16話 悩む瑠璃華は、友達に勇気をもらう
ハルの正体が、遥先輩だと知ってしまった日から、1週間ほど経ってしまいました……。
あの日以降、わたしは、遥先輩とお話をしていません……。遥先輩を見かけても、わたしを見た遥先輩は、なにか言いたそうな感じがするんですが、悲しそうな表情をして走り去っていきます……。
わたしも、どうすればいいのかわからなくて、遥先輩に話しかけることも出来ませんでしたし、『Stella』にも行っていません。行っても、話すことは出来ないでしょうから……そうなってしまったら……わたしは……。
あぁ……わたしは、一体どうしたらいいんでしょうか……。
どうすればいいか悩んで過ごした、1週間は、最悪でした……。授業には一切集中できませんでしたし、バイトでもミスすることが多くなり、真莉愛さんや他の従業員の方たちに、色々と心配や迷惑をかけてしましました……。
そして、わたしは、眠れていません……。考えれば考えるほど、眠れないんですよ……。そろそろ限界です……お昼休みに少しだけ眠りましょう……眠れたらですけどね……。
「瑠璃華。一緒にたべっ、って! どうしたの! 瑠璃華。最近、元気ないと思っていたけど、今が一番ヤバイ!」
「る、瑠璃華……大丈夫? 隈がスゴい……保健室行く?」
あぁ、わたしは、2人にまで心配をかけてしまっています……。2人がそこまで言う、今のわたしの顔って、一体どうなっているんだろう……鏡を見るのが怖い……。
「だ、大丈夫……たぶん……」
「いやいや! そうは見えないけど! 本当に何があったの?」
「瑠璃華……私達に話せないことなの?」
2人が今までに無いくらい心配している……正直、わたしだけでは、この問題に対しての答えを出すことはムリです……。
恵梨香と凛子なら……もしかしたら……。
「恵梨香、凛子。あのね……実は、仲良くしている人の秘密というか……隠していたことを知ってしまって……その人と、偶然顔を合わせても、なにか言いたそうな感じはするんだけど……悲しそうな表情をして走り去っていくから、わたしも話しづらいというか……」
「もしかして、前に話していた?」
「そう……その人の隠していたことは、人によっては騙していたと思うんだろうけど……わたしは、すごく驚いただけで、騙されたとは思っていないんだよ……。わたしも、その人の立場なら隠すだろうし……」
わたしは、遥先輩が正体を隠す気持ちはわかります。生徒会長がメイド喫茶で働いているなんて、知られたくないでしょうし。この件に関してはしょうがないことだと思います。
「なるほどね。たぶん、その人は、瑠璃華を騙していたことに罪悪感を感じて、謝りたいけど、それが、出来なくて避けちゃってるんだね」
「それと……瑠璃華が、騙されたことに怒っているとか、その人を嫌いになったと……その人は思っている……かも?」
「わたし、その人に怒っていたり、嫌ってなんか……ない……」
あぁ……なんか、泣けてきた……。
「あぁ! もう! 凛子、もう少しオブラートに包んで、話しなさい! 瑠璃華、あんた、あまり眠れてないでしょ。だから、少しネガティブになってるんじゃない? とりあえず、落ち着いて」
「ご、ごめん……瑠璃華。配慮が足りてなかった……。その人が、瑠璃華に謝りたいと思っているなら……そういう場を作るしか……ないよ」
「なるほど、瑠璃華! その人の連絡先は知っているの?」
「知っているけど……連絡しても、反応してくれるかわからないし……」
わたしも、連絡して話したいと思ったけど……無視されたりするのが怖くて、出来なかったんだ……。
「はぁ~。これは、重症ね。瑠璃華らしくもない……。いい、瑠璃華。怖がってちゃ、なにも始まらないの。とりあえず、その人にメッセージでもいいから連絡しなさい」
「えっ……でも……」
「瑠璃華、怖がらないで、その人と向き合いなさい。その人だって、瑠璃華と同じ気持ちかもしれないのよ。その人は、瑠璃華が今、どんな気持ちかわからないから、話しかけられないだけかも知れないのよ。もし、連絡して無視されても、連絡し続けなさい。なんなら、その人の所まで行って、捕まえてでも話をしなさい」
流石に力づくは、どうかと思うけど……。恵梨香や凛子の言う通りかもしれない。
「あはは。それは流石に、強引すぎないかな……」
「いいのよ。もし、ダメだったとしても、あたし達が、慰めてあげるし。また、別の方法を考えてあげるから、ね!」
「そうだよ……私達は、瑠璃華を見捨てたりしないから……少しだけ勇気を出してみよ。ダメでも……大丈夫だよ。私達がいるから……」
「恵梨香……凛子……」
わたしは、なんていい友達を持ったんだろう。2人には、貰ってばっかりだ……。少しだけ勇気を出すか……。うん! そうだよね! わたしは、遥先輩とお話がしたい! また、楽しくお茶とお菓子を食べたいんだ!
「ありがとう。恵梨香、凛子。わたし、少しだけ勇気を出してみるよ」
「や~っと。いつもの調子に戻って来たんじゃない。頑張って!」
「ふふ……いつもの瑠璃華が好き……だから、よかった。頑張れ……」
「うん! 食べ終わったら、メッセージ送ってみるよ」
「そう、ところで瑠璃華、食べ終わったら寝なさい。あたしが、時間になったら起こしてあげるから。流石に、今の状態じゃ不味いでしょ」
食事を終えたわたしは、遥先輩にメッセージを送った後、少しだけ眠るのであった……。
『遥先輩、お話があります。今日の放課後、生徒会室に伺いますので待っていてください』




