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王女は理想のために魔王のところへ行き勇者抹殺の計画を企てる  作者: 怠惰
王女はもう一度計画を考えなければならない
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計画68

野営準備中に勇者は目を覚ましました。


「あれ? 俺なんで寝てた?」


「勇者様は魔王の刺客に一撃をくらい、そのまま意識をなくしてしまったのです。体のどこかに異変はありますか?」


「そうだ! 俺!」


馬鹿は自分の体に異常がないか確かめていた。まぁ、見た目にはないでしょうね。これから戦った時に驚くだろうなぁ。


「あと、ここまでザザールさんが運んでくれたのですよ。お礼はちゃんと言ったほうが良いかと」


「……わかった」


渋々ですか。本当に嫌いなんですね。まぁ良いですけれど。


「ベルさん、勇者様の目が覚めたのでまた診察をお願いします。料理は私が代わりますので」


「はい! それでは勇者様の様子を見てきます」


「ザザールさんもお疲れ様でした」


「まったくだ。あれで勇者ってのが信じらんねぇな」


「そう言わずに。勇者様は私を助けようとしてあのような結果になってしまったのですから」


「はぁ。この先どうなるやら」


そう言ってザザールはまた辺りの警戒に戻った。

その言葉は私にも当てはまりますよ。この先魔王はどう仕掛けて来るのですかね。この中に私が居る事により確実に私をエサに使う事はあの魔物の言葉からしてわかりきった最悪の状況。この最悪な状況からの脱却は早くに馬鹿を弱らせてしまう。しかしこれは魔王のタイミングでしかできないから早くもなんも不可能に近い。

ならば毎回馬鹿を盾にするか?変な動きをしていたら私が怪しまれる。だからといって来る魔物に狙うななんて言っても無駄なのはわかっている。

もう、帰ろうかな……。その方が安全な気がしてきた。あの魔王め……。面倒な事をしてくれましたね。


「リーン様、勇者様の診察が終わりました」


「ありがとうございます。それで、何か異常などは?」


「それが……。異常はないようにみえます。私にはわからないのか、それとも本当に異常は無いのか。でもそんな事ってありえるのでしょうか。勇者様は確かにあの時魔物から何かを受けていました。なのに何も無いだなんて」


「勇者様ですから何かしらの加護があった、という事は?」


「そうですね、そうあってほしいです……」


アホに見えて意外と慎重な人ですね。

そういえば前の世界でも私が騙しているのに感づいていましたね。気をつけておきましょう。


「辺りには魔物の気配は無し。それよりも、飯ってまだかな? 腹減っちまったぜ」


「あ、すみません。もうできていますので食べましょう」


食事をしながら馬鹿の方を見るが元気そうである。料理も食欲ないということもなくバクついている。


「リーンの作った料理は美味しいな!」


「いや、あのベルさんも作っていますから。私は最後に少し手伝っただけなので」


「え、あ、ごめん! ベル。えっと、とても美味しいよ」


「ふふっ、ありがとうございます」


「だからお前には……」


「なんだよ、何か文句あるのかよ」


「ないと思ってるお前がスゲェな」


「2人とも食事中なんですから喧嘩なんてやめてください。それに勇者様、まだお礼していないのでは?」


「ぐっ。そのザザール」


「お前を運んだ礼なんていらねぇからな。王女様やベルじゃお前を運べないからしょうがなく運んだだけだ」


「チッ! なんだよ、だったら何にも言わねぇよ!」


この2人はもう無理かもしれませんね。普通なら都合が良い状況ではあるのですが、今後の魔王の予定によってはこのままではかなり私にとっては嫌な状況ですよね。

その後は食事も終わり、警戒を交代しながら寝る事になった。皆が王女様は交代に参加しなくて良いですと言っていましたが、なんとか断りました。やりたい事もありますし。

そんなこんなで今は私が警戒の番です。水晶を取り出して、魔力を流しまして。


「おやおや、まさか連絡をしてくるなんてな。我を殺すと言っていたからもう連絡なぞしてこないと思っていたのだがなぁ」


「ふざけるな。貴方が私に何をしようとしているのかわかっているんですよ。今すぐにやめなさい」


「これはこれは。とてもお怒りなようですな王女様?」


「自分があの馬鹿を弱らせる為に利用されている。エサとして使われている。こんなのは私の理想と違う! むしろこんな事を避ける為に私はあいつを殺そうとしているのに、お前までこの私を利用するのか!」


「そうだな。そう言っていたな。自由になりたいだったか? 我を倒した勇者の報酬扱いに我慢できないとか。本当に人間というのは笑わせてくれる生き物だ」


「何が言いたいのかはっきりしてください」


「お前は我に協力を求めた。その時に全く考えなかったのか? 自分が我に利用されるかもしれない可能性を」


「そんなの……」


「前の世界ではなかったからか? いつまでお前は前の世界を基準に考えるつもりだ。この世界はお前が変えてしまった新しい世界。迂闊に我に情報を教えた。そんなお前にはもうなんにも価値はない。いや正確に言うとお前ができるのは、我の計画を手伝う事のみだ。お前は利用されて当然なのだよ。協力関係? フン! この関係が協力関係だ。我が命令し、お前が従順に答える関係がな」


「絶対に……許さない……」


「お前に何ができる? せいぜい役に立て、愚かな王女よ。フハハハハハハ」

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