30話 風邪ひきと先輩
翌日。
目が覚めると……何だか体がダルい……それに熱っぽい……もしかして、風邪?。
わたしは起き上がり、ベッドから出る。
「体温計……どこだっけ?」
わたしは、体温計を見つけ出し、測ってみると……。
「37.8……やっぱり、昨日の雨で……はぁ……あとで、休むって学園に連絡しないと……それと……恵梨香と凛子にも伝えておこう……」
わたしは、恵梨香と凛子に休むことをメッセージで伝える。あとは……。
そうだ……遥先輩にも休むことを伝えた方がいいよね。生徒会室にわたしが来ないと心配するだろうし。
わたしは、遥先輩にメッセージを送る。すると直ぐに返事か返ってきた。送られてきた内容を読んでみると……。
『瑠璃華さん。お加減はいかがですか? もし何かありましたら、何時でも連絡して下さい。本当は今直ぐにでも、瑠璃華さんのお宅に伺って看病して差し上げたいのですが、学園を休む訳にはいきませんので放課後。瑠璃華さんのお宅に伺います。どうぞ、お大事に』
わたしは、遥先輩からの返信を見て。もし今日が、休日だったら遥先輩が、わたしの家に飛んで来ていただろうなぁ。
わたしは心配している遥先輩に、大丈夫であることを伝えた後。
「はぁ……食欲あまり無いけど……なにか食べといた方がいいよね……」
わたしは、重たい足取りでキッチンへと向かう。料理をする気力もないので、近くにあった食パンを1枚食べたわたしは風邪薬を飲んだ。
その後、学園に連絡して休むことを伝え、ふらふらとした足取りでベッドに入り横になる……。
「はぁ……この家って……こんなに静かだったっけ……」
誰もいない部屋の中でわたしは、一人暮らししたことを少しだけ後悔した。
実家に住んでいたら、風邪を引いてもお母さんがいる。だけど……今は違います。わたしは、この家で一人きり……寂しさと孤独感でわたしは不安になった……。
「遥先輩……」
つい……不安で遥先輩の名前を口にした……。そういえば……放課後に遥先輩が来てくれる……そう思うと少しだけ気持ちが軽くなった。
「遥先輩……早く来てくれないかな……」
風邪薬を飲んだからか、眠気に襲われたわたしは、遥先輩が早く来てくれることを願いながら、眠りについた……。
◆◆◆
「んんっ……あれ? わたし……寝ちゃってた?」
目が覚めたわたしは、時計を見る……。
「4時過ぎてる……わたし……そんなに寝てたのか……」
眠っていたお陰か、朝よりも体のダルさや熱っぽさが無くなっていた。
わたしは、誰かから連絡が来ていないかと思い。スマホを確認すると、恵梨香と凛子からメッセージが届いていた。わたしは、急いで2人に返信する。
「これで良し。あっ、お昼に遥先輩からも来てる……」
わたしが、遥先輩に返事を送ろうとした時、家のチャイムが鳴った。
玄関のドアを開けると……わたしの目の前に遥先輩がいた……。
「瑠璃華さん。体調は大丈夫ですか?」
「大丈夫ですよ。さっきまで眠ってて、少し楽になりましたから。どうぞ、中に入って下さい」
「では、お邪魔しますね。瑠璃華さんが思っていたよりも元気そうで良かった。お昼にメッセージを送って、返事が無かったので、私も眠っているのかとは思っていたんですけど……心配で、買い物をして急いで来ました」
「そうだったんですね。わたし……遥先輩が来てくれて安心しました。1人だと不安で……」
本当に遥先輩が来てくれて良かった……心の底からそう思う。玄関のドアを開けて、遥先輩の姿を見た時……とても安心したし嬉しかったから……。
「瑠璃華さん。私が来たからには、安心してくださいね。あっ、そういえば、瑠璃華さん。先ほどまで眠っていたのなら、お昼も食べていないんですよね?」
「はい。朝に食パンを1枚食べただけで……」
「それでは、お腹も空いているでしょう。お粥を作りますので、瑠璃華さんは部屋で休んでいてください。出来ましたら部屋まで持っていきますから」
