計画37
コンコンっと扉をノックされた。誰が来たのだろうか？扉を開けるとそこには魔王がいた。
「王女。儀式の時間だ。来てくれ」
「もうそんな時間ですか。すみませんが少し、準備しますから先に行っててください」
「わかった。なるべく早く来いよ」
そう言って魔王はいなくなった。さて、こっちも準備しますか。しっかりとね。
「妖精王様にお願いがあります」
「呪文を教えることだよね？いいよ！今から言うね」
「ええ、そのことなんですが。他にも力を貸してほしいのですが。よろしいですか？」
「うん？僕は何をしたらいいの？」
「それはですね…」
私は妖精王にこれからの作戦のお願いをして、儀式の場にきた。周りには多くの魔族がいる。そして、魔王の演説が始まった。
「皆の者！この儀式であの憎い勇者を葬ることができる！我らの世界掌握は近い！」
魔王の演説で、魔族たちが盛り上がる。熱気がすごいですね。
「王女。儀式を行うから、やつに代わってくれ。もう休息も充分だと思うのだが…どうだ？」
「はい、少し待ってください。今代わりますね…。はぁ、もう始まるのか。あまり休んだ気がしないな」
「まぁそう言わずに。これが最終段階にして、あなたにとっても念願が叶う瞬間でしょう？さぁ、始めましょう」
「ああ、それではこれからぎし…き…を…。な、なんだ！おま…え、邪…魔…を…」
そのまま王女は俯き沈黙してしまった。ピクリとも動かない。いったい、どうなっているんだ！このままでは、儀式ができんぞ。邪魔と言っていたか？何に邪魔をされた？この展開はいったいなんなのだ。
「ふぅ。主導権を返してもらいますね…嘘つきさん。よくも好き勝手に女性の体を…許しませんからね？」
話したのは普通の王女本人だった。邪魔というのは、王女のことか。何故王女が…。
「王女、お前」
「あら、どうしたんですか魔王？そんな驚いた顔をして。もしかして、私が出てきたことに驚いてるんですか？フフフ。言っておきますが、私は全ての計画を妖精王様から聞きましたよ？なので、こんなところで死ぬと思わないでください」
そう語る王女の圧は強かった。魔王である我が少し半歩下がってしまった。もしかして、怒っているのか？やっぱり怒っているのかな？黙っていたこと。
「し、しかし王女よ。これでは儀式ができないのだが」
「大丈夫ですよ。しっかりと考えいますから。それにしても、油断したら出てこようとしますね。この嘘つきやろう」
「その方法とはなんなのだ？」
「今から行いますよ。さてそれでは、妖精王様！お願いします！」
「はーい。任せて」
王女の隣に妖精王が現れた。本当に何をするつもりだよ…。
「王女よ。これからなにをするのか説明をしてくれ！」
「これから私と妖精王様が儀式を行います！邪魔をしないでください！妖精王様、今捕まえてますから早く呪文を」
「はいはーい！」
そう返事をした妖精王がブツブツと何かを唱えだしている。しかし、このままだと儀式は成り立たない。肝心の生贄が…。
「待て！王女知っているんだろう？この儀式には生贄が必要なことが。このまま呪文だけを唱えてもこの門は完成しない！意味がないんだ！」
その魔王の言葉にニヤリと笑いながら、王女は返事をする。
「ええ、そうですね。生贄が無ければこんなのただの茶番です。でも、生贄がいれば？もちろん私ではありませんよ？生贄は、この私に嘘をつき体に憑依してるこいつです。人間の魂ならこの儀式は成功するんですよ！そして、この神とか言ってる嘘つきは！神じゃない！自称神の私と同じ、人間！いえ、死んで未練が残ってさまよってるので哀しい人間の亡霊ですかね？こいつを生贄にします！今私の中で暴れてますが、所詮は私の同意がなければ好きにできないクズ。さぁ、大人しく私たちの犠牲になりなさい！」
そして、妖精王が呪文を唱え終わったとき。王女の体から男の幽霊が出て、そのまま門の方へ向かっていく。
「このぉぉぉ！ふざけるな！このクソ女！俺は神だ！神なんだ！こんな、こんなところで死んでたまるか！今すぐに儀式をやめろ！」
男の魂がドンドンと薄れて門に吸収されていく。
「チクショー！覚えていろ！絶対に後悔させてやる！俺は…」
最後まで言葉を言えずに男は、消滅した。いや、門に吸収されたと言うべきか。そして、異世界への門が今ここに完成した。
「すっきりしました。妖精王様お助けいただきまして、ありがとうございました」
「いいよ！僕も面白いものを見れたからね。すこいや。これはいいもの見たなぁ。やってよかった。あ、今のことをまとめたいからもう帰るね！バイバイ」
「さぁ魔王。これで門も完成しましたね」
「ああ。その、王女はなんともないか？」
「なにがですか？」
「なにか異常があったり…その」
「生贄にしようとしていた人の言葉ではありませんよね、それ。別になんともないですよ。むしろ吹っ切れたのか、体の中の余計なものが無くなったからなのか爽快ですよ。そんなことよりも、早く次の計画に移行しましょう」
淡々と王女は進めようとする中、1人の魔族が近くに来て質問してきた。
「あの、質問してもよろしいでしょうか？」
「なんだ？何か問題でもあったか？」
「ここに異世界への門がありますが、勇者はどうやってここに連れて来てこの門へ？」
「…王女。どうする？」
「…えっと、その。どうしましょう」
なんとも締まらないこの状況である。どうしましょうかね？
王女と魔王はその場でしゃがみこんだ。
