計画21
朝、今私は買い出しをしています。現在の私は宿屋の1人娘…という設定です。丁度未婚の男性が居たので、その人の娘になり母親は私を産んだ時に亡くなったという親子2人の宿屋。何故かこの設定をサキュバスがこだわったんですよね。何故なんですかね?理由は教えてもらえないのが、モヤモヤします。趣味ですか?
「リンちゃん、これはオマケね。いつも手伝い頑張ってて、元気もらってるよ」
「おじさん、ありがとうございます!また料理を食べに来てくださいね」
働いてる宿屋は普通に宿泊施設だけではなく、料理屋も兼ねている為かなり忙しい。なんでここにした?本当に。買い物も終わり宿屋に帰ると、父(洗脳)が居た。
「お父さん、帰ったよ〜」
「おう、それじゃあ荷物は俺が運ぶから。お前は受付立っとけ、客の相手頼んだぞよろ〜」
「はーい」
この人料理の腕は確かなんだけどな…、なんか責任感が感じられませんわ。よく、宿屋してますわ。
「リンさん!おはようございます!」
あー、ウザイ声が…。
「勇者様、おはようございます。よく寝れましたか?」
「それはもちろんです!最高の宿ですよ。昨日はすみませんでした、色々と話を聞いてもらってしまって」
「いえ、勇者様の冒険の話が聞けてとても楽しかったですよ」
「そう言ってもらえて嬉しいです!」
昨日の夜、なんだかんだでこの男は私を捕まえてずっと冒険の話をしてきたのだ。隙をみて毒を盛ろうとしたが…この野郎は手を握って話しやがってましてねぇ…なんなんですかね?どこまでこの私にストレスを与えるのですかね?
「あの、勇者様。昨日の件は…」
「安心してください!必ず俺達が解決してみせますよ!」
「本当ですか!これで安心できます。ありがとうございます、勇者様」
結局昨日毒を盛れなかった私は、このままでは1泊して普通に村を出て行かれ、計画が何のために状態になるので嘘をついた。その嘘は、最近この村に魔物が出ていて、村の住人を何処かに攫われているという話をした。そしたら、仲間と相談してみると言い。結果今、この村に留められた。あとは、毒を盛れれば楽なのだが…もう1つ邪魔する存在が…。
「もう!勇者様ったら、置いていかないでくださいよ!」
この女だ。シスターのベルだ。この女、好きなのはわかってるから。取らないから、だから無理矢理間に入ろうとしたり、引き離そうとして邪魔しないでほしい。
「ベル様、おはようございます」
「…おはよう。私と勇者様は朝御飯、外で食べるから。鍵これね」
そう言って、勇者を連れて外に出た。クソォ…またしても邪魔を。サキュバスは洗脳に専念してないといけないから助っ人としてこれ以上頼れないし。
「ふぁ〜おはよう、リンちゃん。今日も元気そうで何よりだ」
「おはよう」
「おはようございます。ザザール様、シラー様」
「あれ?勇者様とベルは?」
「お2人は外で朝食を食べるそうですよ」
「かぁー、もったいねぇな。ここの飯美味いのに。シラー、飯食おうぜ」
「ああ」
「それでは、案内しますね」
私…何してんだろうな。早く毒飲ませて、帰りたい。
「それでは、リンさん。俺達は調査に行ってきますね!」
「お気をつけて」
さて、勇者達はなんも無い調査に行った。この間にどうにかできないか、考えなくてわ。帰って来た勇者の飲み物に毒を入れとくか?駄目だ、シスターに解毒される。問題はあの勇者と2人っきりにならなくてはいけないという事だ。しかし、それをしようにもあのシスターがガードする。
という事は、先ずはあのシスターをどうにかダウンさせなきゃいけない…。酒を飲ませるか?酔ってダウンするか確実性が無いから、少し怖い。睡眠薬なんて…持ってない。背後から殴っては、リスクが。うーん…どうしても思いつきません。そもそも、勇者が1人部屋を取ってくれたらこんなに悩まずに済んだものを。女の子と相部屋で全然お構いなしとか、やっぱり無理ですよあの男。部屋取る時にいつもと同じでいっかって、普通にシスターと部屋に入りましたもんね。あれで何故付き合って無いんですか!謎ですよ。シラー、本当に報告正しいんですか?あれ、付き合って無いんですか?シスターに腕組まれて、ちょっととか言ってましたけど…思いっきり顔はニヤけてたじゃないですか〜。
ハァ、なんやかんや隙が無い…。隙が無い?私は隙をみて、毒を飲ませようとしていました。なんで?普通に私が隙を作れば良かったんじゃないですか。なんかもう…自分が情け無い。
蹲って、ぶつぶつと自己嫌悪に陥っていると父親(洗脳)に心配された。私は大丈夫と返事をして、これからの計画をするための気合いを入れ、覚悟を決めた。私は、リンだ。リーンじゃない。だからこれからやるのは、ノーカンです。そう暗示をしてたりをすると日も暮れて、勇者達が帰って来た。
「今帰りました!すみませんリンさん。調査をしてみたのですが、何も見つけることができませんでした。あんなに見栄を張ったのに」
「そんな、ご無事だっただけでも。それに、そんなに焦らないでください。焦り過ぎて、怪我をしたら大変ですから」
「リンさん…。俺、絶対に解決しますから!」
勇者はそう言って私の手を取って、迫った。ここしかない!
