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王女は理想のために魔王のところへ行き勇者抹殺の計画を企てる  作者: 怠惰
とにかく王女様は計画して行動する
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計画54

「もしもし? 大丈夫ですか? 私の声は聞こえてますか?」


あれから数十分間話しかけてみたものの、ブツブツとうずくまって気味の悪い物体になってしまった勇者。

魔王からの連絡もまだきませんし、どうしましょうか。このままだったらたしかに安全なのですが、不気味で戻る時にこれに触りたくないんですよね。


「勇者さん。何をブツブツ言っているんですかぁ? 話したら楽になるかもしれませんよ?」


「……だ」


「なんて言いました?」


「全部お前が悪いんだ! お前さえいなければ、お前が俺を呼ばなければ、こんなに苦しむことはなかった! 俺の人生をめちゃくちゃにしたのはお前だ、絶対に殺してやる」


うわ!突然キレた。情緒がもう不安定過ぎでしょ。これからどうやって逃げますかね。


「さぁ、死ね!」


「危ない! 本気でもう殺すことしか考えてないみたいですね」


「お前みたいなのがいるから世の中が悪くなるんだ」


「暴論も過ぎませんか? というより貴方は私を殺した後どうするつもりなんですか?」


「この世界で自由に生きる」


「この世界では人間と魔物の仲は良好ですが? それは大丈夫なんですか?」


「別にそのくらい我慢してやる」


もうすでに、散々殺しているのに何故そんなことが言えるのですかね。


「そうなんですか。我慢できるんですか。しかしですね、この世界の魔王は我慢できないと思いますよ? というより怒っている、いえ頭を抱えている?」


「なにを言って」


「私、色々あって優しい魔物に助けてもらいましてね。もうこの世界で活躍している魔王様とお話をしているんです」


「は?」


「私がどこから来たのか、勇者がどんな存在なのか、それはもう色々話しましてね? この世界の魔王様はさっさと貴方の行動を見ましたよ」


「……」


「もうビックリしてましたよ。魔物を殺している姿! でも私の話を聞いていたので勇者とはそういうものと思っていたら次の瞬間に……その魔物と仲良くしていた人間まで殺していましたよね」


「だから、どうした」


「言ってましたよ。こんなヤバいやつは認めないって。残念ながら貴方にこの世界での居場所はありません」


「この、クソがァァァ!」


激昂した勇者が突っ込んで来ると同時に、頭の中に魔王からの連絡が入ってきた。


『準備完了。いつでも大丈夫』


ようやく準備ができましたか。そしたらあとは私が頑張ってこの勇者をなんとか捕まえるだけですね。

勇者の振り下ろしてくる剣を避けながら、なんとか懐に入ろうと様子を伺っているのですが……。


「死ね! 消えろ! 俺の邪魔をとことんしやがって、疫病神が!」


しょうがありませんね、多少の怪我は覚悟して!


「隙あり!」


「なにをしやがる! 離せ!」


私は一気に勇者に抱きついた。殴られていますが気にしていられません。


「今です! 転送をお願いします!」


そう私が大声で叫ぶと勇者ごと魔王達の前に転送された。そしてその瞬間におもいっきり殴られて私は勇者から離れてしまった。

しかし、これで計画はもう完了したようなものです。


「な! 貴様はあの時の魔王か!」


「よくも面倒に巻き込んでくれたな、勇者よ。まぁしかし、その面倒で異世界の魔王と交流ができたのだ。少しは感謝してやろう。そして、お前は死ぬのだ殺される相手の名前くらい教えてやろう。我はガドだ。そしてこの世界の魔王は」


「俺はギルス。よくも俺の世界で少し暴れてくれたな? 覚悟しろよ」


そう言った2人の魔王達から魔力の拘束技が出て、勇者は身動きが取れなくなってしまった。


「離せ! 俺はこの女に騙されていただけだ! 何も悪くない。全部全部全部全部全部全部全部全部全部! この女が悪いんだぁぁぁあ!」


「うるさい奴だな。おい、王女さっさと始めろ」


「わかっていますよ」


私達は勇者を引きずりながら門の前に行く。私は何か変なところがないかパッと見たが大丈夫なようだ。


「これは俺が壊したはずじゃ……」


「ええ、貴方はちゃんと壊してましたよ。だからこちらの魔王ギルス様に手伝ってもらい、急いで作り直したんですよ。元の世界へと帰るためにね」


「なるほどな、俺をまだ元の世界へと帰して終わりにするつもりか」


「勇者様。この異世界の門はまだ完成していないのです」


「ざまぁねぇな」


「重要なものが必要で」


「揃えられないですってか!」


「いいえ、今揃いました」


「あ?」


「完成には最後に人間の魂を使うんですよ」


「……まさか」


「勇者様、元の世界に帰らなくてもいいんです。生贄になってもらいます」


ふざけるなぁ!という勇者の叫び声が響く。

魔王達は勇者を拘束し続ける。

死にたくない!と勇者は泣く。

私は門への生贄の呪文を唱える。

なんで俺がこんな目にと勇者は落ち込む。

私達はそれを無視する。


「お前達……呪っ」


勇者は最後に私達へと言い残そうとしたが、その前に私の呪文が終わるのが早かった。


「動きませんね」


「動かんな」


「やっと面倒が終わったか」


異世界の門が完成したと同時に、勇者は死んだ。私達の計画通りに。


「長かったな王女よ。この勇者を殺すのにどれだけ苦労したか……」


「ええ。こうなるとなんとも言えない気持ちにもなりますね」


「なんでもいいけどよ、お前らさっさとその門通って帰ってくれねぇか? その後ゆっくり思い出でもなんでも振り返ってくれ」


「それもそうだな。王女よ帰るとしよう」


「すみません。私はこの世界に残って生きていこうと思います」


「は?」


「お前何言ってんだ?」


「私はあの世界が嫌いでした。だって報酬に娘を差し出すとか、王としてどうです? それが嫌で魔王、貴方と組んで勇者の抹殺を一緒に計画しようとしていたんじゃないですか」


「そうだったな」


「そして今勇者を殺せたので目的の1つは達成しました。あと忘れましたか?」


「何か言っていたか?」


「勇者を殺したら世界なんて好きにしてください。私の父とかも関係なく世界征服してください。ただ、私は自由な暮らしをさせてもらいますよ。って言ったじゃないですか」


「そういえば言っていたな。そう考えると元の世界よりもこの世界で生きていくほうが自由ということか」


「はい」


「待て待て、何を勝手に決めてんだよ」


「駄目ですか? ひっそりと暮らしますよ?」


「……もう好きにしろ! なんかもうめんどくさくなったわ」


「ありがとうございます」


新しい世界で1からの生活、楽しみだな。


「それではまお……ガド。今までお互いにお疲れ様でした」


「ああ、王女もこの世界で元気に暮らすのだぞ。さらばだ」


そう言って短い別れの言葉で、魔王ガドは元の世界へと戻って行った。


「それじゃこの門は壊すぞ?」


「ええ、あとそこの死体も灰も残らず消して下さい」


こうして私、元王女リーンは異世界でひっそりと暮らすことになるのだった。






























「ふむふむ。なるほど。別の状態も見たいなぁ。久しぶりに会いに行くかな」

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