列車の中で
ガタンゴトン。ガタンゴトン。
流れる景色を眺めながらボーッとコーヒーを飲みつつのんびりするリョウ。
そろそろ元いた愛媛と大分の中間くらいか。
そう思いながらウトウトしているとーーー
「見つけたぜェ?」
「あァ?」
眼帯にレザー服、手甲を付けたヤバそうなのが通路に立って居た。
コイツは武器ねぇと相手出来ねぇなーーーと思いつつ言葉を返す。
「俺がどうかしたかよ、ニイちゃん。あァ?」
「どうかするだろうよ、アンタ、どっちかわからねえがご戦神様だろ?」
「だったらどうだってんだ?」
「決まってんだろ!男だったら腕比べ、どっちが強えか競わねえとよ!」
「はあ…なかなか最近のヤツにしては根性と熱意があるじゃねぇか。だが今俺はコーヒーを味わってる。飲み終わるまで少し待て。俺の前の席にでも座れよ、雑談しようや」
ガタンゴトンー。ズズッ。プハァー。
「やり合う前に話しようや。なんでも聞いていいぜ。」
「マジかよ!そりゃツイてるぜ…戦神に質問なんざ出来るたァ…。じゃあまあ、なんで双剣双銃の戦神って呼ばれてんだ?」
「それか。ユニークスキルだのスキルだの呼ぶヤツは多いが実際の所、双剣双銃使って敵をひたすら倒してたら付いてた称号、字名だな。そう呼ばれるだけで俺自身にはなんの効果もねえよ」
「マジか…ただひたすらに磨き上げた絶技か。俺は憧れるぜ。ちなみに名前はなんてーんだ?」
「いつも双剣双銃だの戦神だのって呼ばれるから忘れそうになるな…リョウだ。よろしくな。」
「リョウか。覚えとくぜ。俺はサトシってんだ、よろしくな。ああ、あと、もしこの戦いで認めてもらえりゃアンタの弟子になってもう1人俺を作るぜ。アンタの纏うオーラや話し方が好きになってな。」
「はっはっは!いい度胸だ!やっぱ戦神に認めて貰えるくらいにはなりてえよなあ!最近はみみっちいヤツが多いがお前みてーのは好きだ!頑張れよ!」
「おうよ!」
ガタンゴトン。ズズッ。プハァー。
「無くなったぜ…コーヒー。じゃあやるか。通路に立て、サトシ、俺も立つ」
「よろしく頼むぜ、リョウ!」
「ああ、よろしくな、いくぜ」
さて、どう攻めるかーーーサトシは手甲足甲を付ける徒手空拳スタイルである。それなりに強い自負もある。だがーーーーー
(隙が…ねえ!?というかーーただ突っ立って綺麗な双剣をぶらんとさせてるように見えるが…俺が一ミリでも動いたら殺すつもりだな…やべえ、息も出来ねぇ、目もそらせねぇ、いきなり手詰まりとは…どうするか…)
そうして1分呼吸を止め、じっとしてーーーー
「合格だ、サトシ」
「…は?」
「合格だっつったんだよ。弟子にしてやる」
「な、なんで!俺はまだ何もしてないーーー」
「なにもしなかっただろ?それが正解だ。もしお前がヤケを起こして攻撃したり、妙にビビって下がったりしたら不合格にしてた。だがお前は呼吸すら止めて一ミリも動かなかった。だから正解だ」
「ま、マジか…戦神から弟子をもぎ取れるとは…せいぜい一歩動かせて上等くらいに思ってたぜ」
「まあ、良く考え、良く頑張ったな。おめでとう、サトシ」
「ありがとうよ、リョウ。そんでよろしくな」
「ああ」
「まあお前の分のコーヒーもついでくるからちょっと待ってろ、あと今後の話もする」
一戦交え、弟子が出来、コーヒーを継ぎに行った。