「あの、勇者様。2人っきりでお話があります。夜中にこっそりと宿裏に来て下さい」ボソ
「え」
「皆さん、どうぞ夕食の準備もできてます」
あとは、夜を待つだけですわ。
夜も更けて、私は宿屋の裏で勇者を待つ。あいつはちゃんと来るのか。
「リンさん」
「勇者様…」
「話って、なんですか?」
「その前に、他の方は居ませんよね?その…特にベル様…とか」
「うん、ベルさんは部屋で熟睡してる。他の2人も同じじゃないかな?」
よし、第一関門突破!
「その、ここですと話辛いので場所を移動しませんか?」
「はい、良いですよ」
簡単だな、コイツ。そのまま少し歩き、丘に上がって2人っきりになった。
「ここで、飲み物でも飲みながら聞いてください。私も、その、飲みながら話しますから」
「えっと、わかったよ」
そう言って私は勇者に毒入りの飲み物を渡す。
「リンさん、それで話って何かな?」
さぁ、私はリンだ。勇者がいたら普通は好きになるだろう!ならば!
「その、私…勇者様の事を…好きになってしまったんです!」
口をもぎ取りたい。
「最初に会って、王女様に似ていると言われて。それで、その王女様が恋人と話を聞いて…お似合いだなぁと思いました」
誰か…殺して…。
「でも、その後に勇者様が色んな話を聞かせてくれて。色んな姿を見せてくれて。ああ、なんで私じゃないんだろうなぁって、思ってしまったんです」
勇者は?なんだ、飲み物持ったままこちらを見ているな…。早よ飲め!
「勇者様が王女様を愛しているのはわかっています。でも、少しだけ…ほんの少しだけ、似てるとおっしゃってくれた私にも、夢を見させてくれませんか?」
頑張った!私はなんか凄い頑張った!物凄く喉がカラカラになったので、持ってきた飲み物で潤す。なんだこの地獄の時間は…精神がキツいです。勇者の方見たら下を向いていた。いや、飲めや?飲み物飲みながら今の告白を聞けや!コッチは必死なんですよ!
「リンさん!」
突然勇者はこちらに寄って来て、私を抱きしめた。ん?なんですか?予定に無いですよこれは。私の予定では…。
「リンさん、俺には大切な人がいる。さっきリンさんが言った通りだ。でも、俺…昨日からリンさんを見てると何故か我慢できないんだ!」
は?
「君がリーンじゃないのはわかってる。でも、この感触も匂いも声も仕草も、全部が同じなんだ!」
え?なんかかなり気持ちの悪い事を言ってませんか?
「リーンに対して…裏切りになってしまうのかな?でも、俺はどうしても今我慢できないんだ。リンさん」
ちょっと待ったぁぁぁあ!なんで顔を近づけてくるんですか!まさか…まさかぁ!
次の瞬間、私の目の前は勇者の顔でいっぱいになった…。そして、ほぼ思考を停止した脳が言っている。お前、また馬鹿したなってね。
「リンさん、今日の事はお互いに忘れましょう。良い夢だったって」
「…はい」
その後、2人で乾杯をしグラスの中を飲み干した。この時、自分のグラスにも毒を入れようか考えてしまった。
ドサッ
「死にましたか。サキュバスさん、計画完了。今すぐに魔王城に帰りますよ」
「…王女なんか顔が死んでるわよ?大丈夫かしら?」
「早くしてください」
「…じゃあ、行くわよ」
魔王城
「おお、王女!帰って来たという事は、計画は成功したという…」
「しばらく…放って置いてください」
魔王が出迎えてくれたが、話す気分でもない…。今回の計画では代償がかなり高くついた。もう寝よう、何も考えたくない。
「いったい何が?」
「魔王様、今はそっとしといてあげてください」
「サキュバス、何があったのだ?」
「…私からは何も言えません」
早朝、村では
「大変だ!向こうの丘で勇者様が死んでるぞ!」
「え、誰にやられたんですか!」
「2人とも落ち着け、とりあえず前の村の教会で勇者様を復活させてもらうのが先だ。行くぞ」
「でも、殺した奴がまだ…」
「それならもう居ないだろう」
「なんでわかるんだ?シラー何を知ってる?」
「この宿の店主、未婚と今朝言ってた。『リン』という女の子なんて知らないそうだ」
「なんだと!って事は…」
「ああ、そういう事だ」
「やられましたね」
勇者の仲間達は急いで前の村まで引き返した。




