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05

周囲の光が収まった後も僕の視界に映る物は白一色だった。

地上と言うか、アガルティアへと移動したと明らかに解るのは、肌に当たる空気の感触と周囲の白い霧の様な物。


そして僕が落下していると言う事実からだった。


ゴウゴウと空気を切り裂く激しい音が耳を裂き、手足を動かす所か呼吸すら困難な状況に加えて現在位置すら把握出来ない視界の悪さに僕は混乱していた。


(何だこれ!?如何言う事!?何でこんな事に為ってんの!?あの駄女神僕を何処に送ったんだよ!?)


だが、そんな状況は直ぐに一変した。急に視界が開け、周囲を見渡す事が出来る様になったんだけど・・・・・予想し得る最悪の状況だった。


先程まで視界を塞いでいた白い物は雲で、僕は遥か上空から落下していたのだから。


TVやネットの動画で見たスカイダイビングの映像そのままに美しい景色が視界一杯に広がったが、そんな物をのんびり鑑賞している余裕なんて無かった。


当たり前だ。僕はパラシュートなんて背負っていないのだから。


「うおおおおぉぉぉぉ・・・・・!!あんの駄女神ぃ!なんて所に送ってくれてんだあああぁぁぁ・・・・・!!そ、そうだ、水に浮かべたんだから落下速度を落とす事位なら・・・・・く・・・くそがああああぁぁぁぁ・・・・・!!!」


衣に意識を集中してみたが、無情にも刺繍が淡く光る以外に効果は全く無かった。

悪態を付きながら落下し続ける僕に、迫り来る状況を回避する事など出来る訳も無く、そのまま地面へと激突する事になるのだった。



     *     *     *     *     *



ガンガンと木を打ち付け合う音と怒号や悲鳴の響く中、最初にそれに気が付いたのは一人の少女だった。


「何あれ・・・・・光が・・・落ちて来る?・・・・・」


今まで見た事も聞いた事も無い現象に少女は戸惑いうろたえたが、それが自分達の近くへと落ちて来る事に気が付くと大声を上げた。


「・・・・・あ・・・危ない!みんな!空から何かが落ちて来るわ!早く逃げてええぇぇぇ!!」


少女の叫び声に気が付いた者達が一斉に上を向き、物凄い勢いで落ちて来るそれに気が付くと、悲鳴を上げてわらわらと逃げ出した。

そして彼等の居た場所の略中心に激しい風切り音と共にそれが激突し、周囲に砂埃と衝撃音、そして血飛沫と肉片を撒き散らした。


砂埃の晴れた後に周囲を囲む者達が見た物は、光を失った白い衣に包まれた肉塊だった。


余りの凄惨な光景にその場に居た者達はパニックに陥り、皆悲鳴を上げて一目散に逃げ出した。



― 30分後 ―



「・・・・・ガハッ!・・・グッ・・・ギイイィィヤァアアァァァ・・・・・!!」



― 更に10分後 ―



「・・・ァ・・・ガァ・・・・・ハァ・・・ハァ・・・・・うぁ・・・ッ・・・・・あ~・・・死ぬかと思った・・・ッツ・・・いや、生き返ったんだけど・・・・・」


正に死ぬ程の痛みを味わった訳だが、かなりきつかった。折れた骨や千切れた筋肉や神経が短時間で修復して行く感覚は形容しがたい物で、痛みと共に全身を何かが蠢いている様な気持ち悪さが有った。

正直二度と味わいたくは無いが、上空何千mからの落下なんて二度とする事は無いと思う。


暫くの間横になったまま空を見上げていたが、このままでは埒が開かないと身体を起こすと「ヒッ!」っと小さな悲鳴が聞こえた。


「あ、ども。こんにちわ」


悲鳴の聞こえた方を見ると、少し離れた所に数人の男性が居たので左手を軽く上げて挨拶をしたら悲鳴を上げて逃げて行ってしまった。うん、マジでクルなこれは。

まぁ地球に居た頃の僕でも目の前で人が生き返ったら驚くだろうし、気味悪がって逃げるだろう。でも、生き返る所を見た彼等なら僕の言う事を信じて受け入れてくれるかも知れない。

そんな淡い期待を胸に彼等の走り去った方向、落下中に見えた集落へと僕は歩き始めた。

ここまで読んで頂き有り難う御座います。

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