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38話 瑠璃華と春町姉妹

「これからの事って……どういうことなの? 奏」


 困惑した表情で遥先輩は、奏ちゃんに話しかける。


「そんなの決まってるよ。私とお姉ちゃんと瑠璃華ちゃん。3人の願いが叶う幸せな関係だよ。瑠璃華ちゃんとお姉ちゃんが私のお願いを聞いてくれるなら。私は、2人のために色々と協力してあげる」


 それを聞いた遥先輩は更に困惑した表情になりました。


「はぁ……奏。あなたのお願いって、やっぱり瑠璃華さんを自分の姉として甘やかすことでしょ。無理を言っちゃダメよ。それで瑠璃華さんが困っているんでしょ」


「あの……奏ちゃん。友達になるのはとっても嬉しいし良いんだけど……奏ちゃんのお姉さんになるのは、流石に……ね……」


「まぁ、瑠璃華ちゃんとお姉ちゃんにそう言われることは、わかっていたよ。でもね……私の話をちゃんと聞いてからでも遅くはないと思うんだ。座って話そうよ」


 そう言うと奏ちゃんはローテーブルの近くに座りました。


「はぁ……わかったわ。瑠璃華さん、座りましょう」


 わたしと遥先輩も座り。ローテーブルを3人で囲む形になりました。


「それで、奏ちゃんの話って?」


「まず始めに、お姉ちゃんは少し勘違いしてるよ。私は別にお姉ちゃんから瑠璃華ちゃんを奪おうなんて思ってないから。むしろ、瑠璃華ちゃんとお姉ちゃんにはもっと仲良くなって欲しいし。私のことはお姉ちゃんと仲良くしていたら、付いてきたおまけみたいな物だと思ってくれて良いんだよ」


 おまけって……奏ちゃん。自分のことをそんな風に言うのは……。


「奏、自分のことをおまけと言うのは流石にどうかと思う。それに、奏が人の嫌がることをするなんて思ってないわ……からかっては来るけど……」


「あはは! それはかわいい妹の愛情表現だよ。それにおまけで良いんだよ、お姉ちゃん。それでね、2人は学園で他の子に見られないように会っているでしょ」


「まぁ、そうですね。1年生の瑠璃華さんと3年生の私が一緒にいると不自然ですからね。どうやって、私と仲良くなったのか探りを入れる人とかもいると思うし。それで、瑠璃華さんに迷惑が掛かるでしょうから」


 遥先輩はなにかと注目されるので、わたしと遥先輩が会うのは基本的に放課後の生徒会室です。帰る時は周りを気にしながら帰ってます。今のところは、大丈夫ですけど、今後はどうなるかわからないので、どうしようかと遥先輩と考えていたんですよね。


「うんうん、そうだよね。今は、バレずにいるみたいだけど、いつかは見られるだろうから。そ、こ、で! 私の出番と言う訳だよ」


「奏ちゃんの出番? なにをするの?」


「簡単な話ですよ。私と瑠璃華ちゃんが友達になればいい。それだけだよ」


「奏ちゃんと友達になる? それで解決するの?」


「はい! 私と友達なら、別にお姉ちゃんと仲良くしてもそこまで不自然じゃないでしょ。仲良くなった理由は、私がお姉ちゃんを瑠璃華ちゃんに紹介して、仲良くなったって事にすればいいんだからさ」


 確かに奏ちゃんと友達になれば、遥先輩と仲良くしてもあまり詮索されることもないのかも知れません。


「ねぇ……お姉ちゃん、瑠璃華ちゃん。放課後に生徒会室で会うだけで満足なの? 昼食の時間に2人でお弁当とか食べたくない? 私のお願いを聞いてくれるなら、それも叶うんだよ」


 遥先輩と昼食を……すごくいいですね。でも、それを叶えるには、わたしが奏ちゃんのお姉さんになって甘やかされるということ……。遥先輩との約束がありますし、やっぱり……。


