計画46
「マウ、何か手がかりはありましたか?」
「無いな。誰に聞いても時空間に関する魔法の情報は得られん。こんな村では本なんぞはそんなに多くもないし。唯一わかった事があるとすれば、この世界の事か」
「なんて言っていたのですか?」
「この世界にも魔王が存在しているようだ」
「そうなんですか……」
あれから魔王もといマウが、この村の人達に聞き込み調査をおこなった。私は話せませんからね。しかし元の世界へ戻れそうな情報はなく、なんともまぁこの世界にも魔王が居るなんて。わりと魔王ってどこの世界にでも居るのでしょうかね?
魔王が居るのなら、勇者も存在していそうですよね。そこら辺の事情はどうなっているのでしょうかね。
「この世界にも魔王が居るのなら、この世界の勇者の存在はどうなっているんですか?」
「それがな、誰もその名前を言わなかったのだ。不思議と。なんとなくだが、魔王を倒さないのか? 的な言葉を投げかけたらその返答がな……」
「なんて言われたんですか?」
「なんで魔王を倒さないといけないのですかな? と言われた」
「は? ここに居るのって、人間ですよね? 魔族じゃないですよね?」
「人間だな、紛れもなく」
どういう事なのか……。魔王に対して恐怖心を持っていないのは何故?脅威を感じていないのでしょうか?
「試しに、変装を解いてみますか? ここでは貴方は魔王と認識されていませんから、魔族がいる! って言われると思います。反応を見て、この世界がもしかしたら魔王が征服している世界なのか確認とかを」
「もし、普通に騒ぎになったらどうするのだ?」
「逃げましょう」
「駄目だ、リスクが高すぎる」
「さて、冗談はさておき」
「本気だっただろう」
「冗談はさておき! 私思ったんですが、この世界の魔族に接触しませんか?」
「それは大丈夫なのか?」
「私はどうなるのかはわかりませんが、魔族で私達の世界では魔王と呼ばれた貴方ならばそこそこ話せるのでは?」
「うーーむ、別の世界とはいえ同じ魔族。もしかしたら助けてくれるかもしれんな」
「少しは希望がありますよね、この何も手がかりが無い状態よりはましですよきっと」
「よし、ならばそこら辺にいる魔族を探すか」
こうして私達は魔族が居そうな場所へと移動するのでした。ついでにこちらの世界の言語を話せるように、魔王に教えてもらいましょうか。
森の中にならなんかしら出てくると思ったのですが、なかなか出て来ませんね。本当にこの世界は平和なんですね……。この世界の魔王は何を考えているのでしょうか。
ガサゴソ
「今音がしたな」
「あそこの草むらからですよ。どっちですかね、人間か魔族か」
音がドンドンと近づいて来て、そして目の前に現れたのは……。
「き、キノコ?」
大きなキノコが歩いて?いた。これは、魔族ですよね?
「魔おじゃなくて、マウ。あれはなんて魔物なんですか?」
「植物系の魔物だろうとは見ただけでわかるのだが……」
「ちょっと、ハッキリしてくださいよ」
「我の配下にあんなの居たかな?」
「もしかして、こちらの世界特有の魔物?」
「かもしれん」
なんですか、それではどのように接触したら良いのかわからないじゃないですか。第一印象は好印象のが良いのですよ。
「なんに、お前ら? 迷子か?」
「え?」
軽くキノコが話しかけてきた。人間の姿ですよね?私達。襲ってこない?
「ん? 違ったか?」
「あ、えっと何と言えば良いのか……」
「お嬢ちゃん、恥ずかしがらなくても良いんだ。森ん中歩いてたら迷子になるなんてあるあるなんだからなぁ。そこのお兄さんもそうなんだろ?」
「いや、我々はだなその。そう、魔物を探していたのだ!」
ちょっと魔王!その言い方だと下手したら!
「俺みたいなのを探してた?」
「そうだ」
キノコの顔が険しくなり、少ししてため息を吐いた。ため息?
「まったくしょうがないなぁ。ほら、ついてこい」
キノコを先頭に私達はどこかに連れて行かれる。この先で戦うという事なのでしょうか。
だいぶ奥深くまで来たところでキノコが止まり、私達も止まった。ここでいったい何を……。
「ほら、ここら辺のキノコは食えるぞ。あとはそこの実も食べ頃だな。あんまり採りすぎるなよ?」
はい?なんて?
「あのぉ。今なんて言いましたか?」
「ああ? だから、ここら辺のキノコは毒はねぇよ。そんで、あそこに実がなってるだろ? あれは美味いぞ。丁度食べ頃なんだよ」
なるほど。この世界はめっちゃおかしい!なんで普通に魔物が食料提供しているんですか、人間に!
「はぁ、変装を解いて話しましょう。警戒していた私が馬鹿みたいですよ」
「その、なんだ。良い世界ではないか」
「そうですねーー」
私は魔王の変装を解いて、本来の魔族スタイルに戻した。私の変装は解かなくても良いですかね。
魔王の変装が解けると、キノコはかなり驚いていた。
「はぁーー! お前誰だよ! てか、魔族かよ。何で変装なんかしてたんだ? もしかして、隣の嬢ちゃんも?」
「いえ、私は人間です。魔族はこっちだけです。それで変装をしていた訳なのですが、話が長くなるのですが……」
「まぁ、とりあえず聞かせてみ?」
「この隣に居る魔族は、私の世界の魔王なんですよ。ちょっとしたことがあって、この別の世界に来てしまったんです。それで、この世界の魔王と会ってどうにか元の世界へ戻れないかの情報を知りたくて、魔族を探していたのです」
「ちなみに我が人間の姿をしていたのは、この世界がまさかこんなにも人間と魔族が仲が良いと思っていなかったからだ」
「……。はぁ?」
まぁ、普通はそうなりますよね。どうやって説明しましょうか。ゆっくりと丁寧に1から説明をしなくてはなりませんね。




