26話 ハル特製オムライス
はぁ……。少し落ち着いて来ました……。今でも、わたしがどうしてあんなことをしてしまったのかがわかりません……。
そんなことを考えながら、ハルがお昼ご飯を用意してくれるのを待っていると……。
「瑠璃華お嬢様。お昼の用意が出来ました」
どうやら、出来たみたいです。とりあえず、先ほどの事は一旦忘れよう。
「あっ! 出来たんですね。どんな、料理を作ってくれたか楽しみだな~」
「ふふ、瑠璃華お嬢様のために、腕によりをかけました」
ハルは、どんな料理を作ってくれたのかな? わたしは、イスに座り待っていると……。
「どうぞ、瑠璃華お嬢様のお口に合えば良いのですが……」
「オムライスですか。すごく美味しそうですね」
出てきたのは、オムライスです。まるで、お店で出されているかのような、ふわとろな玉子が乗ったオムライスです。
「す、すごいです! 玉子がふわとろでお店で見るやつです……ハルは、料理が得意なんですね」
「得意という程ではないですが、瑠璃華お嬢様のために、練習しましたから」
わたしのために、練習までして料理をしてくれるなんて……。嬉しいな……。
「じゃあ、いただきます」
わたしが、オムライスを食べようとした時……。
「瑠璃華お嬢様、待って下さい」
「えっ! なにか?」
ハルは、ケチャップを取り出して……ふわとろの玉子に『るりか』とケチャップで書き……ハートまで書いてくれた。すごく綺麗に書けている……。ケチャップでここまで綺麗に書けるのか……ハルの器用さに驚きました。
「おぉ……わたしの名前を書いてくれたんですね。嬉しいです……それじゃあ……いただき……」「す、すみません。瑠璃華お嬢様、もう一つありましてですね……待ってもらえませんか?」
「他にも何かあるんですか?」
ハルは、少しだけ顔を赤らめながら……。
「は、はい……。実はですね……。美味しくなるおまじないをしようかと思いまして……」
美味しくなるおまじない? ま、まさか、あれをやるんですか!?
ハルは、両手でハートを作りながら……。
「お、おいしくな~れ、おいしくな~れ、もえもえキュン…………あぅ……うぅ……」
恥じらいながら、いつものとは違う、カワイイ感じの声で、おまじないをかけてくれたハルを、わたしは、素直にカワイイと思いました。これが、ギャップ萌えと言うやつですか……。
メイド喫茶『Bloom』に通っていた時を、思い出して少しだけ懐かしい気分にもなりました。
ありがとうハル……。
わたしが、ハルの可愛さとメイド喫茶『Bloom』の懐かしさに浸っていると……。
「はぁぁ……」
ハルは、よほど恥ずかしかったのか。顔を両手で覆いしゃがみ込んでしまいました。
わたしは席を立ち、ハルに駆け寄る。
「あぁ……うぅ……」
「は、ハル。大丈夫ですか? わたしを喜ばそうと頑張ってくれたのは、とっても嬉しいですけど……」
「うぅ……い、いえ。気にしないで下さい……私も一度やってみたかったんです……。瑠璃華お嬢様に喜んでもらえるかなと思いまして……」
「嬉しかったですよ。それに……いつものハルとは違う、とってもカワイイ、ハルが見れましたから」
それを聞いたハルは……。
「可愛い……ですか? わ、私がですか?」
顔を上げたハルは涙目で、わたしに上目遣いで、弱々しくそう聞いてくる。か、カワイイ……上目遣いは、反則だと思います。ハルは、そういう顔もするんだ……。
「はい! とっても可愛かったですよ! 恥ずかしがりながら頑張っておまじないをかけてくれるハルは、可愛かったです!」
「はぅ……そ、そんなに、可愛いって言わないで下さい……る、瑠璃華お嬢様に喜んでもらえて。よ、良かったです……わ、私のことは、気にせずに食べて下さい……料理が冷めてしまいます……から……」
ハルは、そう言っていますけど……流石に、ハルを放置して食べるのは……。
よ、よし! は、恥ずかしいけど、あれを頼んでみよう?
「あ、あの……。ハルにお願いしたいことが……あるんだけど……いいかな?」
「な、何でしょうか? 私に出来ることなら……」
「えっと……ですね……。た、食べさせてくれませんか?」
「食べさせる? えっと……私が、瑠璃華お嬢様にですか? か、かしこまりました。で、では、お席について下さい……」
なにか別の話題をと思って勢いで、あんなこと言っちゃったけど……い、いいんだよね?
わたしは、席に座る。
「あの……流石に立ったままだと、食べさせづらいので……お隣失礼します……」
ハルは、わたしの横にあるイスに座る。
「そ、それでは……」
ハルは、スプーンでオムライスを掬って……。
「ふぅー、ふぅー。る、瑠璃華お嬢様……あ~ん」
「あ、あ~ん……」
お、美味しい……絶妙なケチャップライスの酸味と、とろとろの玉子が絡み合っていて……とっても美味しい……。
「あ、あの……どうでしょうか? お口に合いますでしょうか?」
「はい! とっても美味しいです!」
「そうですか、良かった……ではもう一度……あ~ん」
「あ~ん……うん、美味しい……」
その後も、ハルに食べさせてもらった訳ですけど……な、なんかですね……こ、恋人みたいじゃないですか?
「どうかなさいましたか? 瑠璃華お嬢様、顔が少し赤いですけど……」
「あ、えっと……今、わたし達がしていることって……こ、恋人同士でやってそうなことだな~と思いまして……」
それを聞いたハルの顔も少し赤くなる……。
「あっ……で、でもこれは、ご奉仕と甘やかしの一環ですから……」
「そ、そうですよね。す、すいません。変なこと言っちゃって……はは……」
「そうですよ。瑠璃華お嬢様……あっ、ケチャップがお口に……拭いて差し上げます……」
その後、何事も無かったかのように昼食を終えました……。食事をするだけなのに、すごくドキドキしました。
昼食を食べ終えたわたしは、ソファーに座り寛いでいた。本当に美味しかったです。
「瑠璃華お嬢様、お待たせしました」
食事と片付けを終えたハルが、わたしのところにやってきた。
「ごめんなさい。わたしがハルに食べさせて欲しいとお願いしたせいで、ハルが食事をする時間が遅くなっちゃって」
「気にしないで下さい。瑠璃華お嬢様が、美味しそうに私の料理を食べてくれるのを近くで見れましたから。とても嬉しかったんですよ」
「そ、そうですかぁ~。恥ずかしいなぁ~」
「ところで、瑠璃華お嬢様。次は何を致しましょうか?」
「うーん。そうですね……思いつかないですね……」
「ではまた、先ほどのように抱きついてみますか?」
だ、抱きつく!? い、いや……抱きつくとまた、無意識に色々とやらかしそうだし……。
「い、いえ……今は、そんな気分じゃないといいますか……」
「そうですか……」
ハルが残念そうにしている気がする……ハルとしては、もっとわたしに甘えて欲しいのかな? わたしが、そんなことを考えていると……。
「あの……実は、瑠璃華お嬢様にして差し上げたいことがありまして……」
「ハルが、わたしにしたい事……ですか?」
「はい。本当は、もう少し後にしようかと思っていたのですが……」
ハルが、わたしにしたい事って何だろう?




