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21話 ハル不在の『Stella』にて……

 遥先輩と遊んだ日から数日後の土曜日。


 わたしは、先週は気まずくて行くことの出来なかった。『Stella』の扉の前にいます。遥先輩、いるかな?


 わたしは、お店の扉を開け店内に入る。


「「お帰りなさいませ、お嬢様」」


 わたしを、出迎えたのは、怜先輩と七菜香先輩でした。あれ? 遥先輩は、もしかして、いないのかな?


「お嬢様、お席にご案内します」


 怜先輩に案内された席は、いつも遥先輩とお話ししている席でした。


「お嬢様、メニューをどうぞお決まりになりましたら、お呼び下さい。失礼します」


 そういえば、わたし。この店で、遥先輩以外に接客されたことなかったな~。そう考えると、ちょっと緊張する。怜先輩と七菜香先輩と話したのなんて、遥先輩に紹介して貰った数日前の一回だけ……どう接すれば……。と、とりあえず、注文しよう。


「お嬢様、ご注文をお伺いします」


「えっと……ダージリンとスコーンをお、お願いします……」


「ご注文はダージリン、スコーン以上でお間違いないでしょうか。お嬢様」


「は、はい」


「かしこまりました。少々お待ちください」


 注文を受け去って行く、怜先輩の後ろ姿を見ながらわたしは。


 き、緊張した……怜先輩だとわかっていても、ウィッグとメガネで全然見た目違うし。雰囲気と喋り方もわたしと会った時の怜先輩と別人です。怜先輩は、かなりの演技派のようです。会った時にも思いましたが、つかみどころのない人みたいです。


「お待たせいたしましたお嬢様、ご注文のダージリンとスコーンで御座います」


 ダージリンとスコーンをテーブルに並べ終えた怜先輩は、ごゆっくりお過ごしくださいと言い残しバックヤードへと戻って行った。


 ダージリンとスコーンを堪能したお陰か、少し緊張が和らいできた。そんな時、怜先輩がバックヤードから出てきて、わたしの方へやって来た。これって……もしかして……。


「お嬢様……私と話を致しませんか?」


 まさか、怜先輩が話に来るなんて思わなかった……でも、怜先輩がどんな人かが、わかるかもしれない。それに、わたしの知らない遥先輩についても聞けるかもしれない。


「はい、いいですよ。怜せんっ」「おっと、お嬢様。ここが何処であるかお忘れではないですか」


 わたしの言葉を遮り、怜先輩が言う。ここが何処か、ですか……。あっ……マジですか怜先輩……遥先輩の時は、知らなかったからハルと気軽に呼べたんだけど、知っている人相手には、ちょっとなぁ……。でも、怜先輩はそれを期待している感じがする……よ、よし……仕切り直してもう一度……。


「い、いいですよ。レン……」


「ふふ……良く出来ました、お嬢様。では、失礼します……」


 怜先輩は、わたしの向かいの席に座る。よ、よかった……遥先輩の時みたいに隣に座って来たら、どうしようかと思ったよ。


「ふふ……ハルと同じ席に座ると思いましたか? ご安心ください、お嬢様。その様なことはいたしません」


「は、はぁ……。あ、そうです。ハルはお休みですか?」


「ええ、ハルは急用で休んでいます。ですので、私がお嬢様の話し相手になろうかと思いまして……」


 そっか、遥先輩は休みか~。まぁ、そんな日もあるよね。じゃあ、怜先輩と何を話そうかな? わたしが、そう考えていたら……。


「お嬢様、ハルのことなんですが……」


「は、はい。ハルがなにか?」


「ハルが正体を隠していたことです。私とナナが、ハルの正体がお嬢様に知られてしまったことを、ハルから聞いたのは、お嬢様がハルに生徒会室で会おうと連絡した日なんですよ。あの日、それを聞いて、もう少し早く相談して欲しかったとナナと一緒に苦言を呈しました」


「そうだったんですか……」


「そんな時に、お嬢様がハルに連絡していただいたお陰で問題が解決したのですから、お嬢様に感謝しなければいけません。ありがとうございます」


 そう言った、怜先輩は、頭を下げる。


「頭を上げてください。わたしだって、友達に勇気をもらったからハルに連絡出来たんですから、それにもう終わったことですよ」


「ふふ……それもそうですね。私は、お嬢様に感謝したかっただけですので。では、なにか別の話をしましょう。私に、なにか聞きたいことなどありますか?」


「えっと、そうですねぇ……ハルはわたしについてなにか言っていましたか?」


 ふと、わたしは、遥先輩が怜先輩や七菜香先輩に、わたしについてどんなことを話しているのか気になってしまった。


「そうですね……お嬢様が初めてお店にいらっしゃった時は、とても可愛らしい子がお店に来てくれたと喜んでいましたね」


「か、可愛らしい……ですか。自分で聞いといてなんですが、は、恥ずかしいです……」


 少し顔が熱い気がする。聞くことを間違えてしまったのかもしれない。


「その後も、お嬢様と仲良くなりたいと、言っていましたし。お嬢様はハルにとても気に入られてますよ。そういえば、ハルと友達になったと聞きましたけど、あれから、どうですか?」


「はい、2人を紹介して貰った日に、遊びに行きました」


「そうですか。それは、良かった。これからも、ハルと仲良くしていただけると嬉しいです。お嬢様と出会ってから、ハルは楽しそうですから」


「わたしも、ハルと出会ってからとても楽しいんですよ」


「ふふ……その言葉は、私にではなくハルに言うといいでしょう。喜びますよ」


「それもそうですね。じゃあ、そうします」


 その後も、怜先輩との話が続きました。途中、中間テストの話が出て、遥先輩とテスト勉強を一緒にする約束をしたと聞いた怜先輩が、遥先輩は成績優秀で教えるのが上手だと言っていました。流石、遥先輩ですね。


「今日は、色々と話が聞けて良かったです」


「それは、良かった。これからも、ハルと仲良くしてください。では、またのお越しをお待ちしています」


 家に帰り、怜先輩との話を思い出す。遥先輩については、色々聞くことが出来たけど、怜先輩については、あまりわかりませんでした。やっぱり、つかみどころのない人のようです。


 そういえば、中間テストがそろそろでしたね。遥先輩とのテスト勉強、楽しみだな~。家の掃除とかお菓子の準備とかした方がいいよね。


 あぁ、早くテスト勉強する日にならないかなぁ~。

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