後編
同じ教室で女生徒を見かけた。
最初は、特に気にする事も無く、クラスメイトの一人としか知らなかった。
でも、直ぐに彼女は変だと分かった。
普通の人と違う。
彼女は花が好きで非常に詳しかった。
あの地味な男子と話せる位に知識があった。
それは、彼女が花が見えるからだ。
その花は普通の花ではない。
その人の心に咲く花である。
彼女と両親の話をしてる時に分かった事は、彼女の最初の記憶は家族の団欒であった。
彼女の母親の心の花が咲いたのは、ムスカリの花であった。
花言葉は、「失望」「失意」
彼女の父親の心の花が咲いたのは、チューベローズの花であった。
花言葉は、「官能的」「危険な快楽」「危険な関係」
彼女の父親は別の人と不倫関係になり、母親はそれに気づいていたという。
結論からすれば、彼女の母親と父親は離婚せずに居る。
母親にバレてる事を知った瞬間に不倫相手と別れ、母親はそれに満足して許したのである。
ムスカリの花言葉に、「明るい未来」「通じ合う心」「寛大な愛」
彼女の普通では無い事を気づいた瞬間に、観察対象として興味が湧いたから、彼女と同じ園芸部に入った。
彼女の部活生活は楽しい時間であった。
だが、徐々に憂鬱の時間になっていった。
その原因が、同じ部活の女子と男子と地味な男子の人間関係であった。
悩んでる時に彼女は中学生の時の思い出を振り返っていた。
男子と女子が付き合う場面である。
その時の男子の心の花が咲いたのは、サクラソウの花。
花言葉は、「少年時代の希望」「初恋」
そして、女子の心の花が咲いたのは、赤いつつじと白いつつじ
花言葉は、赤「恋の喜び」白「初恋」
2人は初恋同士で付き合ったのである。
高校生になった2人は成長した。
女子の心の花が変わったからであり、恋の感情を捧げる相手が変わったからである。
彼女の心の花の見え方は、人が誰かに対して強い感情を抱いた時に、それに相応しい花が咲き、咲いた花を相手の心に送るのである。
人の感情は変わりやすい、その都度で送る花が変わるのである。
そして、ある時に女子の花が咲いた。
プリムラ・ジュリアンが咲き、男子に送られた。
プリムラ・マコライデスが咲き、地味な男子に送られた。
プリムラ・ジュリアンの花言葉は、「青春の喜びと悲しみ」
プリムラ・マコライデスの花言葉は、「素朴」「気取らない愛」「運命を開く」
女子は男子が嫌いになった訳ではなかったが、恋と呼ぶには情熱は無くなり、かつての青春だと認識してしまった。
そして、地味な男子に対して好意を抱く。
男子は気づいてたからこそ、黄色のストックの花が咲いた。
花言葉は、「さびしい恋」
あぁ、切ない。
愛しい人の心変わりを隣で肌で感じるのであった。
女子との心の距離も開いていき、時間と共に男子よりも地味な男子と親しくする様に、男子の心は傷だらけにされてしまった。
それ故に、男子は黒の薔薇の花をひらかせてしまった。
黒の薔薇の花言葉、「憎しみと恨み」「決して滅びることのない愛」「あなたは私のもの」「あなたを呪う」
男子は咲かせてはいけない花を咲かせてしまった。
蕾の状態ならば良かった...。
だが、男子は花をひらかせてしまった。
男子は自殺未遂を発生させた。
遺書等何も残さずに死ぬ気であった。
人と深く関わらずにいようとしてた彼女には大事件であった。
心が荒れていくのを実感してたが、怖くて特別にどうする事もなく放置をしたのであった。
俺自身も何もしなかった...。
これは俺と彼女の後悔である。
人と関わるのを怖がっていたせいで、知ってる事実から目を背けた。
男子が自殺未遂をして、初めて女性は如何に自分が傲慢だったのかを知った。
男子が目覚めた頃、死ねなかった事に対して悲しんでいた。
今までと違い、女子が自分に対して心配の言葉を掛けていた。
男子はその言葉を受け取り、別れの言葉を発した。
女子は何故と問いかけた。
女子は男子を愛してると言葉を伝えた。
だが、届かない。
そんな、2人の攻防が続いていた。
彼女と俺は後悔から学び、少しずつ人と深く関われる様に努力をし始める。
男子は女子を未だに愛してる。
それでも、心を裏切られ続けた事によって信じられないのである。
俺は女子に男子に届きそうな言葉と言い方をアドバイスした。
彼女は男子に女子の変化を伝えていた。
時間を掛けて、2人の心の距離を縮めた。
でも、男子が女子を信じるきっかけを作ったのは地味な男子だった。
地味な男子は、女子を嫌ってはいなかった。
だが、恋愛ではなかった。
地味な男子は、常に花を咲かせていた。
黄色のチューリップ
花言葉は「望みのない恋」「報われぬ恋」
地味な男子は女子と男子の苦しみを望んでいなかった。
女子が自分に好意を持つようになったのは、薄らと自覚していた。
だが、突き放せなかった。
その結果が、男子の自殺未遂であった。
地味な男子は酷く取り乱し、そして悲しんだ。
女子が男子の偉大さを自覚して、愛を知ったのを気づいた時、地味な男子は女子を応援していた。
中々、届かずに悲しんだ女子を辛く見つめる事を見かける事は多々あった。
ある時、地味な男子はある告白を男子にした。
そして、女子は一瞬、僕に恋をして心の浮気をしたけど、女子が愛したのは君だけだったと告げた。
色んな言葉を尽かされた。
女性の言葉はうけとめきれず、俺の言葉を入ってこなくて、彼女の言葉も信じられなかった。
だが、地味な男子のとある告白と女子が男子に対しての感情を話したら、全てがスっと胸に入った。
受けられなかった言葉全てが不思議と入れた。
そこから、直ぐに距離を縮める事は難しかったが、ちょっとずつ前進していった。
何故、地味な男子の言葉が響いたのだろうか...。
それは、本人でさえも明確には分からなかった。
俺が何故、彼女の秘密を知ったのか...。
彼女の心の声を聞いていたからだ。
彼女は普通と違う。
だが、俺も普通の人と違う。
興味本位で、彼女の他人に対して心の覗き方を観察していた。
俺も彼女も一緒である。
他人にこの変なのをバレて欲しくない。
だから、人とは当たり障りのない関係を築いていた。
その為には、見ないフリをしなければならない。
その人にとって、幸せであろうと不幸であろうと干渉してはならない。
普通は人の心が聞こえない、見えないのは当たり前だが、気づかれた心には敏感だ。
だから、関わってはいけなかった。
壊れかけていったのを知った。
俺は悲鳴を聞いてた。
彼女は悲鳴を見てた。
それでも見ない振りをしてたら、人が死ぬ所だった。
それではいけないと感じた。
俺と彼女は人の心が分かってしまうからこそ、声に出して伝えなければならない。
ずっと、スルーしてた男子の心を聞こうと思って関わろうと努力する。
男子は女子を信じてなかったが、心の奥底に小さく信じたいと願っていたからこそ、上手くいくように、俺と彼女の変な所も活用して、心を拾い上げるようになった。
まだ、直ぐにとは言わないが俺と彼女は待っている。
男子の情熱的な花がひらくのを