計画20
「本当に似てるんですよ、愛しのリーンに」
「そうなんですか、そんなに私は似てますか?」
「ええ!こんなに似ている人が居るなんて、驚きですよ。しかも、名前が『リン』なんて…。実は双子の姉妹とか?」
私の目の前で勇者が超笑顔で語ってる。今私は勇者の前にいます。似てる?本人ですよ。あー、何でしょうかねこのストレスは…。
「自分では王女様にそんなに似ているなんて、思った事ありませんでしたよ。畏れ多いです」
「そんな、そんな。俺の恋人のリーンと本当に似ていますよ!」
…誰の恋人だって?あー、早く殺したい。そのためにも、もう少し親しくならなければ。
何故、私がこんな事をしているのか…今思うともっと良い計画があったのではないのでしょうか?後悔をしても遅いのですがね、あーお腹が痛い。覚悟はしていましたが、思った以上にきますね…。
数日前の魔王城
「勇者は死んだか?」
「いいえ、未だに健在で死亡は確認できてません」
あの計画失敗から私達はなんとか勇者が蘇るのかを確かめるために、暗殺者を送り込んでいたのだが…。
「また失敗か」
「勇者め、なかなか死なないのぉ」
「それはそうでしょう、相手は普通に強いうえに尋常じゃない回復力。そして、強い仲間…。暗殺しようにも簡単にはなかなか」
悩ましいですね。このままでは無駄に人材を消費するだけ、しかも光明も見えないまま。
「次は、どいつを送り込むか…」
「いえ、もう暗殺者を送り込むのは愚策でしょう。相手も来るのがわかっているので、いくらでも対応されてしまいますよ」
「では、どうする?」
そう、その答えが見つからない。また誘導して罠に?やり過ぎると今後に響く…。どうすれば死ぬか確認できるのか、自然に待つなんてできませんし。
「シラーに何か毒薬でも盛らせるか?」
「バレた時のことぉ考えるとぉねぇ」
「ならば、強者を送って」
「それで誰を送る?下手すると返り討ちに合うかもしれないのだぞ?返り討ちにならなかったとしても、蘇った場合にはそいつは次の戦いでは、負けるぞ」
あれも駄目これも駄目と、会議は良くない方向で白熱している。だんだん、険悪なムードにもなっている。
「埒があかない!まったく、こうなったら色仕掛けで暗殺でもするか?」
「それです!色仕掛けです!」
全員がこちらに注目する。しかし、私は色仕掛けという言葉を聞き、もうこれしかないと思った。
「勇者に色仕掛けを本当にするのか?」
「ええ、します」
「言っといて悪いんだが、サキュバスの洗脳にはタイプがあるんだよ?人の記憶に錯覚を起こさせるタイプと、恋心を抱かせて自分に夢中にさせるタイプだな。そしてこの場合、後者になるのだが欠点がある。それは対象者に強い思い人が居る場合には、洗脳できないという事だ。それでだ、シラーの報告だと勇者は王女にベタ惚れじゃないか?というわけで、洗脳は不可能だ」
「安心してください。この計画で勇者に対して色仕掛けするのは…私です」
会議室全員の気持ちが1つになりました。それは、たった1単語。「は?」でした。もちろん、この計画を出してる私自身、かなり嫌です。会いたくない。近づいて、またあの野郎と同じ空間や空気を味わうとか…拷問ですかね?
「待つのだ王女。お前は現在、囚われている事になっているのだぞ?なのに、そんなお前が出たら」
「ですから私が色仕掛けをしますが、王女として接近はしません。別人として、1村人として勇者に仕掛けます」
「でもぉ、そんな都合よくは、無理ぃじゃない?」
「そこで、サキュバスさんを一緒に派遣してほしいのです。計画としては、勇者が次に来る村に私とサキュバスさんが待ち伏せをします。その村では予めに、サキュバスさんの能力で私達が最初から村人だったと、錯覚させた記憶を植え付けてもらいます。そしたら、勇者が私を王女だと言っても周りの人が、私のことを昔から居る子と言ってくれます。しかしです、他人とはいえ自分の好きな人です。かなり接触して来ると思われます。なので…が、頑張って…ぃ色仕掛け…オエェ」
耐えれませんでした。想像してみて、自分が勇者に対して甘えたり、ジーッと見つめ…。駄目です、気分が悪く。
「お、王女。その、無理はしなくてもな?その作戦ならば、そうだなサキュバスとあとそうだ!ドッペルゲンガーに王女に変身させて、この計画をやらせよう!」
「そうだな、想像でこんなんでは本人に会ったらな」
「いえ!私にやらせてください!元々はこの薬の効果は私が見つけ、提案した事。それに、勇者を強化してしまった償いもしてません!ここで、私がしっかりと確認します!」
魔王がこちらを見て、残り全員を見る。そしてまた私を見て口を開いた。
「よし、今回の計画は直接王女にやってもらおう」
「本気ですか魔王様!」
「ドッペルゲンガーの変身も万能ではない。たしか、濡れたりしたら変身は解けてしまうはずだったな?あと、反射する物には本来の姿が写し出されてしまう。リスクがあるな?」
「たしかにそうですが」
「さらに、サキュバスの洗脳もかけ続け無ければ、意味がない。しかも、衝撃を与えると正気に戻るという欠点があったな?送り込むのを、サキュバスとドッペルゲンガーにした場合、魔物バレのリスクが高くなる。ならば片方を本当に本人にすれば、多少はいやかなりのリスクが回避されると、我は思うが?どうだ」
会議室の全員が考える。そして、決断する。その決断は。
「王女、この計画…頑張れよ」
ダークエルフが言ったが、他の人達もその言葉に頷いてる。
「もちろんです。絶対に、暗殺してみせますわ!」
こうして、私は久しぶりに人里に来たのだった。そして、今は…。
「森の中には巨大なゴブリンが居て、最初は正直ビビってしまったんですよ俺。それで、大切な師匠を殺されてしまって…駄目な奴ですよね」
「そんな、勇者様。いきなりの事で怖くなるなんて誰にでもありますわ。そんなに自分を責めないでください」
「優しね、リンは。なんだか、リーンに言われてるようだよ」
髪を触られながら、話しかけられる。頑張れ、私。