「で、でも……奏ちゃん。流石にわたしがお姉さんになるのは……ちょっと……」


「そうですよ。まず、奏。あなたの誕生日は7月30日でしょ。瑠璃華さんの誕生日は8月20日です。瑠璃華さんが奏のお姉さんになるのは、無理があります」


「ふ~ん。瑠璃華ちゃんの誕生日って、8月20日なんだ~。良いこと聞いちゃった」


「あ……」


 遥先輩は、しまったという表情をして、口を押さえています。


「でもね。私が瑠璃華ちゃんよりも早く産まれたことなんてね。私にとって、些細なことでしかないんだよ。まぁ、もし瑠璃華ちゃんの誕生日が私より早かったらそれも理由にしてたけどね!」


 奏ちゃんは胸を張りながらそう言います。


「ねぇ、奏ちゃん。お姉ちゃんになるのは、わたしじゃないとダメなのかな?」


「ダメですね。お姉ちゃんが甘やかすなら瑠璃華ちゃん以外あり得ないと思っているように。わたしも瑠璃華ちゃんを見た時、この子じゃないとダメだと思ったんだよ。やっぱり私たち姉妹なんだなぁ~って感じたよ。だから、もう一度言います。瑠璃華ちゃん、私のお願いを叶えて欲しいのお願いします」


 奏ちゃんの瞳は、遥先輩と願いを叶え合うと約束した時の先輩と同じでした。奏ちゃんが、本気であることを改めて理解しました。


 わたしは、奏ちゃんの願いを叶えたいという気持ちがわかります。遥先輩もその気持ちを理解しているでしょうし。奏ちゃんが本気であることも、わかっている筈です。


 わたしは、奏ちゃんの願いを叶えてあげたいと思いました。でも、わたしってお姉ちゃんというより、妹だと思うんですけどね。


「遥先輩。わたしは、奏ちゃんの願いを叶えてあげたいです。遥先輩は許してくれますか?」


「瑠璃華さん……。わ、私は……」


 私の言葉に困った表情で考え込む遥先輩。


「瑠璃華ちゃんは、優しいね。私とっても嬉しいよ、ありがとう。ねぇ、お姉ちゃん。2人で話さない」


「そうね……わかったわ。瑠璃華さん、少しだけ待っていて下さい」


「はい、わかりました。待ってます」


 遥先輩と奏ちゃんは部屋から出ていきました。何事もなければ良いんだけど……。



◆◆◆



 奏と部屋から出た私は。


「奏、私の部屋で話しましょう」


「うん……」


 私の部屋に入って直ぐに、奏が話し掛けてきました。


「ねぇ、お姉ちゃん。やっぱり、私が瑠璃華ちゃんを甘やかすのは嫌? まぁ、聞かなくてもわかるけど……」


 本音を言ってしまえば嫌です。瑠璃華さんと仲良くなれて、小さい時からの願いが叶っている今の幸せを奪われてしまうそんな気がして、とても怖いんです。


「奏……正直にいいます。いや……です」


「そっか……そうだよね……」


 いつも元気な奏が悲しそうな表情をする。


 奏の願いを叶えたいという気持ちは、姉である私が一番よく知っています。私は瑠璃華さんのお陰で願いが叶いましたが奏はそうではありません。


 もし私と奏の立場が逆だったら……私はどうしたんでしょうか? 奏と同じことか似たようなことをしていたかも知れません。私の答えは1つしか無いでしょう。


「でも……奏の気持ちはとてもわかります。もし立場が逆だったら、私はどうしただろうかと考えると私は、奏の願いを叶えてあげたいと思うんです。だって、奏は私の大事な妹ですから」


