計画31
「さてと、話を続けようか」
なんとか話を続けられるようになれましたね。これは奇跡です。このチャンスは絶対に逃しません。
「そういえば、自己紹介がまだだったね。私は創造と破壊の神だよ。よろしくね」
「貴方様がっ!」
魔王の顔が真っ白になっている。たしかに凄い名前の神ですね、とても偉い神様なんでしょうね。
「魔王、なんか凄い神様に話を聞いてもらえそうで良かったですね」
「馬鹿者…少しでも変な事を言ったり、行動をしてみよ。我らはこの場で消える事になるからな」
「危険な神様なんですか?」
「名前で理解できぬのか?彼の方は、全ての神の始まり。そして、この世界を創られた神様だぞ」
「…え」
何故そのようなビッグなお人、いや神様がこんな気まぐれに参加してるんですか?確か暇だからとか、面白そうとか言ってましたよね。大丈夫でしょうか…。
「ん?どうした、説明してくれないのかな?なんとなくしか把握してないからね、私は」
「はい!ただいま!」
魔王はこれまでの事を全て話した。勇者の加護の事。何故その加護を消したいのか、私が居るのか、私も加護を消したいと願っている事。本当に全部話をして、創造と破壊の神様の様子を伺っていた。そして話が終わり。
「なるほどね、そりゃ加護神は勝手にできないな。異世界の奴に手を出すなんてお前自身も許可貰わないとだもんな」
「はい、そうなんです」
「んで、お前が居るのはなんで?って感じだな。必要ないだろ、この件に関しては」
「知るかよ、俺だって呼ばれたからこうやって面会してやるだけなんだからよ」
「天使達もしっかりと働いて欲しいものだ。今回の件は担当の神が違うだろうに。えっと、とりあえずは魔王君の意見はわかったよ。理解できる内容だね。君にとって勇者は憎い敵で、最大の邪魔者だもんね」
「はい!何卒よろしくお願いします」
「うん。でもね、王女ちゃんの意見がよくわからないんだよね」
「私の意見ですか?」
「だって、結婚したくないから加護を消してくれって…何?」
「それは魔王を勇者が殺した場合、私の父が褒美として私を差し出したんです」
「だから?」
「え?」
「いやさ、何甘えた事言ってるのかなと聞いてるんだが?」
場の雰囲気が少し変化した。私に向かって少しプレッシャーがかかっている。
「そこに居る魔王が倒されたら、人間は幸せな世界を手に入れれる。その功績は大きいよね?それなら勇者は報われても良いんじゃないかね」
「それは、そうですが…。その報酬が私と結婚というのは」
「何故問題視するのか。君は1人の人生を狂わせておいて、自分は幸せになりたいと傲慢にも願うか」
私は言われている意味が理解できなかった。
「わかっていないな?ならば説明してあげよう。君は勇者を何処から連れて来たのかね?」
「それは、私達とは別の世界から…」
「そう、異世界だ。魔王を恐れて勝てるか心配になった君達は、対となる勇者を用意したわけだ。しかし、その勇者はこの世界の人間から選んだのではない。文献だかなんだかでより強い勇者をと異世界からの人間を呼び出し、勇者にした。その人間にも元の世界での暮らしがあったのに、命がけの事を君達は選択させたのだよ」
「そんな!ち、違います!」
「何が違うのかね。君は勇者を召喚したくなかったと?戦わせたくなかったと?」
「そ、それは…」
思い出すと私はあの召喚した時、『アイツ』に『魔王討伐』を『頼んだ』のだ。そう、元の世界の事なんて考えていなかった。自分達の世界を救ってくれとしか考えておらず、言い方を変えれば無関係な人間を利用したのだ。
「たしかに、貴方様の言う通りです。愚かにも私は、異世界の人間に勇者を押し付けました。しかし!それは父がそもそもの」
「はぁ〜、全部父親のせいか?」
「そんな事は言っていません!ただ、何故私が好きでもない相手と結婚をしなくてはならないのですか!他の人だって居るでしょう、なのに探しもせずに私っておかしいでしょう!」
創造と破壊の神様は、笑いだした。こちらをバカにする笑い声だった。
「とことんおかしな人間!王女だな!こんなのを創造していたとは、私は何をしているのか…。お前は王族だぞ?好きでもない相手と結婚したくない?王女としての立場でよくもそんな戯言を吐いたな。それに探しもせずと言ったが、討伐の旅に出ていて命がけの中結婚相手を探せと?さて、王族としての役割を忘れ傲慢になり、同族を裏切った卑怯で哀れな者よ。私はお前の願いを聞かねば…ならないかな?」
私は何も考えられなくなった。言い返すことができない。
「何も言わないのかな?なら君の意見はもう無視するよ。さぁ魔王君?お話をもう少しして、どうするかしっかりと決めようか」
「はい、お世話になります」
魔王が私をチラッと見た。その目は心配?侮蔑?何かしら。わからない。私はどうしたらいいの?
ポツリと私1人が放置され、勇者の加護に対しての話し合いは続けられる。私は必要とされていない。人間側の意見として呼ばれた筈の私なのに、裏切り者の私には意見を言う資格なんて無い。何故来たのか、何故私は人間としての立場で居られると思えてたのか。話し声が聞こえなくなるまで私はただの置物同然になった。




