計画17
「スクリーンの映像はしっかりと映ってますね、確認OKです。このまま配信をしっかりとお願いしますよ」
「了解です」
「役者達への台詞はちゃんと伝わっていますか?暗記も完璧ですか?」
「役者からOK来てまーす」
「しっかりできてると、そうですか。では本番で気を抜かないようにしてくださいとお伝えしてください」
「はーい」
「薬の設置は完璧ですか?」
「現場で揉めてます!」
「原因はなんですか?」
「そのまま台座に置くか、銅像に持たせるかの両派閥で現場で討論してます」
「しょーもないことで時間を…。零れたらいけませんので、台座に置いておくように伝えてください」
「わかりました。現場、現場。こちら魔王城、薬だが…」
最終調整が大変ですね。まさかこんなに、色々と指令を出さなければいけないなんて。しかし、踏ん張りどころですからね!
「王女!」
「なんですか?」
「薬を飲んだ際に発動させるトラップなんだが、我はやはりロマンあふれるこのトラップが良いのだが?」
「駄目です。なんですか、薬飲んだ後にいきなり薬を飲みし者よ!我と勝負って…どんな得があるんですか?」
「いやな?だって、強くなるよ?って言われる薬を飲んだら試したくなるだろ?そしたらなぁ…」
「なんで貴方が勇者目線なんですか!良いですか、薬を飲んだのを確認したら普通に即死トラップを発動させて死なせる。これでいいんです。だいたい効果があると100%言えないんですからね」
「…なんか魔王としてつまらないな」
「つまらないとかじゃないんですよ!まったく、忙しいんですから大人しくしててください!」
「…わかった」
トボトボとガッカリしながら、自分の椅子に戻っていく魔王。本当に邪魔をしないでほしい。
「これで、準備はできましたね」
「完了してます」
「後は勇者の村入り待ちです」
さぁ、この数日で完成させた計画。楽しんでください、勇者!全員で劇の鑑賞会です。
映像〜
『やっと村に着いた〜』
『とりあえずは、宿探そう宿』
『あ、あそこにありますよ』
そうとう勇者達は疲労しているのですね。この状態なら正常な判断は困難になる…良い風向きですね。
『すみません、部屋を2部屋お願いします』
『おいおい、野郎3人で1部屋使えってか?そりゃないだろ』
『なにを言ってるのザザールさん、私と勇者様が同じ部屋で、貴方とシラーさんが相部屋で良いじゃない!』
『ベルさん、年頃の女性と相部屋なんて俺は』
『勇者様、ベルで良いって言ってるじゃないですか。それに私、勇者様となら同じ部屋でも気になりません』
『あーあ、見てらんね。行こうぜシラー。こいつらのいつものがまた始まる』
『ああ』
なるほど…あのベルって人は彼奴に惚れてる!その理由がネームバリューだとしても、私の物!としようとしてると…良いぞ!もっとやれ!押せ!押して押して、なんなら襲っちゃいなさい!これはこの2人をくっつける作戦も、視野に入れたいですね。スパイのシラーさんにお願いしましょう!ミッションとして。
『ベルさん、あのですね…』
『ああ、ゆうしゃさまだ。こんなところでおどろいたなー』
酷い棒読みだ。
「あの人たしかカルさんでしたっけ?」
「うむ、そうだな。緊張してるようだ」
「緊張してるようだじゃありませんよ!明らかに挙動不審な怪しい人です!早くシラーさんにカバーの連絡を!」
『ん?君は?』
『あはは、いやだなー。わすれたんですか?おれですよ、おれ』
もう少しまともな接触の仕方があるでしょう…なんでこんな事に。
『カル、久しぶりだな』
『シラー!見つけた!』
『シラーさん?知ってる人ですか?』
『…こいつは、カルだ。俺の友達で勇者の仲間選考に参加したぞ?』
『あ、そうだったんですか。すみませんカルさん』
『え?イヤイヤ、全然平気だよ!今は1人旅してるんだ』
なんでしょう、この人よりももっと演技ができるシフターが、残りの2人には居なかったんですかね?
『1人旅なんて、危険ではないですか?』
『大丈夫、俺強いから!』
『カル、なんでお前がここに居るんだ?』
『え?それはお前がここに居るからだろ?』
バシッ!
