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王女は理想のために魔王のところへ行き勇者抹殺の計画を企てる  作者: 怠惰
とにかく王女様は計画して行動する
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計画9

会議室では皆さん(私も含め)がソワソワしています。勇者の仲間選考会、1枠を奪えるか。今後に重要な事になってくる案件です。おそらくはかなり低い倍率、その中で私達はたった2人に祈るしかありません。しかし、勇者の仲間です。強い力が求められる、その点魔物である2人はそこらの人間には、そう簡単に劣らないはずです。望みを持つのです。


「結果の連絡が来た」


その言葉に、全員が耳に神経を集中させる。


「スパイ計画は」


お願いします、成功と…。


「上手くいきました」


その言葉に全員が歓喜する。私もやる気が漲る。


「どちらの方がスパイに?」


「王女の予想はハズレ、シラーが選ばれました」


なんですって、それは予想外ですね。まぁしかし、スパイは送れたので良いでしょう。


「何故、カルではなかったのか…」


「気になるんですか?」


「うむ、少しな」


変なところを気にしますね、まったく。カルが選ばれなかった理由ですか…。


「トラウマ…ですかね?」


「トラウマ?」


「ええ、私は最初この選考では騎士隊長のような人が、選ばれるかもしれないと思っていました。しかし、結果は似ていない大人しいシラーさんでした」


「ああ、それで?」


「騎士隊長は面倒見が良く、気さくな明るい方でした。敵相手には真っ直ぐに一撃をと、愚直な感じでもありましたね。勇者は今回守られました、その隊長に。似てると感じた時、死なせたくないと思ってしまったら、魔王討伐の旅という危険な事に連れて行くと思いますか?むしろ、遠ざけたいと感じるでしょうね。しかし、一方シラーさんは、冷静さを持ち頼りになる大人な雰囲気を持っています。この頼りになるというのは、カルさんの持つ兄貴肌の頼りになるではなく、大人の余裕という貫禄みたいなものでしょうかね。それに、トラウマを持っているとはいえ、少しは大人、年上に頼りたい気持ちはあるはず。そうなるとカルさんよりもシラーさんの方が適任だったのでしょう」


「なるほどな、人間は面倒だな本当に」


「ええ、本当に面倒な感情を持っていますよ」


「それでは、残りの3人はどうしますかねぇ?」


「3人には遠くからの勇者達の妨害行為やスパイ行為をしてもらいましょう」


「そうだな、そのまま後をつけてシラーのカバーもできるだろう」


これで、スパイ計画は成功だ。あとは定期的に連絡を受けるだけでいい。


「では、改めて新しい計画です。勇者はきっとリベンジをします。ゴブリンキング達にです。そこで大変言い難いのですが、あの方達には犠牲にになってもらいたいと思います」


会議室の空気が凍った。よく凍りますね。


「…王女よ、それはどういうことかのぉ?」


「そのままの意味です、ゴブリンキング達にはなるべく無抵抗気味に死んでもらいたいのです」


そう言った瞬間、私は魔王に首を絞められた。


「貴様!その言葉を、意味を分かってて言ってるのだろうな!」


激昂してる魔王が睨みつけてきますが、私は動じずに見つめ返しました。


「ッ!」


ダン!


魔王に床に投げ捨てられ、少し腕が痛みますが、まぁ良いです。それだけの事を言っていますからね。私は立ち上がり、再度話を始める。


「勇者の強さを皆さんはもう知っていますね?」


そう聞くが誰も反応しない。


「勇者はこれからも強くなっていきます。もちろん、その仲間もです。前回、計画が失敗し勇者に大群との戦闘をさせてしまい余計な経験をさせて、プラスの効果を出してしまいました。では、今回は?前回、体験した物量より少ない魔物達。余裕で対処されるでしょう。そしたら、勇者はザザールやシスターのカバーまでできてしまいます。するとどうでしょう、勇者の仲間2人も経験を積む事になります。じゃあ、どうしたらいいのか?とても酷い話ですが、何もしないこれが、正解なんです。無駄に相手を強くするわけにはいきません」


「他の方法を探すぞ…今いる住処を放棄したり…何かあるはずだ」


「いいえ、意味がありません」


「理由は!」


「お聞きしますが、今回その計画を実行したとして、次はどうするのですか?」


「次?」


「はい、次です。勇者達は魔物達をドンドン倒していきますよ?その度に住処を放棄させるんですか?」


「…ああ」


「では、放棄させ何処に行かせるのでしょうか?」


「それは…」


「ここは無理ですよね?場所が遠いですから、何処に逃げるあてはあるのですか?」


「ない」


「毎回毎回、勇者に襲われては逃げる。そんな事をしてはなんの意味もないんですよ。むしろ、逃げた場合執拗に追いかけどのみち何処かで戦う羽目になるかもしれません。もし、その場所が他の魔物が居る場所だったら?被害は拡大ですよ。それならば、一回一回その場でわざと倒されて、勇者達に強くなったと誤認させる方が有益なんです。犠牲になってもらいますが、その犠牲は無駄ではありません。決して」


「しかし、そんな事をしていたら魔物達は…」


「ええ、多くの犠牲者を出しますね」


鋭い視線が私に向く。しかし、言わねばならない。


「今やっているのはなんですか?魔族の皆さんは、人間に宣戦布告をしました。戦争です。人間同士でも、戦争は起き犠牲者は多く出ます。なのに、貴方達は何の犠牲も無しに戦争をしようと?それなら、とっととやめて下さいこんな茶番は。そして、自分達の領域で一生涯暮らしててください。今やっているのは、命の駆け引きです。少しのミスで多くが死にます。その中で、なるべく犠牲者を出さないようにと考えながらも計画を立てているんです!まだ、私に文句があるなら言ってください!覚悟が無いのなら早くおっしゃってください!今ならまだ被害は少ない方ですよ」


全員が沈黙する。一言も何も話さない。さっきまで睨みつけてきた視線も、下を向いている。どうなんですか、あなた方の覚悟は…。


「王女、お前は覚悟があるのか?」


魔王が話しかけてきた。私に覚悟ですか?


「ええ、ありますよ。だからこそ人間の王女であるはずの私は、今ここで同族を裏切り、母国を裏切り、親を裏切り、魔族の手伝いをしているのです」


「何故そこまでできる」


「言いませんでしたか?私の未来のためです。そのためならば、私はどんな覚悟もします」


魔王はこちらを見て黙ったが、すぐに。


「ゴブリンキングには伝えておく、我々魔族は絶対にこの世界を征服する」


そう言って退出した。皆さんの顔も何かを決意した顔になっていた。


森にて。


「そういうわけだ、頼む」


魔王様からの心痛なお言葉が聞こえる。しかし、俺には覚悟ができてる。


「魔王様、任せてください。俺らは勝つためなら死ぬ覚悟なんて、とっくにできてますよ」


「絶対に勝つからな」


「あの世から応援しています」


ガチャ。


「おい!お前ら行くぞ!」


「「「「「「「オー」」」」」」」

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