計画4
「何故ですか?」
朝食を食べた後、部屋にいきなり来た魔王からの言葉に私は意味がわかりませんでした。
「いやな、お主がその会議に出ると、その全員胃がなんというか、痛くなるというか……」
「そんなメンタルで大丈夫なんですか? 貴方は」
ただの王女が居るだけで胃痛を起こすメンタル魔族、精神魔法で1発じゃないですかこれ。
「その代わり、我が対応する事になった。なので我と計画を立案し、それを実行するという流れになる」
「実行前には会議にかけられるのでしょう? 手間ですね」
「いや、その」
「まぁ、私は協力ですからね。仕方ないですね。その代わり、会議の内容はしっかり教えて下さい」
「も、もちろんだ」
そんな会話をして魔王は出て行った。まったくの予想外ですね、これは。しかし、今勇者は何をしているのでしょうか?そろそろ実際の戦闘訓練でもしているんでしょうか?うーーん、情報が欲しいです。
数時間後、扉をノックされたので、どうぞと応えると魔王が入って来た。会議が終わったのだろう。
「会議が終了したのですか?」
「そうだな、一旦終了だ。お主の意見を聞き、再度開く予定になっている」
最初から参加させてくれれば、こんな手間。
「無駄ですねこの時間……メンタルさえ強ければ。まぁ、言ってても始まりません。では、先ずは気になる勇者の動向について分かったことは?」
「え?」
「は?」
何故魔王はそんなの知るわけないじゃん!って顔をなさってるのかしら。
「勇者の動向ですよ? 何故そんな疑問に?」
「いや、だって何故そんなの知るわけなかろう」
「はい?」
「勇者の動きなぞどう知れというのだ?」
本気で言っているのでしょうか?この魔王は。
「何も私は、細かいところまではこの際高望みしてません。城内スパイを潜り込ませるにも今からでは意味もそんなにありませんし。しかし、街の噂などで大まかな動きは知れるはずでしょう?」
「どうして知れるのだ? まさか、そんなアイテムを? いつの間に仕込んだ!」
「勇者の仲間にさせるために、潜入させたシフター達はどうしたのですか? その方達に周囲の噂を調査させ、こちらに情報を流せばいいのでは?」
「いた、な……そういえば」
「思いつかなかったのですか?」
「次の会議では……シフター族に連絡させよう。必ず調査させる」
「なんのための潜入ですか? ただ仲間にさせるだけって、無駄でしょう。得になるなら他にも出来ることをさせなさい」
「はい」
こんな簡単なことすら思いつかないのですね……。
「いったい、それでは会議はどんな内容を話合っていたのですか?」
「それは、最初には勇者へどんな敵をぶつけるかだ」
「はぁ?」
どんな会議なんだそれは?中身がなさすぎでしょう!よくそんなので数時間も。
「勇者も最初は苦戦するくらいの魔物が、丁度良い。そんな結果になり大型の狼を中ボスとして、最初にゴブリンからという……」
こちらが頭を抱えてるのに、ペラペラと……。
「もう、お前が行けよ」
「え?」
「もう、貴方が直接行って殺して来いよ。それが一番早いですよ。まだ、貴方を倒せるくらいには強くないですし」
「あの、いきなり魔王が出ちゃうってその……色々と不味くない?」
「あーー、そうですね。万が一何かしらで死んでは困りますね。この城で貴方の次に強いのは?」
「え? 会議に出ている中の誰であろうか」
「その中から向かわせましょう」
「いやいやいや! そんな強敵いきなり出したら勇者が……」
「殺すんですよ? そのために計画してるんですよね?」
魔王が沈黙した。何故黙る!?何が問題なの?私は間違っていませんよね?
「た、確かに殺すぞ? しかし、噂では勇者には蘇生の法がかけられてるとか、それは本当なのか?」
そうでしたわぁ!すっかり忘れていました。勇者は魔王が死ぬまで何回でも生き返るとかいう、呪いじゃないの?みたいな加護がありましたわ!この対策をしないと、悪夢が終わらない。
「そう……でしたわ。蘇生、しますわ。だから、やられても強くなって挑戦なんて、ズルみたいな事が可能なんですよね」
「そうであろう? だから、今強敵をぶつけても意味がない! 我が軍の手札を晒すだけだと思うのだが」
「えぇ、そうなりますわね。対策をしないと」
アレ?魔王が死ぬまで蘇生?魔王は勇者を殺せる?アレ?アレ?これ、死ぬ?
「魔王、1つ確認を」
「なんだ?」
「勇者は蘇生します」
「ああ、聞いた」
「それは魔王が死ぬまで蘇生します」
「うむ、ん?」
「魔王が死ぬまでです」
「……」
「魔王は……勇者を完全に殺せますか?」
「わからない」
ここにきて、まさかの暗雲が……。どうなる、私の未来。




