15話 それは、突然に……
『Stella』に行った日から数日後。
いつものように、学園生活を過ごしているわたしですが。ハルと遥先輩に対する疑問に、いまだに答えが出せないでいます。流石に、遥先輩に聞くこともできません。
それに、最近、遥先輩の態度も少し変に思います……。何か言いたげな感じがするんですけど、どうしたんでしょうか? 体調が悪いのか聞いてみたんですけど、違うみたいですし少し心配です。
悩みがあれば、相談に乗ってあげたいんですけど、私では力不足なのかもしれません。一体、どうしたらいいんでしょうか……。
「るーりか! どうしたの? お昼だよ、一緒に食べようよ」
恵梨香と凛子が、わたしの席までやって来た。気づけばもうお昼時間じゃん! 授業、全然聞いてなかった……。後で、恵梨香か凛子にノートを借りよう。
「うん、いいよ」
「なになに。どうしたの瑠璃華? なにか悩みがあるなら、お姉さんに話してごらんなさい」
「瑠璃華……話してごらんなさい……」
2人は、少し色っぽくそう言ってきた。
「あはは! なにそれ2人とも、変なの~」
「変ってなによ。折角、瑠璃華が話しやすいように、場を和ませようとしたのに」
「だって。恵梨香は、お姉さんって感じしないし。凛子の方が、お姉さんって感じするよ」
「ふふ、瑠璃華。少しは……元気になったかな?」
どうやら、2人なりの気づかいみたいです。わたし1人で悩んでも答えは出ないと思うし、少し相談してみようかな……。
「実はね……最近知り合って、よく話している人がいるんだけどね。その人がわたしに何か話したそうにしているんだけど、話してくれないし……わたしも、その人に聞きたいことはあるんだけど、少し聞きづらくて……どうしようかな~って」
わたしが、そういうと恵梨香は、うーんと少し考えてから、話し出した。
「その人にも、話しにくい事情とかがあるかも知れない訳だし、無理に問いただしたり、聞いたりしないで、その人が、瑠璃華に話す決心がついた時に瑠璃華は、その人の話をちゃんと聞いてあげればいいと思うよ」
「そ、そうなのかな……」
「あたしは、そう思うけど。それと、瑠璃華が聞きたいことが、その人が話したいことかも知れないし。もし聞くのであれば、よく考えて聞くか決めた方がいいよ」
うーん……確かに、そうかもしれない。遥先輩がわたしに話したいことがあるなら、その時にわたしは、ちゃんと話を聞いてあげればいいんだ……。わたしが、聞くことって大体、答えに困っていることしかないし。今は、わたしから何か聞くことはやめて、待つことにしよう。
「そうだね、恵梨香の言う通り、その人が話してくれるのを待つことにする。恵梨香に相談してよかった」
「瑠璃華の力になれたのなら、良かったよ。あたし、よく人の相談に乗ってるからね。困った時は、相談してね。じゃあ、お昼食べようか」
この後、お昼を食べてから、恵梨香と凛子と話をしました。
◆◆◆
そして、何事もなく放課後になりました。
恵梨香と凛子は用事があると言うことなので、わたし1人です。
わたしは先生に、用事を頼まれてしまいました。その用事が思っていた以上に時間が掛かってしまい。わたしは、教室に荷物を取りに行くために、廊下を歩いています。
わたしが、廊下を歩いていると、階段の方から……。
「瑠璃華さん、こんな時間まで何をしていたんですか?」
「あっ! 遥先輩。わたし、先生に用事を頼まれまして、それが思っていた以上に時間が掛かってしまったんです」
階段を降りている途中の遥先輩に会い。わたしは、この時間まで学園にいた理由を説明しました。
「そうなんですか、それは大変でしたね。あっ! そうです。途中まで、ご一緒しましょうか」
そう言った、遥先輩は、階段を降りる速度を上げたその時……!?
「きゃ!?」
遥先輩は、階段を踏み外してしまいました。
「遥先輩!」
わたしは、落ちてくる遥先輩を受け止めようと急いで駆け寄ります。お願い! 間に合って!
「きゃ!?」
「うわ! いてて……はっ、大丈夫ですか! 遥先輩!」
なんとか、遥先輩が床にぶつかる前に、遥先輩と抱き合うような形で受け止めることに成功した……。まぁ、受け止めたというべきか、下敷きになったというべきか……ですが。わたしが、遥先輩を受け止めた時、床に何かが落ちた音がしたような気がしましたが今は、遥先輩にケガがないか確認しないと!
「遥先輩! ケガは、ありませんか?」
「はい……大丈夫です。あっ! すいません。今直ぐ、瑠璃華さんの上からどきますので」
そう言うと遥先輩は、わたしから離れようとした。その時……遥先輩の顔を見てわたしは、驚いてしまい言葉を漏らす……。
「えっ……ハ、ハル……」
「瑠璃華さん……今……ハルって……はっ!?」
わたしの目と鼻の先には、ハルがいた……。どうやら、先ほどの音は、遥先輩のメガネが落ちた音だったようです。
「あ、あっ……」
顔に手を当て、メガネが無い事に、気づいた遥先輩の顔色が、みるみる青くなっていきます。遥先輩は、起き上がり落ちているメガネを拾い上げ、かけました。
「あ、あの……遥先輩……」
わたしが、話しかけると遥先輩の体がビクッと震えました。
「ご、ごめんなさい……」
絞りだすようにそう言った遥先輩は、今にも泣きそうな顔をして、わたしに向って頭を下げた後、走り去ってしまった……。
「あっ! 遥先輩! 待ってください!」
わたしの声が、廊下にこだまする……。残されたわたしは、もしかしたら……っと思っていたことが、現実であったことに驚き、廊下に立ち尽くす……。
まさか、わたしが通っているメイド喫茶の推しが遥先輩だったなんて……。




