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王女は理想のために魔王のところへ行き勇者抹殺の計画を企てる  作者: 怠惰
とにかく王女様は計画して行動する
39/92

計画35

我の目の前で最後の仕上げと、何かの陣を書いてる王女。いや、あれは王女ではないか。いったい何者だ…あの自称神め。肉体を手に入れるために今回我らを利用した、しかしそれが悲願の達成にもなっている。どうしたものか。


「魔王、何をボーっとしてんだ?ほらこの紙の通りに陣を書け。他にもお前にはやってもらうことがあるんだからな」


「他に何を?」


「これの詠唱だ。俺はこの中の王女を引っ張り出して押さえつけて、そのまま生贄にしなきゃいけないからな。発動させるための詠唱にまでは手が回せない。失敗できないしな。そのためにお前だ、わかったな?」


「わかりました」


それから無言で陣を書き続ける。このまま何もせずいれば勇者を…消せる。我々魔族の世界を作れるだろう。理解しているのだが、本当にこれで良いのか。王女を犠牲にしてもいいのだろうか?王女は人間だ。別に仲間でもない、ただ目的が同じで手を組んでいる存在。そんな人間を何故か助けようと思ってしまうのはあの自称神が気に入らないせいか?どうしたらいいんだ。


「よしよし、陣も完成した。あとはこのまま詠唱して発動させるだけだ。それにしても少し疲れたな。休憩してその後に全員でこの俺の再誕じゃなくて、勇者追い出しの儀式をするからな」


そう宣言したら、王女の体が倒れた。


「おい、王女。起きろ」


「ん、ん?えっと、今はどのような状況でしょうか?」


「…もう少ししたら、儀式だ」


「そうですか!嬉しいですね!これで…自由ですよ!」


「そうだな。王女、儀式にはお前が必要だ。部屋で休んでおけ」


「神様がまた私の体を使うのですね。わかりました、万全にしておきます」


ハイテンションな王女は自室へと戻って行った。その後ろ姿を見て我は会議室へと向かう。


会議室


「皆の者に聞いてほしい。王女に憑依してる者は神ではない。自称してはいるがな」


「それでは、勇者をどうにかするというのも嘘という事ですか?」


「いや、その儀式に関しては本当に効果がある。しかし、あいつは隠し事をしていた」


「それはいったい?」


「儀式には王女の命が使われる。あいつはもともと、王女の体を奪うつもりでこの計画を持ちかけてきたのだろう」


「王女は死ぬのですか、それは残念ですね」


「悲しい犠牲か…」


「若いのにのぉ」


「ちょっと待て。お前達は王女が犠牲になることになんとも思わないのか?」


会議室にいる全員が何を言っているんですか?という目で見てくる。我は変なことを言ったか?


「魔王様、何か問題?」


「王女は我々と手を組んでいるのだぞ?そう簡単に犠牲にして良いのか?」


「でもよ魔王様、王女は手を組んでいただけで仲間じゃないんすよ?なら、俺らが別に悩むことないと思うんすけど」


「しかしだな、王女は自由を求めていたのだ。それを無視してもいいのだろうか?」


「逆になんで王女を助けなきゃいけないんだ?」


「それは、そのだな…」


正直なところちゃんとした理由が無い。全員の言う通り、王女を助けるメリットは無い。むしろ、デメリットだ。やはり、犠牲になってもらうしかないのか。


「魔王様はぁ、王女にぃ助かってぇ欲しいのぉ?」


「…そうなのかもしれん。本来ならばメリットを考え王女を見捨てるべきだ。しかし、我はあいつに利用されていたのがムカつくのか、今まで計画を練り上げた間柄の友としてなのか、このまま生贄にするのがどうもな」


「魔王様、判断をする時に感情に流されては…」


「わかっている、わかっているのだがな…。最後に聞くが、この中で王女を犠牲にすることに反対する者はいないんだな?」


室内の全員、誰1人として手を挙げなかった。我の1人の意見を通すわけにはいかないな、王女よ…すまない。


「それでは、このことは王女には秘密にしておけ。準備ができ次第取り行う」


「困るなぁ、死なれると」


突如、謎の声が部屋に響いた。


「誰だ!姿を見せろ!」


「あれ?あ、そっか!僕はここでリーンとしか会ってなかったっけ」


空間に扉ができてそこから少年が出てきた。


「初めまして魔族さん!僕はね、妖精王だよ。よろしくね」


「よ、妖精王様!何故このような場所に!?」


ダークエルフがいち早くに反応した。流石元エルフと思ってる場合ではない。本当に何故?


「だって〜、リーン殺そうとしてるんでしょ?それはダメー。そんな事はさせないよ?」


「妖精王、何故王女に対してそこまでこだわるのだ?」


「え?魔王は聞いてないの?リーンから僕との契約」


王女から?何かあったか?てか、契約?


「リーンは僕の観察対象だよ!しかも、なかなか珍しい人間の!失うわけにはいかないよ〜」


「……あーーーー!」


そういえば妖精王から涙を貰った時に、なんか人間モデルとかなんとか言っていたな!あの薬が残念効果で終わってたから、すっかり忘れていた…。


「思い出してくれたんだね。それじゃ殺しちゃダメだよ?」


「し、しかしですよ?我々はその儀式の材料で人間の魂が必要っぽいのですが…。なので、ここで王女を犠牲にできないとその…」


デビルが説明をすると。


「そんなの、リーンに憑依してる方を使えば良いじゃん」


「妖精王よ、あいつはそんなことに協力してくれるわけがない」


「そんなのは知らない。僕は僕の観察対象が無くなるのが嫌だから来ただけだもん。もし、無理矢理実行するんだったら、精霊全員で邪魔してやるからな!」


こんなのどうしたらいいと…。

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