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ボロニアムの森(後編)


「スラー村長、今日私たちが来たのは、アンが巫女長から、巫女長候補と同じように先導者の指導を受けた方が良いと言われたからです」

「ええ、分かっていますよ。巫女長がそう言ったのは、セレーネ伯母様から命の宝珠を渡す時には、エルフの村へ行くように告げるように伝えていたからです」


 アダムの話にトートがスラーに代わって答えた。


「うーん、アン、お前たちが来たという事は、それを使う事があったからだろう? まず何があったか話してご覧」

「はい、王都の下水道から侵入したゴブリンを退治したら、ゴブリンの母胎にされた女性が見つかりました。女性はまだ生きていたので、国教神殿の施術院で治療することになり、私が命の宝珠を使って癒し手のお手伝いをしたのです」


 スラーとトートにアンが施術院で起こった事を詳しく説明した。


「えー、命の輝きは、命が持つ本来の力を取り戻し力づけるものだ。あの光を浴びることで、本来の姿には無い異物があぶりだされたのだろう。『月の雫』の盾の力で弾き出されて、消滅したか、あれを植え付けた術者の元へ戻ったか分からぬが」

「可哀そうに、その娘は命の中に異物を植え付けられて、本来ありえない数の怪物を自ら産み出せるように変えられたのね」


 スラーとトートの話を聞いてアダムが疑問に思っていた事を聞いた。


「アンの命の宝珠の光は、邪を祓う力があるのですか」

「あー、いや、アダム。命に本来在るべき姿を示せても、その異物を取り除く力は無い。分離したままでは異物だけで存在し得なかったのだろう」


 アダムはあの時、異物を認識しながら、攻撃する手段を持たなかった。今後もっと力を持った敵と出会う事を考えると、戦う武器が必要だと思う。


「あれを殺すか祓う武器はありますか。あの時異物を認識出来ても、何もできませんでした。これから更に上位の敵が出て来た時に戦う手段が必要だと思いました」

「アダムは光の剣の伝説と言うのを知っていいるかい」

「光の剣の伝説ですか。それはどのようなお話ですか」

「別名を神を殺す剣と言う」

「スラーの叔父様、それは本当に伝説のお話ではないですか」


 トートがスラーの話に呆れて声を掛けた。


「はは、トートの言う通り、これは世界各所の伝説に出て来る聖剣だ。だが、色々な話に出て来ると言う事は、それだけ真実も含まれていると言う事だと思うよ」

「それはどんな武器なの?」


 ドムトルとビクトールまで興味深々と聞いて来た。


「ああ、伝説の金属ミスリルと言うのがあって、それを剣を作る時に鋼と一緒に鍛えることで光属性の魔法剣になると言われている」

「ミスリルですか。それは、何処で手に入るのですか?」

「アダム、そこが伝説の所以なのよ。叔父様が言うミスリルと言うのは、鉱山を掘れば出て来るという物では無いのよ。長く生きた伝説級の魔物が、腹の中で時間をかけて溜めることで、魔力をたっぷり含んで出来上がると言われている金属なのよ」

「伝説級の魔物って?」

「あー、例えば有名なのは土龍じゃな」

「えっ、竜のたまごですか」

「ほー、アダムは良く知っているね。長く時間をかけて腹の中で育つことから、たまごに例えられることがある。有名な話では剣聖オーディンの竜のたまごじゃよ。あの叙事詩に出て来る竜のたまごはミスリルを暗喩していて、それを剣に鍛えて魔人を殺したという解釈があるんじゃよ」


 アダムは意外な話の展開に驚いてしまった。『竜のたまご』と言うからには、堅い竜のたまごそのものを武器にしたと考えていたが、ミスリルを含んだたまごなのか、たまご形のミスリルなのか分からないが、それを使って剣を鍛えたと言うのはあり得るように思えた。


「アダム、あんまり叔父様の話を真に受けたらだめよ。だって、ミスリルと言うのが見つかったとしても、それを鍛えることが出来る鍛冶職人がいるとは思えないもの。これはあくまで伝説の話よ」

