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35話 『Stella』でのハルとの会話。ハルの遅れた理由。

 妹喫茶を出たわたしは、『Stella』にやって来ました。


「お帰りなさいませ、お嬢様」


 扉を開けたわたしを出迎えてくれたのは、ナナ一人だけでした。


「お席にご案内いたします」


 ナナに案内されて、いつもの席に着く。


 そう言えば、今日は遥先輩がいるはずなんですけど、見当たりません。わたしが店内を見渡していると、ナナがわたしに小さな声で話しかけてきました。


「遥先輩なら、ちゃんとお店に来ているから安心して頂戴。少し用事があったみたいで遅れて来たのよ。それで今準備している所なの」


「そうなんですね。わかりました。じゃあ、注文いいですか?」


 わたしは、紅茶を注文し、ナナはバックヤードへと入って行きました。


 流石に、オムライスを食べた後ですから、今日は紅茶だけ注文することにしました。


 しばらくすると、紅茶を持ってハルがやって来ました。


「お待たせいたしました。ご注文のダージリンで御座います」


 わたしは、紅茶をテーブルに置いているハルを見ると、薄っすらとハルの額に汗が見えた。用事を終わらせた後、走って来たのかな?


 その後、いつものようにハルとのお話を始めてすぐに、ハルがわたしに質問してきました。


「あ、あの……瑠璃華お嬢様は今日、このお店に来る途中に何処かへ行ったりしていましたか?」


 何処かに……かぁ……どうしよう……。とりあえず行った場所くらいは、話してもいいよね。


「えっと……ですね。今日オープンした妹喫茶に行きました……はい……」


「妹喫茶ですか……今日オープンすることは知っていましたけど。どうして、妹喫茶へ?」


 やっぱり、それ聞いて来ますよね~。流石に本当のことは言えません。ごめんなさいハル……。


「それは……。前に通っていたメイド喫茶の場所に出来たお店なので、気になって行ったんですよ」


「なるほど……。それで、どうでしたか? 妹喫茶について、私は全く詳しくないのでお話を聞かせてくれませんか?」


「そうですね……店内も綺麗でしたし。それに……個性的な店員さんが多くて、にぎやかでしたね。うん……あとは、オムライスが美味しかったですよ。でも、ハルが作ったオムライスの方が美味しいですけどね」


「もう、そんなことを言って、瑠璃華お嬢様は。それで、妹喫茶に行って誰かと話とかはしていないんですか?」


 少し顔を赤らめながら、ハルはわたしに質問した。そんなに妹喫茶が気になるのは、どうしてだろう? それに誰かって……。もしかして、知り合いとかが居たりするのかな?


 わたしは、カナちゃんについては話さずに妹喫茶で起こったことをハルに話しました。


「そうなんですね。そのお店の店長さんも大変そうですね。あの子はちゃんと仕事はしているみたいですね」


「ん? ハル、今なにか言いましたか?」


「へ? い、いえ……何でもありませんよ。気にしないで下さい」


「そうですか……わたし、妹喫茶に行って思ったんです。やっぱり、わたしはこのお店でハルとお話することが一番だなって、そう思ったんですよ」


 それを聞いたハルは、さらに顔が赤くなる。


「私とですか……ふふ……それを聞いて安心しました。やっぱり、あの子には絶対に……」


 最後になにか言っていたようですけど、聞き取れませんでした。


 その後は、いつものように何気ない会話を楽しんでお店を後にして帰宅しました。


 月曜日は、カナちゃんと図書室で会って色々と話を聞くんですけど、一体どんな理由でこんなことをしたのか、ちゃんと話してくれるんでしょうか? 少し不安です……。



◆◆◆



 瑠璃華さんがお店に来る前……。


 私は、妹喫茶の近くの物陰にいました。今日は、妹喫茶のオープンの日です。瑠璃華さんの前にあの子が急に現れたのは恐らくですが、あの子が働く妹喫茶に瑠璃華さんを誘うためなのではないかと思ったからです。


 それに金曜日。瑠璃華さんは私になにか言いたそうな顔をしていましたし。あの子になにか言われたのかもしれません。もしかしたらと思い今、妹喫茶ある雑居ビルが見える場所で見張っている訳ですけど……私の思い違いであって欲しいです。


 ですが……私の願いを聞き届けてくれることは無く、雑居ビルに瑠璃華さんがやって来ました。やっぱり、あの子に誘われて来たみたいですね。


 私が瑠璃華さんの様子を窺っていると、私のいる物陰の方に瑠璃華さんが顔を向けました。急いで隠れて再度、瑠璃華さんの様子を見てみると瑠璃華さんは首を傾げながら雑居ビルへと入って行きました。


 私も店内に入れれば良かったんですが、流石にそれは、瑠璃華さんとあの子にバレてしまうので外で待っている事しかできません。ですが……ずっと物陰に隠れているのは流石に不味いですよね。


 物陰から出た私は、雑居ビルの向かいにある。喫茶店に入ることにしました。窓側の席からなら瑠璃華さんが出てきても大丈夫な筈です。


 私はコーヒーを飲みながら瑠璃華さんが出てくるのを待っている時、何気なく時計を見るとバイトの時間が近づいて来ていることに気付きました。私としたことが忘れていました。急いで店長と七菜香さんに、バイトに遅れるかもしれないと連絡を入れて瑠璃華さんが出てくるのを待ちます。


 その後、30分から40分ほど喫茶店にいた私ですが、流石にこれ以上このお店にいるのも迷惑なんじゃないかと思い。喫茶店を出て先ほどの物陰に再度隠れていると、瑠璃華さんが雑居ビルから出てくるのが見えました。


 瑠璃華さんを見てみるとなんだか少し疲れているみたいです。一体何があったんでしょうか? 私がそう思っていると、またもや瑠璃華さんが私の方へと顔を向けたので急いで路地に逃げ込みました。その後、瑠璃華さんは『Stella』ある方に歩いていくのが見えたので急いで、別の道から『Stella』に向かいました。


 『Stella』で瑠璃華さんとお話しして妹喫茶について聞いてみましたが、私が思っていたよりもあの子がちゃんと仕事をいていることに安堵しました。瑠璃華さんは、あの子について隠しているようですが大体の察しはついています。


 その後も瑠璃華さんと話をして、会計を終えた瑠璃華さんを見送った私は、来週あの子が瑠璃華さんに何かするのではないかという不安に駆られながら月曜日を待つことになりました。

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