13話 瑠璃華の休日。深まる疑問……
繁華街で、遥先輩を見かけた日から数日後の日曜日。わたしは、バイトが休みなので、お昼前まで安らかな睡眠を堪能していた。あ~このまま、永遠に日曜日だったらいいのにな~。そう思っていても、時間は過ぎ去るものなんですよね……。
あともう少し眠っていたかったけど、目が覚めてしまったものはしょうがない……。わたしは、大きな欠伸をしながら、ベッドから起き上がる。
今日は、なにをしようか。とりあえず、『Stella』行くのは決まっているけど……まぁ、『Stella』でハルとお話しながら、考えるとしよう。わたしは、『Stella』に向かうために、準備をして家を出た。
◆◆◆
『Stella』に到着し、わたしは、いつも通り注文をして、食事と食後の紅茶を楽しみながら、ハルがやって来るのを待っていた。しばらくすると、ハルがやって来た。
「瑠璃華お嬢様、お話しませんか?」
「はい、よろんで。わたし、ハルに聞きたいことがあるんですよ」
「き、聞きたいことですか? 私で答えられることであればいいのですが……」
そう言う、ハルにわたしは、気になっていることを、聞こうと思っていたのです。
「聞きたいことって、言うのはですね。ハルは、春町遥と言う人を知っていますか?」
「は、春町遥……ですか……。はい、勿論存じ上げています……」
もの凄く、歯切れが悪いんですけど……。なんか、わたしが質問すると遥先輩もハルも歯切れの悪い返答してくるような気がするんだけど! でも、質問したからには、聞くこと聞かないと……。
「あの……瑠璃華お嬢様。どうして、そのような質問を?」
「実は、数日前に友達と遊びに行った時に、繁華街で遥先輩を見かけまして。その時に『Stella』やわたしのバイト先のお店のある通りに、入って行くのを見たので、もしかしたら、このお店に来ているのかな~と思いまして」
「なるほど……。は、遥さんがこのお店に来ることはあったと思いますが、その日に来たかは存じ上げないですね……」
そうなんだ、遥先輩もこのお店には、来ているんだ。でも、なんであんなに歯切れが悪いんだろう……。もしかして、仲が悪いとか相性が悪いのかな……。
これは、何か話題を変えた方がよさそう……そうだ! 加恋さんの話をしよう。思えば、わたしはハルにバイトの話はしてたけど、加恋さんに会った話はしてないや。このお店の店長だし、話の話題としては、問題ないと思う。流石に大丈夫だよね……。
「そうなんですか、遥先輩もこのお店に来たことあるんですね。あっ! そう言えば、もう2週間ぐらい前のことですけど、『pâtisserie AMAI』で面接をした時に、加恋さんに会ったんですよ。ハルに話そうと思っていたんですけど、忘れてましたよ。あはは……」
「加恋店長ですか。そういえば、店長が経営していたお店の常連さんに会ったと聞いていましたけど、瑠璃華お嬢様のことでしたか」
「そうなんですよ、お店が無くなってどうしているのかとても心配してて、会うことが出来て嬉しかったですよ。でも、まさか面接した直ぐ後に、会えるとは思っていませんでしたけど」
「ふふふ、それは良かったですね」
「はい。それにお店が無くなった理由も知ることが出来ましたし。まさか、このお店で店長をしているとは、思ってもいませんでしたよ」
「そうですか……。瑠璃華お嬢様は、理由を聞いてどう思いましたか?」
「どう思った、ですか?」
なんで、ハルはそんなこと聞くんだろう? ハルは関係ない話だと思うんだけど……。
「そうですね……まさか、経営が苦しかったとは思わなかったので驚きました。でも、遥先輩のお母さんが、お店をいい条件で買い取ってくれたそうですし。それに、加恋さんを、このお店の店長に誘ってくれたと聞いて、嬉しかったです。加恋さんも、わたしと同じでメイド大好きですからね。だから、メイド喫茶を経営していたわけですし」
「そ、そうですか……」
「あと、こういう事は、あまり言っちゃいけないと思うんですけど。あのお店が無くなってしまったから、この『Stella』というお店に来ることが出来た訳ですし。ハルともこうしてお話することが出来るんです。まぁ、加恋さんも後悔していないようでしたし。わたしも、今がとても楽しいですから」
わたしが、そういうとハルは、優しく微笑んだ。
「そうですか……今が楽しい……ですか、私も瑠璃華お嬢様とお話しできて楽しいですよ。これからも、楽しくお話しできたらと思っておりますよ」
「えへへ、ハルにそう言って貰えて嬉しいです」
この後も、ハルとのお話は続きましたが、長居しすぎるのもいけないので帰宅しました。
ベッドに横になったわたしは、ハルとのお話で疑問に思ったことを考える。
ハルは、遥先輩のことを話題に出すと、話しづらそうに言葉を選んでいる感じがします。
それに、遥先輩のことを知っているのに、遥先輩について聞いてきて、わたしが話した遥先輩の印象に対しての反応も変でした。
遥先輩も『Stella』について、聞くとこちらも話しづらそうでしたし……。他にも、色々と気になることが今までにありました……。
そして、わたしは、ハルと遥先輩と話している時、別人と話している感じはしませんでしたし……もしかして、ハルと遥先輩はもしかして……いやいや、そんな出来た話があるわけないでしょう。
世の中には自分に似た人が、3人いるっていいますし、そんな感じのヤツでしょう……うんうん、そうに違いないですよね……。




