24話 瑠璃華がハルに抱きついた結果……
ついに、この日が来てしまいました。約束の日です。わたしは、遥先輩が来るのを待っています。ドキドキします……。
そして……家のチャイムが鳴り、わたしはドアを開ける。
そこには、大きなキャリーケースと買い物袋を持った、遥先輩がいた。
「こんにちは、瑠璃華さん」
「こんにちは、遥先輩。その荷物はどうしたんですか?」
「瑠璃華さんのために、色々と持ってきました」
「そうなんですか。とりあえず、上がって下さい」
「はい。では、失礼します」
わたしは、遥先輩をリビングへと、案内する。
「荷物、重くなかったですか? 少し休んで下さい」
「大丈夫ですよ。気にしないで下さい。あの……瑠璃華さん、この袋の食材を冷蔵庫に、入れても良いですか?」
「良いですけど、なにか作るんですか?」
「はい、瑠璃華さんのために、昼食を作ろうかと思いまして」
「ええ! わたしのために、料理を作ってくれるんですか? とっても嬉しいです! ちなみに、何を作るんですか?」
「ふふ……それは、秘密ですよ」
遥先輩が、わたしのために、料理を作ってくれるなんて……一体何を作ってくれるんだろう? 楽しみだな~。
冷蔵庫に食材を入れた後、遥先輩は……。
「瑠璃華さん、着替えたいので脱衣所をお借りしますね」
「は、はい。どうぞ、場所はわかりますよね?」
「はい。では、瑠璃華さん。少し待っていて下さいね」
遥先輩は、大きなキャリーケースを持って脱衣所に入っていった。
き、着替えるって……やっぱり、あれにだよね……。な、なんか、緊張してきた……。
しばらくして……。脱衣所の扉が開き……。
「お待たせしました。瑠璃華お嬢様」
そこには、メイド服姿の遥先輩がいた……。メ、メイドさんが、わたしの家に……います。夢ではないですよね? そういえば、わたしのことを瑠璃華お嬢様って、呼んだってことは……。
「は、遥せんぱ……じゃない。ハル……」
「はい、ハルです。瑠璃華お嬢様、私にして欲しいことは、ありますか?」
わたしは、この日まで。ハルに何をして欲しいか考えたんだけど……だ、抱きついて頭を、撫でてもらうくらいしか思い付きませんでした……。ゆ、許してくれるでしょうか?
と、とりあえず、座ろう。うん、そうしたほうがいい……。
「えーっと……とりあえず、ソファーに座りましょう……ハル」
「わかりました。では、失礼します……」
わたしとハルは、ソファーに座る。ここれから、ど、どうしよう……。い、言ってみる? うーん……。
「瑠璃華お嬢様、どうしたんですか? どこか具合でも……」
心配そうに、ハルがわたしを見ている。そ、そうじゃないんです! ああ、もう言うしかない! 頑張れわたし!
