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王女は理想のために魔王のところへ行き勇者抹殺の計画を企てる  作者: 怠惰
とにかく王女様は計画して行動する
24/92

計画22

城に戻って来てからの記憶がしっかりしてませんね。とりあえず、私はいつの間にか寝ていたのですね。えーっとたしか、村から帰って来て何もかもが嫌になってしまって、横になり…そこからの記憶が無いのはそれで寝たというわけですか、この現状は。それにしても本当、なんなんでしょうかね。計画は成功しました。でも、まったくもって喜べません。むしろ、途方もない虚脱感が今も襲って来て、私は現在進行形で何かをする意欲が、まったく湧いてきませんわ。もちろん原因はわかっています。思い出したくもない、アレのせいです。

何故勇者はあんな事をしたのか…理解ができません。私の予定では、あの告白で勇者は拒絶するはずだったんです。その想いには応えられないとかなんとか言って。それで私がそうですよねと言い、忘れてくださいと乾杯をして毒殺するという流れだったんですよ?本来なら。なのに、なのになのになのになのに!あの野郎…普通に少しくらいOKだよね的な感じで、キ、キスしましたよね?この私に!我慢ができない?なんですかそれは!そして、良い夢という事にしときましょう?確かに私からそんな事言いましたが…そもそもが、大切な人がいるとか言うならこんな事するなぁぁぁあ!彼奴、同じ顔なら誰でも平気なんじゃないんですかね?シラーの報告が疑わしいですよ!何が私に夢中ですか、普通にチョロいくそ野郎じゃないですか、あんなの。あーもう、本当に最悪ですわ。あんなのにキスされてしまうなんて、夢でしたら悪夢として片付けられますのに…。


「王女よ、おきているか?」


扉の外から魔王の声が聞こえてくる。今は誰とも話したくないのですが、我儘言ってるわけにもいきませんよね。結果も知らないといきませんし。


「はい、起きてますよ。どうぞ中へお入りください」


「うむ、城に戻って来た時よりだいぶマシな顔になってるな」


え?会いましたっけ?真っ直ぐに部屋に戻った記憶しか無いんですが…。


「ええ、そのまぁ、はい」


「なんだ、計画が成功したのに元気が無いな。お前なら、かなり喜ぶと思ったが?」


「…成功してもそれまでの過程が最悪ならば、私は喜べませんよ」


「何があったのだ?」


「聞かないでください」


「あ、もしかしてキスしたことか?」


私はその言葉に反射的に反応して。


「ホーリーフレイム!」


「ガァァァァ」


思いっきり魔法を撃ち込んでしまった。


「ガハ。い、いきなり何を…」


「その言葉は、言わないでください。想定外の行動だったんです」


「いや、すまない。告白的なのしていたから、覚悟してたのかと」


「ホーリーバースト!」


「グオォォォ」


「ケシマスヨ?」


「…すまん、我が悪かった。だからもう落ち着け」


「ねぇ?思ったんですが、クソ野郎が倒さなかったら。私が魔王を倒したら結婚しなくても良いんじゃないんですかね?そう思いません?あはあはアハハハハハ!」


「落ち着け!王女よ、乱心するな!例えお前が我を殺したとしてもだ、なんやかんやで結婚させられるぞ!きっとだ、そうに違いない!」


「アハハハハハ!」


「戻って来い!」


数十分間、私は笑って…。


「申し訳ございませんでした」


「いや、うん。しょうがないさ。誰にでもあるよね、そんな時が」


なんか魔王に優しい言葉をかけられ続け、宥められ正気に戻りました。


「それで、その勇者はどうなりましたか?」


「そうだな、その話をしに来たのだ。では、話すぞ?結果から言うと蘇った。つまり」


「あの薬は勇者の回復力強化薬にしかならなかった、というわけですね。無念です」


「しかし、まぁ痛覚の異常があるから全てが無駄というわけでもない。そう落ち込むな」


「また私は本を読み漁ります。今度は不死の単語は除外ですね」


「実は…続きがあってな」


「続き?」


魔王の顔を見ると、悩んでるような顔をしている。


「うむ。復活した勇者なのだが、その後色々と問題がな。先ずは何故かわからないが、弱体化したらしい」


「え?そんな効果は書いて無かったですよ」


「しかしな、シラーからの報告で村に向かってる途中で戦闘する時に、明らかに勇者の動きなどが遅くなっていたりしていたそうだ」


「どうしてそんな事に…」


「そこで考えられる候補は3つだ。1つ、書いていないだけで、あの薬の副産物により弱体化。一応は不死解除の物だからな、蘇りに何かヒットしたのかもしれん。2つ、毒があの薬と何かしらの相性でこんな結果になった。まぁ、これは1番確率が低いと全員思っている。そして、最後なんだが…理性を保って聞いてくれよ?お前とのキスだ」


は?なんで、キス?


「あの、2つはわかります。ええ、なんとなくわかりますよ?でもね、最後はふざけてますよね?」


「ま、待て!この3つがこれまでに勇者の行動に無かった事なんだ!つまり、このどれかが弱体化のトリガーになる行動なんだ!」


「そんな事言ったら、この料理を食べた事ないとかもあると思いますが?」


「我達が注目したのは、大きな行動の変化ポイントだ。そしたらこの3つとなるのだ。まぁ、だから毒というのは微妙なんだがな?一応入れとけと言われてな。仕方なく入ってる」


「私としてはキスもありえないと思いますよ」


「…実はな、デビルが英雄の堕落という考えを」


「なんですかそれは」


「清廉潔白なる英雄は、正義の心を持ちその光と善を使い邪悪を討ち滅ぼす。とかなんとかずーっと語ってな。まぁ、要するに心が汚れていたらちゃんと力出せないよ?的な事だと思う」


「…えー、それはつまり。あの勇者が私、リーンという者が好きな癖に、途中で出会った村のリンに少し心が揺れたから、キスしたから弱くなったと?」


「まぁ、うん」


「馬鹿じゃね?」


「いや!実際に、デビルが言うには大昔にあったらしいから!」


「尚更、馬鹿じゃね?」


「…情け無い感じはするな。敵として」


何ともいえない空気が漂った。


「それともう1つ報告がある」


「何でしょう?」


「勇者パーティーが超険悪ムードで、若干崩壊しかけてる」


「…どうしたん!?」

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