31話 瑠璃華、七菜香先輩に相談される
わたしが風邪をひいて、遥先輩に看病して貰ってから、しばらく経ったある日の放課後。
遥先輩は、用事かあるらしいので、家に帰ろうと下駄箱へと向かっていると……。
「ねぇ、えっと……瑠璃華さん」
「ふぇ?」
突然、呼び止められて、振り返ると……。生徒会書記の八宮七菜香先輩でした。
「七菜香先輩。どうしたんですか?」
「その……瑠璃華さん。あなた、今時間あるかしら? 聞きたいこと……違うわね……えっと……相談したいことがあって……」
遥先輩に紹介されて挨拶して以来、話したことが無い七菜香先輩から、呼び止められたことにも驚いたけど……相談って、なんだろう?
それに……七菜香先輩の様子がおかしい……。遥先輩に紹介された時は、少し気が強そうで、遥先輩にも臆せず色々と言っていた七菜香先輩が……一体どうしたんだろう?
「わたしは、大丈夫ですけど……相談ってなんですか?」
「そう……ありがとう。あなたと2人で話がしたいの……生徒会室まで、ついてきてくれる?」
「わ、わかりました」
わたしは、七菜香先輩の後について行き。生徒会室に移動した。
「座って頂戴」
「は、はい。失礼します……」
き、気まずいなぁ……。七菜香先輩とは、『Stella』でも話したことがないし。相談する人を間違えているんじゃないかなぁ……本当にわたしでいいの?
「あ、あの~七菜香先輩。相談というのは……」
「えっと……」
すると七菜香先輩は、黙ってしまい。すごく悩んでいるようです。やっぱり、わたしじゃない方がいいのでは?
「あの……七菜香先輩。やっぱり、相談するのは、わたしじゃなくて、遥先輩とか、怜先輩の方がいいんじゃないですか?」
わたしが、怜先輩の名前を出した時、七菜香先輩はビクッと反応しました。もしかして、相談というのは怜先輩のことでしょうか?
「もしかして……七菜香先輩。相談というのは、怜先輩のことですか?」
「な! な、な、なんで、わかったのよ!」
七菜香先輩は、驚いたように言う。
どうやら、当たりのようです。でも、なんでわたしに相談を?
「それで、なんでわたしに、怜先輩についての相談を? 七菜香先輩の友達に相談すればいいんじゃないですか?」
「それは……私にも友達はいるけど……怜先輩について、相談出来ないのよ……ほら、怜先輩って、人気あるでしょ」
「確かに、1年生の間でも人気ですね。成績も優秀でスポーツも万能でカッコいいって言われてます」
「そうなのよ……只でさえ、怜先輩とよく一緒にいるから私、一部の人達から妬まれているのに、相談なんて出来ないのよ……はぁ……」
そうなんだ……七菜香先輩も大変なんだな……。
「でも、なんで、わたしに相談することになるんですか?」
「それは……あなた、遥先輩にしか興味がなさそうだし。それに……あの遥先輩と、あんなに仲良くなれるなら、あなたが適任だと思ったのよ」
遥先輩と仲が良いから適任って……いまいち、よくわからないな。
「それで、怜先輩についての相談とは?」
「私ね……怜先輩ともっと仲良くなりたいのよ……」
もっと怜先輩と仲良く? わたしには、仲良く見えたけど……上手くいっていないのかな?
「はぁ……仲良くですか。でも、七菜香先輩。よく怜先輩と一緒に帰っていますよね? 怜先輩と仲良くないんですか?」
「別に怜先輩との仲は悪くないと思うのよ。ただ……」
「ただ、なんですか?」
「怜先輩は……私のことを、ただの後輩としか思っていないんじゃないかと思って……」
「それは、どういう……」
「何かにつけて、私は七菜香の先輩だからとか、七菜香は私の後輩だからって、言って立場を強調するものだから。私と怜先輩の関係って……その程度なのかなって思ってしまうのよ……私はもっと怜先輩と仲良くなりたいんだけど……出来ればそれ以上に……」
なるほど……最後の方は、声が小さくて聞き取れなかったけど。先輩と後輩という線引きをされているのが嫌で、純粋に怜先輩と友達になりたいということかな?