『痛!あー、うん。その薬だよ!薬!』
なんでしょうか、目眩がしてきました。暗記させた台詞と違いますし。
『カルさん今、シラーさんがここに居るからとか言ってませんでしたか?』
『えー、そう!勇者様達がこっちの方に向かってるって聞いてさ、久しぶりにシラーに会おうと思ってな!』
『あの、先程の薬というのは…』
『…っそだ、そのシラーに会おうと旅の途中に助けた奴に聞いたんだ。とある薬の話をな。それを教えてやろうと思って』
もう、グダグダじゃないですか。誰ですか?こんなのキャスティングしたの?
『カル、その薬ってなんだ?』
なんか、シラーさんが必死になって頑張ってくれてますが…失敗しませんよね?
『おう、聞いたんだけどよ。なんか近くにダンジョンがあるらしくてな?昔魔法使いがそのダンジョンでとある薬を作ったらしいんだ」
『その薬とは?』
『なんでも、身体能力が向上する凄い薬らしい。目的はいつの日か、魔王が世界を脅かすかもしれないという事で対処するために作ったとか』
『カルさん!それは本当ですか!』
『ああ、ちゃんと聞いたからな。場所も教えてくれたし。それをシラーに土産話にしようと思ってな』
なんとか興味を持ってくれましたか。シラーさん、貴方はとても輝いて見えますよ。
『カルさん!お願いします。どうかその場所に連れて行ってください!俺は強くなりたいんです』
『んー、まぁ勇者様が飲んだ方がいいか。わかった、案内するよ』
『ありがとうございます!』
『じゃあ今から行くぞー!』
『待ってください!ザザールさんが部屋に』
『ザザールは熟睡したぞ、部屋に入ってすぐに』
『うーん。ザザールさんには悪いですけど、ここに居てもらいましょう。行くのはダンジョンですし。そんなに疲れているのに連れて行ったら危険かもしれない。ベルさんもここで休んでいても大丈夫ですよ』
『そんな!私はまだまだ平気です。それに、回復が必要な時どうするんですか!ついて行きます』
『では、このメンバーで行きましょう』
魔法使いが居ないのはより良い結果になりましたね。探知魔法を捨てるなんて…馬鹿な勇者ね。それからは普通にカルが案内をこなしていた。流石にここでヘマはしませんよね。
『ここがそのダンジョンだ』
『なんだか雰囲気があるな』
『何があるかわかりません、気を抜かないようにしましょう』
『行くぞ』
まぁ、ダンジョンと言っても機能はしてないんですけどね。その洞窟は昔にスカル族の1部族が使ってた場所ですが、今は新しい場所に引っ越ししたので、時々野良魔物が住み着いたりするだけの洞窟…警戒しても昔の余りトラップがあるかも?くらいですよ。
ほら、なんやかんやで最奥に到着しちゃってますよ。まぁ、ここは改造してますがね少々。
『…何も無かったな』
『まぁ、楽できてラッキーじゃん?』
『魔法使いさんは、なんの仕掛けもしなかったのですかね。不思議です』
『薬を飲むまでわからんぞ』
『そうですね』
…多少は罠仕掛けた方が良かったですかね?
『あの台座にあるのが…もしかして』
『中に液体が入っている。おそらく薬だろう』
『お!情報通りだ。そしたらこれを勇者様が飲んだら、凄いパワーアップするのか』
『勇者様…』
よし、いけ!飲めぇ!
『なぁ、これってさ。飲んで平気かな?』
はぁ?
『勇者様どうしてですか?』
『だって、よく考えてみたら。ここにずっと放置されていたんだし…腐ってない?それにこれ蓋ないよ?埃とか入ってて汚そうだなぁって』
おい待てや、そんなんで飲まないってありなのか?後ろでは、杯を作った技術スタッフがやっぱりあのデザインのが良かったんだよ!とか言って喧嘩してるが、そんな問題なのか?これは。
『魔法使いが作った薬だろう?ならば、そういうケアもしているだろう』
シラーさん…私貴方と結婚したいかもしれません。なんでこんなにアシストしてくれるのか…。魔族と結婚ってできましたっけ?
『そうだよな、よし』
勇者は、薬を、飲んだ。計画フェーズ2へ。即死トラップ発動です!
『ガシャ、ガシャ、ガシャ、ガシャン!』
『主の薬を飲みし者よ、今ここでその力を試してみよ』
………なんですか、あれは?
「魔王、私の考えた即死トラップが何故か変な鎧騎士に変わってるのですが?」
「変えさせた」
「何故ですか!あれだけ意味がないと」
「やっぱり締めは、バトルだ!魔王権限で変更だ!」
「この、脳みそ空っぽ駄魔王が!計画の意味を考えろ!」