「あー、でもトート、剣聖オーディンの使った魔法があったからには、『竜のたまご』にも何か意味があるかも知れないよ」


 トートは現実的なのか、伝説は伝説と割り切っているようだった。でも、アダムは剣聖オーディンの話が正しく無くても、あれに対抗する武器は必要なのだと思う。


「その、剣聖オーディンの話は別にして、光の剣と言うのも実在していないのですか」

「うーん、どうだろう。王家や帝国の宝物庫には伝説の剣と呼ばれる武器が伝わっていると聞くよ。もしかすると、その中には光魔法を使う剣があるかも知れないね」

「あの、スラー村長。世界各所の伝説に出て来るなら、世界の遺跡を探検すれば出て来るんじゃない? 俺はいずれ冒険者に成って遺跡探検をするつもりなんだ。なあ、ビクトール、俺が光の剣を発見したら凄くないか」

「ドムトル、お前話をややこしくするなよ」

「おー、ドムトルは勇ましくて良いね。エルフの書庫にある伝承を一緒に探すかい」

「スラーの伯父様、そんないい加減な話をしてる場合じゃないでしょう。今日はアンの指導の話が先ですよ」


 スラーの専門が何か分からないが、年は取ってもまだまだ若々しい好奇心を忘れていないのか、ドムトルと波長が合うようだ。トートに叱られてもドムトルと顔を見合わせて悪戯な笑いを交わしていた。


「アン、それで施術を行った時に感じた不安は何かあるの」

「はい。もっと、冷静に距離を取れれば良かったのですが、感情のぶれも一緒に入って来て、コントロール出来ずに苦しかったです。指導を受ければ、その調整が出来るようになるでしょうか」


 アンが巫女長の導きで、フローラの心に触れた時、流れ込んで来たイメージや思念が直截的で加減が出来ずにその影響を受けたことを素直に話した。


「アン、巫女長候補を指導する先導者というのは、エルフの中でも月の女神のご加護を受けている魔術師の先達の中から選ばれるの。代々エルフの中でもセレーネ伯母様の血筋に現れることが多くて、今は私が行っています」


 トートの話では、先代の先導者は月巫女の姉で、今はトートが引き継いでいると言う。巫女長がやったように、お互いの魔素を触れ合わせ、先導者がその流れを調整して見せて体感させることで、自分でも同じように出来るように訓練すると言うものだ。後はそれを自分で繰り返して得とくする。


「あー、アダム、トートが指導する時には、他にも介添え役のエルフが必要になる。今日はゆっくりお前たちの相手は出来ないから、アンは預かるので、明後日の午後に迎えに来てくれないか」

「分りました。明日も学園は休みなのですが、明後日は学園が終わってからで良いですか」

「ああ、それで良い。もしもの連絡用に、アダムのハエトリグモを1匹置いて行ってくれないか」

「はい、ですが、ゴブリン捜索で使うかも知れないので、、、」

「あれ、アダムは神の目やククロウと一緒に蜘蛛ともリンクするのだから、同時に他の蜘蛛ともリンクできるだろう?」

「あっ、考えていませんでした」


 アダムは言われて初めて気が付いた。同時にクロウ2号、3号と蜘蛛を複数リンクすることは考えていなかった。でもスラーの言う通り、鷹やフクロウと同時にリンク出来たのだから、蜘蛛も1匹リンクしたらお終いとは限らない。同時に何匹もリンクしておいて、各所に配置して切替できれば、情報量は飛躍的に多くなる。

 アダムは腰に下げたポーチから蜘蛛を入れた容器を取り出し、試しに新しいハエトリグモに自分の魔素を流してみる。出来た。クロウ3号とリンクすることが出来たのだった。


「出来ました。それでは、クロウ3号を置いていきます」


 アダムは折りたたんだ文字盤の予備を出してスラーに渡し、使い方を説明した。


「おー、面白いね。良く考えている」

「では、明後日の午後にまた来ます。他にも光魔法についてとか、色々聞きたい事があるので、また来ます」


 アダムたちはスラーに案内されて、再びナラニ湖の遺跡に戻った。そして明後日の再訪を約して帰ったのだった。別れるに当たってドムトルは、ちゃっかりとトートからお土産の焼き菓子を貰っていたのは言うまでもない。

次は、「 ハエトリクモ(Jumping spider)の鷹狩り(前編)」です。


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