「七菜香先輩の悩みは、わかりました。でも……わたしが、適任というのはどういうことですか?」
「それは、あなたが遥先輩と仲良くしているからよ。『Stella』であなたと遥先輩が話しているところを見たけど、あんなに楽しそうに話してる遥先輩。見たことがないわ」
「そんなにですか? 遥先輩にも友達はいるでしょう」
「いるけど、あなたと話している時が一番だと思うわ。それに、遥先輩があんなに楽しそうに、私と怜先輩にあなたのことを話すんですもの。もしかしたら、あなたに相談したら、怜先輩と仲良く出来る方法があるかも知れないと思って……ねぇ……あなたは、遥先輩とどうやって仲良くなったの?」
ど、どうしよう……わたしと遥先輩の仲が良い理由は……流石に言えないよ……。でも、七菜香先輩がすごく期待した目でわたしを見ている……。
「うーん。わたしと遥先輩の仲が良いのは、『Stella』と生徒会室でよく話をしているから……だと思うんですけど……それ以外には、ちょっと……」
「そう……ごめんなさいね。変なこと、相談しちゃって……迷惑だったでしょう」
「いえ、迷惑だなんて。わたしも、七菜香先輩の力になれなくてすいません。ところで、七菜香先輩と一緒にいる時の怜先輩は、どんな感じなんですか?」
「そうねぇ……バイトの帰りに、ファミレスとかで食事をすることがあるけど……会計で私が払おうとしたら、怜先輩が払うのよ。毎回」
ん? 毎回?
「毎回って、いつからですか?」
「いつから……うーん。確か……私が一年の時からかしら。怜先輩と一緒に出掛けている時は、いつも怜先輩が支払いをするの。一々先輩、後輩だからって言ってね」
あの口振りだとよく一緒に出掛けているみたいだけど。先輩と後輩の中だからって、そこまでするかな? もしかして、七菜香先輩が勘違いしているのでは?
「あの……話を聞いていると。とても、七菜香先輩が言っているような感じではないと思いますけど……」
「そう? いつも、怜先輩が私になにかしてくれる時は、先輩だから後輩だからって言うから。怜先輩は私のことをただの後輩としか思っていないのかと……」
「もう直接、怜先輩に聞いてみた方がいいんじゃないですか? それが、一番だと思うんですけど」
それを聞いた七菜香先輩は、顔を赤くして……。
「む、無理よ! 私、人には思ったことをハッキリと言うけど……怜先輩には、言えないのよ」
「そうは言ってもですね。わたしも、遥先輩の正体を知って気まずくなった時は、勇気を出して遥先輩と話し合って、今の関係になれました。遥先輩と仲良くなれた理由は、このこともあると思うんですよ。だから、七菜香先輩も勇気を出して聞きましょう」
七菜香先輩は、少し考えた後。
「そ、そうね。それが一番よね。私、頑張ってみるわ。瑠璃華さん」
「そうです。その意気です。頑張って下さい、七菜香先輩!」
その後、何かあったら相談したいということで、七菜香先輩と連絡先を交換して、七菜香先輩と別れました。
わたしが、下駄箱へと向かっていると……。
「やぁ、瑠璃華ちゃん。今、帰りかい?」
「はい。少し七菜香先輩と話をしていまして」
「へぇ~七菜香とねぇ。なにを話していたんだい?」
な、なんだろう……。怜先輩から少し圧を感じるんだけど……。
「さ、流石に勝手に話の内容を話すのは、七菜香先輩に悪いので……すいません」
「それも、そうだね。七菜香に悪いからね。じゃあ、瑠璃華ちゃん。気をつけて帰るんだよ」
そう言って立ち去ろうとする怜先輩に、わたしは質問する。
「あの……怜先輩。一つ聞いてもいいですか?」
「何だい、瑠璃華ちゃん?」
「怜先輩は、七菜香先輩のこと……どう思っているんですか?」
「そうだね……私は七菜香のことを……」
「な、なんですか?」
「ふふ……ひ、み、つ、だよ。はは! じゃあ、また明日、瑠璃華ちゃん」
そう言って、怜先輩は何処かへ行ってしまった。怜先輩は、本当に良く分からない人です。
わたしは、そう思いながら家へと帰った。
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