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王女は理想のために魔王のところへ行き勇者抹殺の計画を企てる  作者: 怠惰
王女はもう一度計画を考えなければならない
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計画56

見覚えのある周りの風景に、聞き覚えのある嫌な声。そしてさっきから私の視界に入ってくる勇者……。本当に私は過去に戻されたのか。


「リーン? 本当に大丈夫か?」


私にこんなに優しい態度で接しているなんて、はぁ。またやり直しをしなきゃいけないなんて。


「ご心配をおかけしました。少しボーッとし過ぎて、すみませんおそらく貧血でしょう」


「ああもう! ビックリしたんだぞ。話をしていたらいきなり倒れたんだからな。よし! このまま俺が抱きしめておいてあげよう!」


「そ、そんな。勇者……様もお忙しいでしょう? たしか、訓練もあるはずでは?」


「俺はこうしてリーンとサボっていたいなぁ」


「それはとても嬉しいです。でも、ちゃんと訓練はしておいた方がいいですよ。その後にまたゆっくりしましょう」


「しょうがないか。リーンのためだし、頑張るか! それじゃ、行ってくるね」


「頑張ってきてください」


勇者が私から離れて訓練場へと向かって行く。ちゃんと笑顔を作れていたでしょうか?久しぶりに鳥肌が……。


「やっと離れましたか。妖精王……本当に過去に戻すなんて。あの話の内容だと同じようにあいつを殺してもまたやり直しさせられそうですよね。面白さってなんですか! どうしたらいいんですか! とにかく最初からなら魔王に会わないと。どうやって魔王と私は会ったんでしたっけ?」


記憶は残すって言われても、忘れていたらどうにもなりませんよね。最初に勇者を殺す理由を話した時、変な目で見られたのは覚えているんですよね。そうだ!なんか手下が私を誘拐しに来るんでした。もしかして、今日?

そんな事を考えていたら声をかけられた。


「クケケケ、お前この国の王女だな? 悪いが魔王様のところへ誘拐させて貰う。抵抗するなよ?」


「来た! そうそう、貴方ですよ! やっぱり今日だったんだ。そうなるとこれからの事しっかりと考えないと。同じ失敗はできませんし、妖精王の望む結末なんてできるのでしょうか……」


「えっと、本当に王女だよな? 叫んだりぶつぶつ言ったりして怖いぞ」


「初めまして、私はこの国の王女であるリーンです。誘拐ですか、そうですか。それでは私は大人しく連れ去られましょう!」


「いや、抵抗とか普通はするだろ。なんでそんな簡単に……。まぁいい、こっちに来い」


「お願いがあるのですが、向こうに着いたらすぐに魔王に会わせてください」


「なんでだよ!」


「事情があるんですよ!」


そんな話をして、なんとか魔王とすぐに会わせてもらおうとお願いをしていたら怒鳴り声が聞こえた。


「リーンから離れろ!」


え?なんでいるんですか?


「くっ。邪魔が入った……いや、なるほどこのために意味不明なことを言って時間を稼いだのか。ここは引かしてもらう!」


「え! いや、ちょ」


勇者の邪魔により、私を誘拐してくれて魔王に会わせてくれる予定だった魔物がドンドンと遠ざかって行く。私の未来が……。

なんで?どうして?こいつはこんな所に来なかったはずなのに!これも妖精王が何かをしたの?


「逃げられたか。大丈夫だった? 怪我はないリーン?」


「ええ。おかげさまで。ありがとうございます。質問があるのですが、よろしいですか?」


「どうかしたの?」


「どうやって私が襲われているとわかったのですか?」


「それは訓練をしていたら突然リーンと別れた場所から、知らない奴の大声とリーンの大声が聞こえたからだよ。何かあったのか! って思って急いで向かったら魔物に襲われているところだったから冷や汗が出たよ」


「そうだったんですか」


そんなに大きな声を出していましたっけ?前回と同じくらいだったと思うんですけれど。やはり妖精王が何かしているのですかね?


「それにしても無事で良かった」


こいつ、いちいち本当に抱きしめてくるのがイライラしますね。この場で心臓を貫いてやりましょうか?無駄ですけど。


「勇者様、私は大丈夫ですから離してくださいよ」


「いや。また襲ってくるかもしれない。訓練場へ一緒に行こう」


最悪だ。魔王に会う機会を逃してこいつと一緒に居なければいけないなんて。


「そうですね。それでは訓練場へ行きましょうか」


どうしたらいい。この状況を、魔王と連絡を取り合うためにはどうすれば……。

私は勇者が訓練をしている最中もずっと考えた。前の世界ともう始まりから違うこの状況でどうやって計画を考えて、準備をし、殺せと?絶対に私1人では無理なのは明らか。やはり、魔王となんとしてでも手を組みたいですね。

そのためには連絡の手段、あとは信用をされなければ……。前回と違ってしまい、あの魔物は魔王に私が勇者側の人間という報告をしているはず。やらなければならない事と考えなければならない事が多すぎる。どうすれば、どうすれば……。


「リーン。どうだった? 強くなっているだろう? 俺もまさかこんなに強くなれるって思わなかったよ。俺のいた世界じゃ考えられないぜ」


「そうですね。勇者様はとても頼りになります」


「ああ! 俺がこの世界を救ってみせるからな」


本当に面倒な奴ですね。お気楽な。こっちはそんな余裕が無いのに。


「そうだ。今度森へ魔物討伐に行くんだ。そこでどれだけ実力がついたか試すんだって」


「はぁ、それは私も心配です……!」


森の魔物討伐!これですよ!あるじゃないですか!


「勇者様。その討伐にはお1人なのですか?」


「違うよ。募集をしてその人達何人かと師匠のギムさんだよ」


「お願いがあるのですが」


「いいよ! 何かな?」


「私も一緒に同行させてください」

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