「わかりました。遥先輩……ありがとうございます」
わたしは、部屋に戻りベッドに入る。
しばらくすると……わたしの部屋にお粥を持った遥先輩が入って来る。
「お待たせしました。瑠璃華さん」
遥先輩は、わたしの横まで来て……。
「私が瑠璃華さんに食べさせてあげます。熱いので気をつけて下さいね。ふぅ~、ふぅ~。はい、瑠璃華さん。口を開けて下さい。あ~ん」
遥先輩は、わたしの口元までスプーンを差し出して来る。
「あ、あ~ん。んっ……美味しいです」
「それは良かったです……でも、無理に食べなくてもいいですからね」
その後も、遥先輩にお粥を食べさせて貰いました。
「はぁ~お腹いっぱいです。ごちそうさまでした」
「お粗末様です。では、瑠璃華さん。私は、片づけをして来ますので、お薬を飲んでゆっくりしていて下さい」
そう言って、遥先輩は部屋を出て行った。
さっきまで、一人で心細かったけど……遥先輩が来てくれたお陰でそんな気持ちも何処かへ行ってしまいました。本当に遥先輩と出会えて良かったと思いました。
遥先輩に言われた通り。薬を飲んでゆっくりしていると……。
「失礼します。瑠璃華さん、体調の方はどうですか?」
「はい。お粥を食べてから少し元気になった気がします」
「それは良かったです。瑠璃華さん、私になにかして欲しいことはありませんか?」
遥先輩にして欲しいこと、か……じゃあ……。
「遥先輩、近くに来てくれませんか?」
遥先輩は、わたしの隣まで来て床に膝を着く。
「あの……手を握って貰えませんか? わたし……遥先輩が来るまで、一人で不安だったんです……だから……」
遥先輩はわたしの手を優しく握ってくれた。その手は、温かくて……柔らかくて……。
「そうですよね。瑠璃華さん、一人暮らしですから不安ですよね。瑠璃華さんの気が済むまで握ってあげます。だから、安心して休んでくださいね」
「ありがとうございます。遥先輩……」
わたしは、安心したからなのか……段々、瞼が重くなっていき……。
「お休みなさい……瑠璃華さん……」
遥先輩がそう言った後……わたしは、眠りについた……。
◆◆◆
「ふあぁ~。んんっ……あさ?」
目を覚ましたわたしは、周りを見渡す。すると……。
「えっ……遥先輩?」
わたしが眠っていたベッドの端でうつ伏せになり眠っている遥先輩がいた……わたしの手を握ったままで……。
「もしかして……ずっと、握っていてくれたの?」
わたしが、驚いていると……。
「んんっ……あっ、瑠璃華さん。起きたんですか……体調はどうですか?」
「えっと……はい、体もダルくないですし、熱っぽくもないです。もう大丈夫だと思います」
「そうですか……良かった……でも、ちゃんと体温を測って確認しましょうか」
遥先輩に体温計を渡されて測りながら質問する。
「あの……遥先輩。ずっと、手……握っててくれたんですね」
「はい。瑠璃華さんのお願いでしたからね」
「なんで、家に帰らなかったんですか?」
「家には、念のために伝えておきましたから。一人暮らしの友人が体調を崩したので看病すると。それに、私が帰ったら誰が瑠璃華さんの家の鍵をかけるんです?」
「た、確かに……すいません」
「謝らないで下さい。私がやりたくて、やったんですから」
体温計が鳴り、遥先輩が確認する。
「もう大丈夫ですね。でも、あまり無理はしないで下さいね」
「わかりました。遥先輩は、家には……」
「そうですね……この時間なら、一旦家に帰っても問題ないですね」
その後、遥先輩は帰る準備をして……。
「遥先輩。本当にありがとうございました」
「いえいえ、瑠璃華さんが元気になって良かったです。また、学園で会いましょうね」
遥先輩が帰ってから、わたしは遥先輩の手の温もりを思い出しながら、登校の準備をした。




