計画36
「妖精王、失礼を承知で発言しても良いですかな?」
「何?」
「妖精王が契約したのは王女個人のみだけの契約。我々には関係していないことだ。そうなると、貴方が何を言おうとこちらとしては意味が無い。そして、これから先やる事は魔族の運命を決める事。それを邪魔するのなら…わかっておりますな?」
そうなのだ。冷静になってよく考えたら契約は王女が勝手にしたのだ。我々には関係無い。
「でも、僕の涙を使ったんだろ?」
「王女が個人的に渡してきたから使っただけだ。そもそも王女とは、利害の一致により手を組んでいたからな。何かしらしようとし、結果が妖精王の涙の提供だったのだろう」
もちろん我はそんな事思っていない。我の狙いはただ1つ…さぁ、どうする妖精王。
「…そしたら君達はリーンを犠牲にする方針で決定なのかな?」
「まぁ、このままですと何もできないのでしょうがないですな」
「僕がリーンを助けるよ」
よし!このまま妖精王が王女をどうにかしてくれれば…。
「何?本当か?我々では手段が無くてな、助かる」
「僕の観察対象を、こんな変な事で失うわけにはいかないからね。とりあえず、リーンに会ってくるから。じゃ」
そう言って妖精王は会議室から出て行った。上手くいけば良いのだが。
「魔王様。やはり王女をそんなに助けたかったのですか?」
「王女とは勇者を抹殺するという目的で、手を組んでいる。知っているか?手っ取り早く勇者を抹殺する方法を?」
会議室内全員が困惑した顔をする。
「正確に言うと、皆知っているのだがな…。我が犠牲になる事だ」
室内の2人を除いてハッとした顔した。そういえば、ダークエルフとローガンはあの時居なかったか。
「そうだ。勇者の不死は我が居るこそ成り立つ。それに気がついた王女が皆に相談したな?そして、結果は不可だ。確かに王女は人間でいなくなっても問題ない存在かもしれん。だがしかし、我があの時犠牲になるのを拒んだのに、他の者に押し付けるのはどうにもな。理由としてはこれだけだ」
さて、王女はどうなるか。妖精王はどうするか。
王女部屋
「リーン!久しぶり〜」
声の方へ振り向くと、そこには妖精王様が居ました。何故?え?本当になんでですか?
「大変な事になったね!でも大丈夫だよ、僕が何とかしよう。観察対象が無くなるのは嫌だから、全力で頑張るよ!」
「あの、何の話ですか?」
急にやって来て、観察対象が無くなるって…なんですか?観察対象が無くなる…観察対象?え、私の事?
「何故私が居なくなると?」
「居なくなるんじゃないの!生物的には死ぬの!」
「はぁ!?し、死ぬ?何ですかそれ!?」
自室でのんびりと、儀式まで休んでいたら突然久しぶりに妖精王様が来て。そしたら突然の死の宣告ってなんですの?理解ができないんですけれども。
「ん?知らないの?リーンこのまま儀式をやったら、生贄になって死ぬよ?」
「聞いてないんですが、それ」
「なんで知らないの?君の中の『人間』とか魔王から聞いてないの?」
「ええ、一言もそんな事は…え?人間?」
「ん?」
「妖精王様、今私の中に人間って言いました?」
「うん。なんか変な事言った?」
「私はその、神様だと言われたのですが…」
「違うよ、君の中に憑依してるのはこの世に残ってた未練タラタラの人間の霊だよ」
「そ、そんな。魔王に早く伝えないと!」
「魔王は知ってるよ?知らなかったのは、君だけっぽいね」
魔王は知っていた?そして私が犠牲になるのもわかっていたということ?…所詮は魔族と人間ですもんね。利益が出るならそれは利用しますよね。はぁ、どうやら少し私自身距離感がおかしくなっていたんですかね?そうですよ、そもそも私は勇者を抹殺して自由を獲得するのが目的なんです。なのに、偉い神様に少し否定されただけで落ち込んで、その上わけのわからない奴にいいように丸め込まれて体を明け渡すなんて…情け無い!
「妖精王様、どうにかする方法ありますか?」
「1回受け入れてるからなぁ、どうしたもんかな」
「ちなみに、儀式とはどのようなものでしょうか?」
「異世界の門を開くんだけど、それには大量の魔力が先ず必要。それは魔王が用意したけどね。そして1番のポイントは、人間の魂を使うところかな」
「何故使用するのですか?」
「それは知らなーい。でもなんか必要なんだからしょうがないんだよ」
「人間の魂なら、私を騙しているこいつを使っても問題ないって事ですよね?」
「うん。それで、どうやって君に憑依してる奴を使うの?」
それなんですよね。そもそも儀式がどうやって行われるのかも、私は知らないんですよね。それなのにどうやって…。
「妖精王様質問です」
「何かな?」
「この儀式について詳しいですか?」
「さぁ?見てただけだから、そこまで詳しくないよ?」
「そうですか。って見てた?」
「そうだよ、だって君は僕の観察対象だよ?中身が違って、どんな行動するのかも観察してたからね!君が意識ない状態の時も見てた!」
「…もう、何故そしたら助けてくれなかったのかとかは言いませんよ。儀式の内容を知っているんですね?」
「呪文とかなんかは見てたからね〜。あ、こんな事するんだって。だから教えてあげれるよ?」
「そうですか、教えてください!これなら…何とかできそうですね」
儀式の時が楽しみです…騙した事を後悔させてあげましょう!




