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王女は理想のために魔王のところへ行き勇者抹殺の計画を企てる  作者: 怠惰
とにかく王女様は計画して行動する
19/92

計画18

「わけがわかりませんよ!こんなの!今回は薬の効果の確認が目的。なのに、何故こんな試練のような事をさせてるんですか!」


「魔王にも意地がある。ただ殺風景の場所で即死トラップなんぞ、カッコ悪いだろう!」


「そんな意地は後々に残しときなさい!こんなしょーもないところで発揮されても、意味無いどころかマイナスにしかならないんですよ!」


私達がお互いの主張をぶつけ合いながら、ギャーギャー喚いていても、時間は進むわけで…。


「勇者が戦闘を行うようです!」


えぇい!こうなってしまったら仕方がありません。ちゃちゃっと心臓を一突きにしてもらいましよう。


「魔王!あの鎧の強さは?」


「んー、それなりの強さに設定してるぞ」


「では、早めに心臓を狙わせてください。そしてとっとと実験を終わらせます!」


もうヤケですよ!


『薬を飲んだら、こんな仕掛けが』


『魔法使いが残した試練でしょうか?』


『…そうだろう』


『あれ?あんなの聞いてないぞ?』


『カルさん、それはそうですよ。まさかこんな試練のようなものまであるなんて、残らなかったのですよ。おそらく』


『いや、そうじゃ…』


ガンッ


『痛ってぇ!シラー何すんだよ!』


『…虫だ』

(何か計画に変更があったのだろう、黙ってろ)


『お、おう』


『勇者様、どうしますか!?』


『…戦うよ。薬の効果、今この場で試してやる!皆んなは手を出さないでくれ!』


こうして始まった、鎧と勇者の戦いですが…良い勝負しますねー。いやー、惚れ惚れするなー。勇者も剣術上手くなってますね…なんで?

そういえば、シラーからの報告で盗賊の相手もしたりしてたんでしたっけ?そんなんで、こんだけ強くなれるって、素質がどれだけ…。


「魔王、あの鎧はどんな仕掛けで動いているのですか?魔物では無いでしょう?」


「ああ、あれは魔物ではない。鎧に魔力を付与した傀儡人形のような物だな。人間でもできるぞ?魔力を込めれば込める程に強くなる」


「良いですか?勇者はただの盗賊と戦闘を数回しただけで、あれだけの剣術の腕が上がってます。今回の貴方の意地はやはり失策、このままではより勇者に剣の稽古をつけるだけになります」


「…それで、どうしろと?」


「貴方の罠と私の罠を変えさせたと言いましたよね?それは、その場で咄嗟に鎧騎士を出す方針に変えたという意味ですか?それとも、私の罠をわざわざ無くして、アレを配置したんですか?」


「王女の罠は残ってる。あの鎧は転送しただけだ」


「それなら、これからの計画はこうします。このまま鎧騎士に、即死トラップまで誘導させて発動。鎧騎士諸共勇者を、殺します。良いですね?」


「もう、逆らわん」


「では、計画開始です!」


勇者はドンドンと即死トラップに近づいている。あと少しあと少しで、発動できる。……………今!


「発動してください!」


『なっ!』


『勇者様!』


計画通りに落とし穴の中で串刺しになってもらいますよ!勇者ぁ!


『くっ、こんなトラップまで!うぉぉぉぉ!』


そんな!私が見たのは、勇者が鎧騎士を自分の下にし少しでも串刺しから逃れようとする姿だった。そして…。


『腕と脚…が無くなったか』


『勇者様!今引き上げます!』


両腕と両脚を鎧騎士を固定したために貫かれて、使い物にならなくなってはいるが。肝心の頭や胴体には鎧騎士が盾になって、守られており…死んでない。これでは…実験は失敗だ。モニター前では全員が無言になっている。しかし、次の映像で全員が驚愕した。


『な、なんだ!腕と脚が、治った!』


そう、鎧騎士の上にうつ伏せになって倒れていた勇者の四肢が、突然完璧に完治したのだ。


「な…ぜ…」


全員がボー然とし画面を見ている。ありえない。この世界に怪我や病気を治す魔法はたしかにある。しかし、欠損を復元なんて…そんな魔法は聞いたことが無い。あのシスターがやったのか?何者なんだ?いやあり得ない。あの治る瞬間、シスターは魔法を使っていなかった。ではなんだ?


「王女…勇者には回復の加護もあるのか?」


「いえ、そんなのはありません。蘇生の加護だけです。こんな事あり得ません」


『勇者様!怪我が治って…』


『そうなんだ、突然治って。俺も驚いた』


『何かしたのか?』


『どうやって治したんだよ!』


『いやいや、本当に何も…あ!もしかして薬かもよ?身体強化って治癒力も相当上がるのかな?』


これ以上は観察しても無駄。とにかく今は何故、勇者があんな出鱈目な回復をしたのかの解明を…。


「王女さん、これマジで原因は薬しかないんじゃないか?」


「そんなはずは、あの薬は不死を阻害する為の…」


待て、私はあの時の本をちゃんと読んだか?


【 『間違えて不老不死になってしまった貴方へ』ですか。なんですか?このジャストに都合良くある本は。大丈夫なんでしょうか? 】


タイトルは覚えてます。


【 『なんだって!?君、不老不死になっちまったのかい。』


『そうなんだよ、本当は不老だけにするはずだったんだけどね。不死なんて悲惨な結果にしかならないよ〜、嫌だよ〜』


『まぁ、落ち込むなよ。不死なんて、簡単に解けるじゃないか』


『え!本当かい!教えてくれ、頼むよ』


『良いぜ、それはな』


『それは?』


『妖精王の涙と黄金の林檎の果汁を混ぜて、それを1000年生きたドラゴンの骨で作った杯に入れて飲めば良いのさ』


『ありがとう、助かっ 】


!?途中で止めてる。全部を読んでいない。


「すみません皆さん、私は少々図書室に行って参ります」


走って図書室まで行き、例の本を読む。


「続きは…ここからでいいですかね。


『妖精王の涙と黄金の林檎の果汁を混ぜて、それを1000年生きたドラゴンの骨で作った杯に入れて飲めば良いのさ』


『ありがとう、助かったよ』


『ほら、飲めよ』


『うん』


『これで、不死じゃなくなったんだね!』


『ああ、不死ではないな…この馬鹿め!』


『ど、どうしたんだい!』


『お前が飲んだのはな、禁断の果実とされている黄金の林檎が入っているんだ。それは、神にのみ与えられた果実!それを食べれば人間は罰せられる!』


『そ、そんな。酷い!』


『その罰は不死で無くなり、寿命を与えられる事!そして何より、痛覚が倍増されるのだ!』


『なんでそんなこと…』


『まだ、話は終わってないよ。お前はもう1つ取り込んだ物がある。それは、妖精王の涙さ!アレにはどんな怪我でも治してしまうという呪いがかかるんだよ。だから、お前は大怪我をしてもすぐに治ってしまうのさ!』


『目的はなんだ!』


『俺は人を斬るのが大好きなんだ…。最高のサンドバッグだよ、これから君はね!』


なんですか…これ。嘘ですよね?」


読み終わりそんな独り言を呟いてしまう。私はとんでもない事をしてしまった…。

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