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幕間 闇の主教 シヴァ・ドゥ・ズール


 ◇ ◇ ◇


 ここは、エンドラシル帝国第8公国、マウルタニア宮殿、食堂。


「皇子、どうなされたかな」


 エンドラシル帝国第8公国の皇子であるガリウス・ズールが昼食に降りて来ると、闇の主教がその不機嫌そうな様子に声を掛けた。闇の主教は光真教の高位聖職者として、両目を潰して見えないが、魔素の気配で大抵のことは分かるのだ。

 

「叔父上、母上は今日はご一緒ではないのか」

「アシハナは第一夫人と彼女の実家のハサン家の食事に呼ばれているよ」

「またつまらない偽装を。皇太子戦に向けて、敵でしかない相手ではないか」


 ガリウス・ズールは闇の主教の事を叔父上と呼んでいるが、彼の名前はシヴァ・ドゥ・ズールと言い、現皇帝クラウディオ13世の双子の弟に当たる。ガリウス・ズールの父で第8公国王のカザルス・ズールとは祖父(前皇帝)の代で繋がる系譜になる。

 クラウディオ13世が皇帝を継ぐ皇太子となった時点で、光真教の聖職者となり、各公国に1人いる主教として、現在は第8公国の光真教神殿長を務めていた。


「叔父上、わしの施した術を破った者がいる」

「ほほう、それはそれは、面白い」

「笑い事ではない。七柱の聖女はやはり早く手に入れた方が良い」

「よろしいのかな。今は皇太子戦に備えて、第8公国の皇太子に成る事が先決ではないか」

「叔父上はわしがハサン家の皇子に負けると言うのか」

「ハサン家はクラウディオ13世と親しい。奴の目付のようなものだ。油断したらやられるそよ」


 シヴァ・ドゥ・ズールは穏やかな笑み湛えていたが、黒いガラス玉の目を見開くと表情は一変して、邪悪さを帯びた暗い顔になる。若い皇子を正面から見ると、ガリウス・ズール皇子は力負けをして目を逸らした。


「闇の御子を降ろすのはわしだ。わしが叔父上の無念を晴らし、皇太子戦を制する」

「アシハナは可愛い皇子を産んでくれたものだ。私が主教を勤める第8公国の神殿から闇の御子を降ろすことは、大変な名誉だ。依り代である七柱の女神は必ず手に入れるわえ」


 闇の主教は愛しそうな声を出すが、表情は厳しいものだった。才能はあるが、考えの足りない皇子を御すのは中々面倒だと考えていた。アシハナは思った通り才能のある子供を産んでくれた。自分との関係を疑われないように慎重に動くようにさせているが、彼女には自分の息子である皇子に甘いところがある。

 こんな衆目のある場所で、公然と話す話題ではない。誰が聞いているかもしれないし、告げ口や裏切りは宮殿では日常茶飯事だ。

 双子でありながら、時間差で生まれただけで、皇太子戦の候補にもなれなかった自分が、光真教の最高権威となり、神(闇の御子)を降ろすことで、神の力を得て世界を支配する。それは闇の御子が自身に神意として伝えて来た事だ。自分が目を潰すことを躊躇ためらい震えている時、頭に浮かんだ闇の神の言葉だった。


「恐れるな。わしを受け入れるならば、望むものを与えよう」


 あの時脳裏に浮かんだ言葉は、真実神の声だったのか、それとも自分の錯乱による夢想だったのか、時折苦しくなるほど思いに暮れる事だった。自分は神を降ろし、闇の御子となるのだ。

 闇の主教シヴァ・ドゥ・ズールは狂おしい程の渇望を持って祈るのだった。


「神の御心を表しください。”闇の御子はいずこにおわしても見ておられる”」


 ガリウス・ズールは呪文のように唱えられる言葉を聞きながら、内心は白けて来るものを感じていた。彼には光真教は学校では教えてくれない、色々な秘術(黒魔法)を教えてくれるものだったが、あくまでも実利的に受け入れているのだった。闇の御子を降ろすことを考えているのも、その実利的な効果を信じているからだ。だって、世界を破壊すれば自分が征服すべき世界も無くなってしまうではないか。彼は闇の神の破壊の意味を教義としては理解していないのだった。


「ロキは何をしているのか。少し叱らねばなりません、叔父上」


 ガリウス・ズールがつまらない捨て台詞を言いながら自分の部屋に戻るのを見て、闇の主教は舌打ちをした。

 ロキもまた自分と同じように、闇の御子の神意を受けて動いている。同じ同志でありながら、自分と同じように直接神の意を受けて動くロキとその娘マーラには油断ならない物がある。

 こちらが操っているようで、操られている恐れがある。果たしてガリウス・ズールごときがあしらえるものか、自分の駒として自滅させる訳には行かない。注意せねばならないだろう。闇の主教は見えない目を閉じ、光真教の神殿に戻るべく、歩き出したのだった。


 ◇ ◇ ◇


次は、「 マグダレナとの昼食会 」です。


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