22話 遥先輩との勉強会
5月も中盤に差し掛かり、中間テストが来週に迫ってきている土曜日の午後。
遥先輩との勉強会の日です。
わたしは、少し緊張しながら、遥先輩が来るのを待っています。すると……チャイムが鳴り、わたしはドアを開ける。
「こんにちは、瑠璃華さん」
「こんにちは、遥先輩。どうぞ、上がって下さい」
「では、お邪魔します」
わたしは、遥先輩を大きなローテーブルのあるリビングに案内する。
「ここで勉強しましょう。わたし、飲み物を持って来るので座って待っていて下さい。あの、お茶でいいですか?」
「ええ、お茶で大丈夫ですよ」
わたしは、遥先輩にお茶を出してから、遥先輩の向かいに座った。
「では、始めましょうか。ところで、瑠璃華さんの苦手な教科は何ですか?」
「わたしですか? そうですねぇ……苦手なのは数学ですかね……」
「そうなんですか。瑠璃華さん、何かわからないことがあれば、聞いてください。私が、教えますよ」
「はい、助かります」
わたしは、勉強を始めたんですが……なんか、視線を感じます……。視線が気になり遥先輩の方を見ると……遥先輩がわたしを見ていた。それ以前に、遥先輩の手元には、ペンケースと開かれていないノートしかありません。なぜ?
「あの~。遥先輩、勉強……しないんですか?」
「ええ。私は今日、瑠璃華さんに勉強を教えるために来ましたから。気軽に聞いてくださいね」
そうだったんだ。遥先輩が、わたしのために……じゃあ、教えて貰おうかな。
「早速なんですけど、この問題がわからなくて……」
「どこですか? あぁ、ここはですね」
わたしは、遥先輩に教えて貰っていたんですけど……。
「ここからだと、教えにくいですね……」
遥先輩は、立ち上がり……。
「瑠璃華さん。お隣失礼しますね」
わたしの隣に座った。ち、近いですよ……。
「あの……遥先輩?」
「それでは、勉強の続きをしましょうか」
「えっ! は、はい……じゃあ、この問題を……」
何事も無かったかのように、勉強会は再開したんだけど……。
「この問題はですね……あの、瑠璃華さん。聞いていますか? 少し顔が赤いですけど、大丈夫ですか?」
「だ、大丈夫です。えっと……その……ですね。遥先輩との距離が近いというか……とくに顔が近い……です。」
遥先輩との距離が近い。それに、勉強を教えているためか、遥先輩の顔が近くてドキドキします。ゲームセンターで、遥先輩の腕に抱きついた時は、その場の勢いでやったからか、なんとも思わなかったけど。今みたいに、長い時間近くにいると意識してしまいます。遥先輩もわたしの言ったことの、意味を理解したようで……遥先輩の顔が赤くなってく……。
「あ……す、すいません。瑠璃華さんに、勉強を教えるのに夢中になってしまって……」
「い、いえ。気にしないでください。つ、続きをしましょう」
「そ、そうですね」
そう言いながら、遥先輩は、少しだけわたしから離れる。その後、順調に勉強会は続き……。
「瑠璃華さん、少し休憩しましょうか」
「そうですね。あっ! そうだ、遥先輩。今日のために、ケーキを買って来たんですよ。一緒に食べましょう」
「私のために、すいません。なにか、手伝いましょうか?」
「大丈夫ですよ。遥先輩は、座っていてください。ケーキと飲み物を持って来るだけですから」
わたしは、キッチンへと向かい。ケーキと飲み物を準備して、持っていく。
「遥先輩、どうぞ」
「とても美味しそうですね。では、いただきます」
ケーキを食べた遥先輩は、とても美味しそうに食べています。遥先輩が喜んでくれてよかった~。わたしも、食べよ。
「瑠璃華さん、とても美味しいです。これで、この後の勉強も頑張れますね」
「そうですね、頑張ります。遥先輩の説明がわかり易いので、テストは良い点が取れる気がします」
「ふふ、そうですか。それは、良かったです。実は、瑠璃華さんがもし、テストで良い点を取れたら。ご褒美になにかしようと思ってるんです」
「え! ご褒美ですか?」
「はい。でも今は、勉強を頑張りましょうね」
遥先輩からの、ご褒美……。よし! やる気が出てきましたよ~。
ケーキを食べ終わり。勉強を再開しました。その後、2時間ほど経ち……。
「ふぅ。もうこんな時間ですか。瑠璃華さん、疲れていませんか? 今日はこれで終りましょう」
「そうですね。少し疲れました……」
そう言いながら、わたしは、体を伸ばす。
「では、久しぶりに肩を揉みましょうか。瑠璃華さん、私に背中を向けてください」
「え、いいですよ。遥先輩も、わたしに教えていたんですから、疲れていませんか?」
「私は、大丈夫ですから。さぁ、瑠璃華さん。背中を向けてください」
遥先輩に言われるがまま。わたしは、遥先輩に背中を向ける。
「では、やりますね」
あぁ~。やっぱり、遥先輩のしてくれる肩もみは気持ちいいです……。
「どうですか? 瑠璃華さん」
「はい~。とてもきもちいいですぅ~」
「ふふ、そういえば。瑠璃華さんに肩もみをしたのは、いつでしたっけ?」
「そうですね~。わたしが、引っこして来た日ですぅ~」
「あぁ、思い出しました。瑠璃華さん、今みたいにとても気持ちよさそうにしていましたね」
本当に、遥先輩の肩もみはきもちいいです。はぁ~。
「次は、肩たたきですね。トン、トン、トン」
「あぁ~。いいです……すごく……はぃ……」
その後も、肩もみと肩たたきはしばらく続きました……あぁ……本当によかった……。でも、もう遥先輩の帰る時間になってしまいました……残念です。
「では、瑠璃華さん。また、学園で」
「はい、遥先輩。今日は、ありがとうございました」
「瑠璃華さん、テスト頑張って下さいね。ご褒美がありますからね」
そう言って、遥先輩は帰って行った。よし! ご褒美のためにも、テスト頑張るぞ~。