「お姉ちゃん……本当にいいの?」


「はい。瑠璃華さんも奏の願いを叶えてあげたいと言っていましたからね」


 奏は悲しそうな表情から、一変して明るい笑顔に戻りました。


「ありがとうお姉ちゃん。約束するよ、お姉ちゃんから瑠璃華ちゃんはとらない。私の大好きなお姉ちゃんが悲しむことはしないよ。絶対に」


「奏……ありがとう。でも、奏が瑠璃華さんを甘やかしているのを見て、嫉妬しちゃうかも知れない」


「それはしょうがないことだよ。私がお姉ちゃんの立場なら私だって嫉妬しちゃうだろうし。ねぇ、そろそろ瑠璃華ちゃんのところに戻ろうよ」


「そうね、奏。戻りましょうか」


 私と奏は、瑠璃華さんの待っている部屋へと戻ることにしました。



◆◆◆



「お待たせしました、瑠璃華さん」


 遥先輩と奏ちゃんが戻って来ました。


 遥先輩と奏ちゃんの表情が明るいということは、話はいい方向に進んだんでしょう。良かった……。


「それで、どうなりましたか?」


「はい、瑠璃華さんの奏の願いを叶えたいという気持ちを尊重することにしました」


「そうですか、話がまとまって良かったです」


「瑠璃華ちゃん。これから、友達として『お姉ちゃん(仮)』としてよろしくね」


 笑顔で奏ちゃんは、そう言いました……けど。『お姉ちゃん(仮)』ってなに?


「あの~奏ちゃん。『お姉ちゃん(仮)』って?」


「うん、それはね。そのまんまの意味だよ。今の瑠璃華ちゃんは『お姉ちゃん(仮)』。まだ正式なお姉ちゃんでは無いってことだよ」


 正式なお姉ちゃん? このことはあまり深く考えない方が良いかも知れません。


「それで、その……わたしは、奏ちゃんのお姉さんになって、甘やかされれば良いんだよね? わたしそこが良く分からなくて……」


「まぁ、簡単に言うとね。そういうシチュエーションのごっこ遊びだと思ってくれればいいんだよ。そう思えば瑠璃華ちゃん、気が楽じゃないかな?」


 確かにそういうごっこ遊びだと思えば、少しは気が楽かもしれないです。


「なるほど、ごっこ遊び。それなら奏ちゃんの願いを叶えられると思う」


「瑠璃華ちゃん、ありがとう。私も約束通り、瑠璃華ちゃんと友達になって2人が学園で周りを気にせずに会えるように協力するよ」


「別に約束だから友達になるんじゃなくて、ちゃんとした仲の良い友達になりたいな」


「本当に瑠璃華ちゃんは優しいね。私、学園では目立たないようにしているから、友達が少ないんだよね~」


 確かに、最初は生徒会長の妹だからとか大企業の社長の娘だからって、話題になっていたけど。しばらくしたら、奏ちゃんの話を聞かなくなったけど、そう言うことだったんだ。


「クラスは別だけど、これから仲良くしようね、奏ちゃん」


「うん! よろしくね、瑠璃華ちゃん」


 とりあえず、これで一件落着ってことで良いのかな? そう思っていると……。


「あっ! そうだ! お姉ちゃん、瑠璃華ちゃんをお姉ちゃんの部屋に案内してあげたら? 瑠璃華ちゃんもお姉ちゃんの部屋に興味があると思うよ」


「奏、良いんですか? 奏が瑠璃華さんを誘ったのに」


「いいの、いいの。私の最初の目的は達成出来たから。2人で仲良くお姉ちゃんの部屋でイチャイチャするがいいさ」


 奏ちゃんは、楽しそうにそう促してくる。遥先輩の部屋ですか……行ってみたいな……。


「あ、あの……瑠璃華さん。私の部屋に行きたいですか?」


「はい! 遥先輩の部屋に行ってみたいです!」


「じ、じゃあ、行きましょうか。瑠璃華さん」


 わたしと遥先輩が奏ちゃんの部屋から出ていこうとすると、奏ちゃんが。


「あっ! 後で、お姉ちゃんの部屋に飲み物とお菓子を持って行くからね。それじゃ、ごゆっくり~」


 奏ちゃんに見送られ、わたしと遥先輩は部屋を出て、隣にある部屋の前へと移動しました。


「奏の部屋の隣が私の部屋です。さぁどうぞ、入って下さい」


「お、お邪魔します……」


 わたしは、遥先輩の部屋へと入った。


 そう言えば、何で奏ちゃんはわたしと遥先輩を一緒にしたがるんだろう?

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― 新着の感想 ―
[一言] 遥と瑠璃華がくっついて夫婦のような関係になれば、「お姉ちゃん(仮)」が「お義姉ちゃん」になるからとか?
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