませんのでご安心ください。それに私はお嬢様と個人的にお話ししたいと思っていましたので。もしかして、私はお邪魔でしたか?」


 そう言ってハルはしゅんとした表情をした。


 ハル、その表情は反則ですよ! あぁ~~。ハルのしゅんとした表情も整った顔と相まって最高! かわいい! わたしもメイドさんの要望にはできる限り答える性分なんですよ! ふふふ……ハルとのお話……ふへへ。 


「お邪魔なんてとんでもない! わたしはメイドさんが大好きなんでハルとのお話は大歓迎ですよ! えへへ……」


 その言葉を聞いたハルの表情はパッと明るくなる。やっぱり笑顔のハルが1番かわいいな~。お店に来てまだそんなに時間が経っていないにも関わらず、わたしはハルにデレデレである。ちょろいなわたし!


「それでは、お嬢様。お隣失礼いたします」


 なんとハルはわたしの正面の席ではなく隣の席に座った。な、なんで!? まぁ、わたし的にはオールオッケイなんですけど。なんか急にハルが積極的になってない?


「あっ、あの~。なんで隣の席に?」


「このほうがいいと思いまして。嫌でしたか?」


 ハルはまたしゅんとした表情をする。だからその表情は反則だよ! 絶対わかっててやってるよね! どんだけわたしを誘惑するの。わたし勘違いしちゃうよ。


「いやいや。全っ然、嫌じゃないです! 近くでお話しましょう!」


「ふふふ、お嬢様。少し顔が赤いですよ」


 顔が赤くなっていたとしたら、それはハルのせいでだよ。それに去年の夏休み前に行ったのが最後だからメイドに対する耐性が低下している気がするよ~。


「そういえば、お嬢様はよくこのお店を見つけられましたね。私が言うのもなんですが……」


 わたしはハルに今日の出来事を話し始める。


「はい……今日は凛聖女子学園の合格発表がありまして、わたし合格していたんです」


 その話を聞いたハルは驚いた表情をしたがすぐに表情が戻り。


「そうでしたか、おめでとうございます。お嬢様」


「そのあと、合格祝いによく行っていた『bloom』というメイド喫茶に行ったんですが……その、閉店してまして……受験が終わるまでその店に行かないと決めて、去年の夏休み前に行ったのが最後で……閉店していたことがとてもショックで……諦めて繁華街に戻ろうとした時に、何気なくいつもは通らない脇道に入ったら、このお店を見つけて休憩しようと入った訳です」


 わたしが『bloom』という名前を出した時、ハルは少し困ったような表情をしたのを見逃さなかった。何か知っているのかな?


「なるほど、だからお嬢様は来店時に俯いていたのですね」


「はい……」


ハルは、おもむろにわたしの頭に手を伸ばしてきて……。


「よしよし、辛かったですね。お嬢様……」


「なっ、なにしてるんですか!?」


 頭を急に撫でられて驚くわたし、ハルは微笑んでいた。


「お嬢様が悲しそうな顔をしていたのでつい……」


 いまだに頭を撫で続けながらそう言うハルに、わたしはドキドキしっぱなしだ。ハルはどうしてわたしにここまでしてくれるんだろう?


「あの……ハル、なんでわたしにここまでするんですか?」


「それはですね。お嬢様を見ていると……その……ごほうっ、コホン。ほっとけない感じがすると言いますか……」


 わたしって、そんなにほっとけない感じなのかな?


「お嬢様、私にはこのようなことしか出来ませんが少しでも元気になってくれたら幸いです」


「いえいえ、わたしのことを思ってくれて撫でてくれたんですよね。えへへ、とても嬉しいです。わたし、このお店に来れてよかったって思っているんですよ」


「ふふふ、そう思っていただけたのなら幸いです」


 こんなに楽しい時間を過ごせるなんて思っても見なかったよ。そのあともハルとの話はとても楽しかったけど、もう帰らなくちゃいけない……。


 会計を終えたわたしにハルは。


「お嬢様とのお話はとても楽しかったです。またのお越しをお待ちしております」


「はい! わたしも楽しくて時間を忘れるほどでした。絶対また来ます!」


 店を出たわたしは家に帰った後も、嬉しさとドキドキがいっぱいでハルにまた早く会いたいと強く思った。

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