計画8
無い、無い無い無い無い無い無い無い無い!
あれからしばらく本を読み漁っていますが、なんの収穫もありませんわ。それに、なんでしょうかね…たった1度、計画が失敗しただけですのに私は何故こんなにも不安感が収まらないのでしょうか。あの時の勇者の戦いを見て、理性ではなく、何か本能的な部分で無理とでも感じているのでしょうか。結局、勇者には大群との戦闘行為をさせてしまい、かなりの良い経験になってしまいました。怖い、あの男がとても怖い。たしかに計画に、甘かった部分も有りました。しかし、それでもあの惨状を作り出せる勇者の運なのか、実力なのかそれが恐ろしくてしょうがありませんわ。私は絶対に認めたくない、あんな未来は。だから、勇者を抹殺する。計画も立てる。でも…あの男には全部、無にされてしまうのでは?という思考が離れない。たった1度の失敗だけで、私はこんなにも弱かったのでしょうか。
思考が悪い方へと向かっている最中に声をかけられた。
「王女さん、至急会議室へ。魔王様達がお呼びです」
「わかりました」
呼びに来た魔物に返事をし、会議室へと急いで向かった。何か動きがあったのだろう。
会議室。
「皆さん、何がありました」
会議室に入ってすぐに何が起きたかを聞く。
「勇者の演説」
「演説ですか」
「おそらくぅ、仲間の話もするかとぉ」
全員で画面を見る。勇者が映し出された。
『国の皆さん!今日は悲しいお知らせがあります!この国の騎士団の隊長であり、俺に剣の事を教えてくれた師匠、そして仲間となってくれたギムさんが死にました!』
街の人達から騒めき声や泣き声が聞こえてくる。まぁ、たしかに良い人でしたからね、あの人。
『俺を庇って…死にました。最後まで勇敢な姿を俺は忘れません!』
今思ったのですが、何故庇ったのですかね?勇者は死んでも蘇るのに。うーん、あ!大群をどうにかできるのが勇者だ!と思って自己犠牲を?まったく、知恵の回る奴でしたね。
『ここに誓います!俺は絶対に魔王を倒し、この世に平和を取り戻す事を!そして、ギムさんが心配していた王女様は、必ず無事に救ってみせる!』
歓声が凄いですね。あれも勇者効果ですか?ていうか、騎士隊長…心配してくれていたんですね。そういえば私は王女でしたものね。
それにしても、勇者。この世に平和を取り戻す!なんて平気でよく言えますね。貴方この世界に来てそんなに経って無いでしょう?世の中がどんな風なのかもよく知らない、他国との関係性、貴方が魔王をもし倒した時、最悪ですが私の夫になり王になりますが…そんな王としての知識はあるのでしょうか?無知な王は国を滅ぼしますよ。それとも、勇者の威光で乗りきれるとか考えてるんでしょうか?本当に、こんな奴との未来なんて、考えたくありませんわ。
「勇者は仲間の募集はしないのかのぉ」
「うむ、それを期待していたのだがな」
そうだ、こんなどうでも良い演説さっさと終わらせて、仲間の欠員が出たことを言って募集を早く話しなさい!
『もう1つ、知らせたい事があります!ギムさんが亡くなり、仲間が1人足りません。なので募集します!腕に自信のある方は審査をしますので、城に来てください!お願いします!俺達と世界を救いましょう!』
そう言って勇者は引っ込み、その後は私の父が出たので画面を消した。
「やはり、4人体制は変わりませんね」
「そのようだな」
「シフターさん達の中で最も前衛が得意な方を選びましょう。送った中4人で何人が?」
「2人」
「その2人のデータはありますか?」
そう言うと資料を渡された。
シフター族
名前 カル
性格 明るい
得意な武器 両手剣
参考 調子に乗りやすい。兄弟がおり、弟を大切にしている。頭脳戦は苦手。
名前 シラー
性格 大人しい
得意な武器 大剣
参考 冷静沈着。周りの状況をよく見て動き、戦闘をする。母親と2人で暮らしており、よく心配している。
「この2人は性別は?」
「シフター族は性別なんて変えれるから、どっちもって答えかな」
「そうですか、では男性で試験は受けてもらってください」
「それは、欠員が騎士隊長だからかの?」
「ええ、男性の方が選ばれやすいかと。それに前衛ですから、あの男の価値観ですと女性は選ばれないと思います」
「そうなのぉ?」
「ええ、以前男が前に立って、カッコつけるのが美学とか変な事を言っていましたので。なんか、女性を守りたいとかなんとか」
「異世界では、そういう風習なんですかな」
「わかりませんが、とりあえず男性でお願いします。それとおそらく他にライバルが居なかったら採用されるのは、カルさんですね」
「なんで?」
「最終判断は勇者がすると思われます。なので、少しでも死んだ騎士隊長に面影があるような人物を選ぶのは、当然かと」
「とりあえず、我は連絡をしてくるぞ」
「ええ、お願いします。カルさんには頼れる兄貴感を出すように言っといてください」
「…絶対本人わからんぞ、それ」
そう言って魔王が出て行った。
数分後。
「やはり、なんですか?って言われたぞ」
さて、選考会はどうなるか。
「選考会は見られないのですか?」
「流石にな…さっきの王都を映したのも結構危ない賭けだったからな」
何それ聞いてない。
「どういう事ですか?」
「いやな?下手したら感知されて、見ている事をバレて…」
「ホーリースプラッシュ」
「グハァ!効くから!王女の魔法結構ダメージ有るから!我、意外に驚いてるから!心の中で、敵じゃなくて良かった。なんて思った事あるから!」
「そんな危険な事するなら、言えって言ってるよな?オツム空っぽ魔王さんよ?良い加減にしねぇと、テメェの席は私の席になるからな?わかったか?」
「すみません」
「とにかく、選考会は見れないのですね」
「我、思うのだが王女の本性を勇者に見せたら結婚なくなるんじゃ?」
「しっ!余計な事言うとまたやられますよ!」
なんかゴソゴソ言っていますが、早く選考会が終わりませんかね。
王都にて。
「どうした?なんか変な顔してるぞカル」
「いや、魔王様に頼れる兄貴感を出せって言われてよ〜。どうすりゃ出せんのかな?」
「…それは、無理に出すものではないぞ。とりあえず、今は選考会に集中した方が良い」
「それもそうだなサンキュー、シラー」
「カル〜助けて、お金足りなくなった。あれ食べたいのに」
「お前なぁ、支給されたお金は大切に使えよまったく。ほら、これで買って食べろよ」
「ありがとう!カル」
「…」
「あー、お前はまた勝手に貰って!すみません。いつもありがとうございます。ほら、お前もお礼言えって」
「ありがとう」
「…そんな感じだな兄貴感」
「なんか言ったか?」




