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王女は理想のために魔王のところへ行き勇者抹殺の計画を企てる  作者: 怠惰
王女はもう一度計画を考えなければならない
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計画66

「もう本当に大変ですよ。何故こんなに険悪な空気になっているのでしょうかね。少しは他の人のことも考えてほしいものですよ。聞いてますか? 魔王」


「聞いてるよ。むしろどれだけ聞かせるつもりだ? その長話を。というかその話を聞く限りではこちらにとっては好都合だな。そのまま不仲な状況を維持する事を頑張ってくれ」


魔王め、少しくらい私の愚痴に付き合ってくれてもいいじゃないか。こんなにも大変な目にあっているのに。


「まだ続きがあるんですよ。宿で今こうやって通信をしようとしたら突然ですよ? あのシスターがやって来ていきなり勇者と魔法使いのどちらが好きか! なんて聞いてきますし、もう本気で暴れたくなりましたよ」


「いい加減にしてくれ、お前の愚痴係じゃないのだ。我も忙しい、さっさと本題を話すぞ」


メンタルケアのために少し付き合ってくれても、罰は当たらないと思いますよ?むしろ、良い事が起こるかもしれませんよ?

私はぶつぶつと言い足りなさを我慢して、これからの方向性を話す事にした。


「そちらの状況ではかなりの不仲というのはわかった。しかしながら勇者の力は変わらずなのだろう?」


「それはもちろんですよ。なんなら前の世界と違って戦闘をたくさんしているので強くなっているのではないかと。それに、不仲ではありますが連携しての戦いは辛うじてできていますからね。生半可な罠では無理ですね」


「なんとも忌々しい報告をありがとう。しかしだな我々側でも対処法を考えたのだ」


「え、殺す方法はないはずですよ」


「確かに殺す方法は見つけられていない。だが、呪いをかける事はできるだろう?」


「呪いですか?」


「そうだ、呪いだ」


呪いですか。不死性を失くす為に私がやったアレも呪いでしたよね。そのせいで妖精王にこんな面倒な事をさせられているのですから。

そういえば、あの呪いもふざけた呪いでしたね。懐かしい。そして、腹が立つ。


「前の世界の事を話しましたよね? 私がそのような事をしてこんな状態だと」


「覚えている。我々が同じような馬鹿な事をするか。ふん、だいたいお前のそれはしっかりと最後まで確認をしていなかった落ち度による、ただの愚行だろう」


「それで……。その計画はなんでしょうか」


「なに、単純な事だ。勇者を弱体化させることから始めようと思っている」


「何故弱体化を? いくら弱くしても殺すのは簡単ですが、蘇るのは阻止できませんよ? なので弱くする理由がわからないのですが。しかも、前の世界でも似たような事をしていますし」


「簡単に殺すのが大切なのだ」


何を言っているのでしょうか?簡単に殺すのが大切?復活されて結局意味がない行為を永遠とする行為が?


「弱体化はその場限りの呪いではなく死んでからも続く、代々呪われるものをかける。これで勇者が死んで復活しても弱体化の呪いはかかったままだ」


「はぁ」


「では、何故勇者を弱体化し殺すのか。狙いは勇者の精神面だ」


「精神面ですか?」


「人間は弱い。それは肉体的にも精神的にもだ。お前の話を聞いて勇者もそこら辺の人間と同じだと考えた。最後には狂って死んでいく、そんな結果が前の世界。ならばより狂ってもらおうじゃないか! 何度も何度も何度も何度も何度も残酷に殺し! 痛みを何十回と与え、その精神がどんどんと追い込まれていき最後には崩壊させる! 廃人となった勇者なぞ、死人と同じ。殺さずとも、放置しておけば良い。どうだ? 完璧だろこの計画は。我らを邪魔する者がいなくなり、この世界を完全に手中に収められる」


魔王の言う通りになったらあの馬鹿は脅威ではなくなり、イカレタ父はすぐに殺されて人間の住む場所は魔族に塗り替えられるでしょう。あちらこちらで魔物も見られる事になりますね。

しかし、この計画には大切な事が忘れられている。


「魔王、その計画はとても素晴らしいですが大切な事を忘れています」


「何か問題でもあったか?」


「勇者が存在したままという事です」


「別に良いだろう? 先ほども言ったが廃人など殺す価値もない。我の邪魔すら出来ぬくらいに戦う事に対し恐怖心を持たせてやろう」


「違います。私が困るんですよ、勇者が存在していると」


「何を言っている?」


「廃人になった勇者はどう行動するのでしょうか。考えてみてください? 逃げますよね? 現実から」


「だろうな」


「さて逃げるにあたり、1人で逃げますかね? 勇者は貴方達の作戦で恐怖心でいっぱい。誰かと一緒に居たいと必ず思うはず」


「うむ」


「それでは誰と逃げると?」


「お前か?」


「可能性は高いですよ。好意を抱いている相手、戦闘技術が高く、治癒などもできる。魔王が世界を征服しても、生き残る為につかえる人間筆頭ですよ? 無理にでも離れませんよ」


「なら一緒に居てやればいい。面倒でもみてやれ」


「忘れましたか? 私は勇者と一緒になりたくないんですよ。自由に生きていきたいんです。何かの為の道具扱いなんて、嫌です」


「ならその場で勇者を見捨てれば良いだろう。そしたら自由だ」


「それでもし勇者が余計に狂った場合は? 前の世界のようになってしまったら? 私も貴方も終わりですよ」


「ではどうしろというんだ! 我は貴様の自由なんぞどうでも良い。ただ邪魔な勇者を排除できればな。そう、我らは別に殺さなくても問題ないのだ。お前だけなんだそのような勇者を殺したいという面倒な思考をしている奴は!」


「弱体化結構。しかし、消滅させる方法も見つけてください」


「それができないぬからこの計画を立てたのだ。ふざけるなよ」


「では、私とは協力関係をやめると?」


「何故お前の面倒まで考えて、勝機を逃さねばならない?」


「そうですか……。とても残念です」


「2度とお前と通信する事はないな」


魔王が通信をやめようとする前に私は声をかけた。


「そしたら私は私の考えた方法で勇者を殺すしかないのですね」


「ああ、勝手に頑張れ。無駄な努力をな」


「魔王……。勇者を殺す方法はたった1つだけ、あるんですよ……」


「デタラメだな」


「本当です。絶対に殺せます」


魔王は私の言葉の空気が今までと違うのを感じたのか、その方法を聞きたそうにしている。


「そんなに聞きたいんですか?」


「何故知っていてお前がやらぬ」


「そうですね。私も甘いところがあったって事ですかね。勇者を殺したいと思っていてもこの方法は……。なんて考えていたのかもしれませんね」


「言え、なんだ? 勇者を確実に殺す方法とは」


私は目をつぶって深呼吸をし、そしてその方法を魔王に告げる。


「魔王、私は貴方を殺します。そしたらその後に勇者を殺す事ができますから」


魔王は驚き固まっていた。

この後になんて返事をしてくるのだろうか?考え直し、一緒に勇者をどうにかする方法を考える?それとも……。

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