計画52
「さて、不死身ではないが馬鹿みたいに凄い回復力のある奴を殺す方法はなんだ?」
そんな事をいきなり言われても、何も思いつかないですよ。私は一応王女だからそんな強力な技なんて知りませんよ。
「王女なら知っているのではないか?」
「は? なんで私なんですか?」
「だってなんか色々本読んでたし」
「知りませんよ」
「お前使えね」
グサッと酷いことをこの魔王め。私のせいとは言え、ムカつく。
「俺とお前で思いっきり魔力弾ぶつけて消滅させるか? そしたら復活できねぇだろ」
「いや、それだと帰還するための魔力が無くなりすぐに帰れないからな。その案は駄目だ」
「少しくらい帰るのが遅くなっても良いだろ」
「我にも向こうの世界が今どうなっているのか心配なのだ。だから一刻も早く帰りたい」
「じゃあどうしろと? そっちが殺したがってる勇者は、このままじゃそのまま一緒に帰ってもらうことになるぞ」
なんやかんやと言い争いが続きそうなので、ここは私が何か最高な計画を。
落し穴?中に落としてから上から岩で塞いで窒息させれば……。駄目だ、窒息前に岩を破壊して出て来そう。でも発想は悪くないはず。心臓へ直撃一本の矢?これだったら即死ですよね。バレないよう近づいて、バシュッと……。あれ、そういえば?
「あの、すみません」
「なんだ?」
「何か案が浮かんだか?」
「案はその色々考えたんですけれど、大切な事を聞いてなかったなぁと」
「大切な事?」
「今現在の勇者ってどんな感じなんですか? 私達が来た後の行動を知らないのですが……」
「……」
「……考えてなかったな」
「今すぐに調べましょうよ!」
ギルスが急いで担当地域の魔物に勇者の特徴を教え、何か情報を調べた。そしてその結果。
「おい、テメェら。マジでやべぇの連れて来たな。なんだよ勇者か本当に? 殺人鬼の間違いじゃねぇのか?」
「えっと、勇者はどのような事を?」
「まず、魔物を殺しまくっている。まぁこれは? お前ら基準の勇者ならわからなくもない話だ。しかし! 魔物と人間が一緒に居て、なんでその人間まで殺してんだよ! 頭おかしいのかよ!」
「まぁ原因はあれだな」
「むしろ、あれじゃなかったら何かと」
「お前達は勇者に何をしたんだっけ? 元の世界に送ろうとして、お前達も巻き込まれてこちらの世界にって話だよな?」
「はい。その時に勇者が一方的に私の事を結婚する相手とか、誘拐されいた王女とか言っていましたね。その好意や隙を突いて門へつき飛ばしたんですけどあの野郎は私達を巻き込んで……。まぁ、それで裏切られた事に気づいて魔物にも人間にも怒っているのかと?」
「かと? じゃねぇわ。お前らこのままだと本気で被害が酷いことになるから早く計画を考えろ!」
「いや、勇者の強さとかはわかったのか?」
「回復能力にものいわせて、片腕吹き飛ばしたくらいじゃ怯まねぇで殺しにくる」
「待て待て待て。痛覚が異常化されているのだが?」
「知るかよ! そんなのイカレタ頭じゃわかんねぇんじゃねぇの!」
心臓に一撃必殺しても効果ありますよね?あの勇者も流石に不死身じゃないのに、回復力高いだけで心臓刺されたくらいじゃ死なないとかの、化け物ではないですよね。大丈夫……ですよね?
「はぁ、で? どうやって化け物勇者を殺す? 生温い方法は逆にこっちが殺されそうだ」
「それなんですが、こっそりと近づいて心臓を一撃! というのはどうですか?」
「たぶん無理だろうな。他の魔物が少し殺気を出しただけで場所がバレて、追いかけまわされて、惨殺されたとかって話だからな」
無理じゃん。もうこれ。
「王女。土下座でもなんでもして、勇者の機嫌を直して来てくれないか? そしたら我らも計画を考えやすくなると思うのだが」
「仮に私が本当は愛してます! 魔王に操られていたんです! って言ったら信じてもらえると思われますか?」
「可能性に賭けたい!」
「黙れ無能魔王!」
「お前達の仲が良いのは本当にわかったから、本気で対策考えようぜ」
それからしばらく計画案を出し合ったのですけど、どれもこれもトドメ!ってなる感じになるには惜しかったり、後々の帰還へ影響しそうだったり、この世界の人や魔物への負担が大きかったりとイマイチ決定案が出なかった。
「これだけ話し合って何も出ずか」
「お前達よぉ、もう少しこの世界のことも考えて計画考えてくれよ。なんだよ魔物総勢で殴り込みって。馬鹿だろ」
「そしたら私を囮にする案も多かったと思いますけど?」
「「「……」」」
「団結力ないな」
簡単にこの世界へあまり迷惑をかけず、勇者を速やかに殺す方法……。
はぁ、もう勇者のことなんか放って置いて門を作っちゃって元の世界に帰……。私は馬鹿だ……。
「魔王のお2人様」
「なんだ?」
「どうした?」
「今から急いで元の世界へ帰るための門を作りますよ。さぁさぁ準備してください」
「ちょっと待て。お前、勇者を置いてくつもりか?」
「そんな事しませんよ。むしろ、門を作るのが勇者を殺す方法なんです。確実で、そしておそらく犠牲が出ない方法の中で1番ですね」
「はぁ?」
「……なるほど、そうか。しかし王女よ? 上手くできるのか?」
「とても不本意ですが、私が囮になりつつ実行するしかありませんね」
「おい、お前達だけで話を進めるなよ。俺にもちゃんと理解できるように説明しろ」
私はギルスに考えた最も最良の計画を詳しく伝えた。これにはもちろんギルスの力も必要なので。
「そういうことか……。今すぐに門の制作に入るぞ!」
ギルスは部屋から出ておそらく部下達を集めに行ったのだろう。
勇者……もう少しで貴方を殺します。