「具合なんて悪くありません! ハルになにをして欲しいか、考えたんですけど……」
「なにか、ありましたか? 遠慮せずに、言って下さい。約束しましたよね?」
「あ、あの。は、ハルに、だ、抱きついていいですか?」
それを聞いたハルは、少し顔を赤らめて……。
「い、良いですよ。瑠璃華お嬢様が望むなら。さ、さぁ。どうぞ……」
ハルは、両手を広げる。
「じ、じゃあ……」
わたしは、ハルに抱きつく……柔らかい感触が私の顔を包み込む……んん!? や、柔らかい? ……こ、これって、もしかして……。
「あっ……る、瑠璃華お嬢様……」
わたしは、ハルの胸に顔を押し付けていた。こ、これは、流石に不味いのでは……。
「ご、ごめんなさい! とりあえず、離れます!」
わたしが、ハルから、離れようとした時……ハルの手がわたしの頭を優しく包む。
「ま、待って下さい。瑠璃華お嬢様、離れないで下さい!」
「えっ! で、でも……」
「いいんです。瑠璃華お嬢様が嫌でなければ、構いません。もしかして……嫌ですか?」
「い、嫌じゃないです! わたしが、そうしたいって、言ったんですから。それは、ないです……は、ハルはどうですか?」
「わ、私も、嫌ではないので気にしないで……下さい……」
抱きついていて、ハルの表情は見えないけど、わたしと、同じで赤くなっている気がする……。
今、聞こえるのはわたしとハルの、息づかいだけ……。
「瑠璃華お嬢様……あ、あの……頭を撫でていいですか?」
「は、はい……」
わたしの頭に、ハルが優しく触れ撫でてくれる……。膝枕してくれた時も、そうだったけど……とても、落ちつく……。
「ど、どうでしょうか?」
「すごく……落ちつきます……」
「そうですか……」
わたしは、ハルの胸に顔を押し付けてしまっている訳ですが……耳を澄ませば、ハルの心音が聞こえてきます。やはり、緊張しているのか、早い気がします。
「ハルの心音が聞こえる……すごくドキドキしていますね……緊張してるんですか?」
「瑠璃華お嬢様、き、聞かないで下さい……は、恥ずかしいです……から……」
「でも、すごく……落ちつくんです……もう少しだけ、聞いていたいです……ダメ、ですか?」
「る、瑠璃華お嬢様が、望むのであれば……は、恥ずかしいですけど……いい……ですよ……」
はぁ~。本当におちつく……ハルはわたしの、おねがいをきいてくれる……。恥ずかしがっているけど……やめさせようとはしません……わたしをちゃんとうけとめてくれる……。だから……もうすこし……あまえてもいいよね……。
わたしは、ハルを少しだけ強く抱きしめる……。
「え……る、瑠璃華お嬢様!?」
「んん~。ハル~」
「あの……瑠璃華お嬢様……少し……へ、変じゃないですか」
へん? なにがだろう?
「へん~? わたしがですかぁ? へんじゃないですよ~。んん~ハル、いいにおいですぅ。おちつく……」
「えっ、る、瑠璃華さんって……抱きつくとこんな感じに? か、かわいいし、甘えてくれるのは嬉しいけど……これは……ドキドキが……うぅ……」
「ハルぅ~なにかいった?」
「い、いえ、気にしないで下さい。瑠璃華お嬢様、ご満足頂けましたか?」
まんぞく? まだハルに抱きついていたい……。
「まだ、このままがいい……ねぇハル……ぎゅーってして?」
「ぎゅーですか?」
「うん……ダメ?」
「いいですよ……じゃあ、いきますよ……ぎゅー」
わたしの頭を撫でるのをやめたハルは、やさしく抱きしめてくれた……その時、聞こえたハルの心音は……さっきよりもドキドキしていた……。
どれくらい経ったんだろう……ハルのドキドキも落ち着いたみたいで、心地の良い心音がわたしをさらに癒してくれる……。そんな時……。
ぐぅ~。
静かな部屋の中で、わたしのお腹がなった……。
「ふふ、瑠璃華お嬢様。お腹が空いたんですね。そろそろ、お昼ですから」
「はい……お腹空きました……ハルが作ってくれるんだよね?」
「ええ。ですので、瑠璃華お嬢様。離れてもいいでしょうか?」
「うん……」
わたしは、名残惜しみながらハルから離れる……その時見たハルの顔は、真っ赤でした……。
「で、では、お昼を用意しますのでキッチンお借りしますね」
そう言うと、ハルは足早にキッチンへと向かっていった……。
リビングに残されたわたしは……。
あれ? わたし……ハルに抱きついてから……とても心地よくて……ハルに甘えて……あぁ……思い出すとわたし、すごく恥ずかしいことしてない? あ、あの時は、なぜか無意識のうちにハルに甘えていたような気が……。ハル、嫌がってないよね?
わたしは、一人リビングで頭を抱える……。




